世界の十字路

時雨青葉

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第6章 3日目――決着

最強の秘術

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ばく!!」


 蓮と隆文のりんとした声が空気を震わす。
 それを皮切りに、長い呪文が二人の口からつむぎ出された。


 すると―――かくん、と。
 死神が膝をつく。


「こ……これは…っ」


 分からないはずがない。


 これは、遥かいにしえから紡がれた歴史の結晶。
 自分を最もおびやかす、最強の秘術。


 なんということだ。
 九条家には、この秘術まで引き継がれていたというのか。


「こんなもの…っ」


 忌々いまいましげに毒づいた死神は、鎌を握り締めた。


 この術からのがれるためには自分もかなり力を使うので、しばらくは動けなくなるだろう。


 だが、今の状況はあまりにも不利だ。


 腕に力を込め、鎌を持ち上げる。
 しかし。


 ―――ガクンッ


 その腕が、急に力を失って落ちた。


「何!?」


 死神は目をく。


 そんな。
 ありえない。


 目の前の事実を瞬間的に否定したが、そこで自分に働く力が蓮たちの秘術だけではないことに気付いた。


 反射的に、力の出所を視線で追う。




 ―――そこにいたのは、紫苑だった。




「やっと気付いた?」


 死神を見下ろして、実は策士の笑みを浮かべた。


「紫苑さんは九条と向こうの血の両方を受け継ぐ、いわばグレーゾーンの人間。だからこそ、未知の可能性があったんだよね。」


 実の言葉に、蓮と隆文が驚いて紫苑を振り返った。


 空中に向けて手をかざしている紫苑。
 そこから力があふれ、蓮たちの周りに大きな結界を作っていた。


 蓮たちの視線に気付いた紫苑は、得意げに笑ってみせる。


「尚希さんに頼んで紫苑さんに覚えてもらったのは、敵の力を吸収しつつ、この場から逃げられないように包囲する結界の張り方。しかも、九条の力と魔力の両方を織り交ぜて結界を張れるようになってもらった。地球に属する力を使いながらも、術構成は完全にこっちのもの。俺は、これに賭けてた。拓也にやってもらったフェイクで隠したかったのは、どっちかっていうと紫苑さんの方だったんだよね。」


 実の目が、紫苑のさらに後ろへと移動する。
 そこでは、拓也と尚希がさらに巨大な結界を張っている。


 紫苑の術に賭けていたとはいえ、それが上手くいく確証もない。


 故に、拓也たちには先に話を通して、紫苑の結界を包む形でさらに結界を張ってもらうことにしておいた。


 間に紫苑を挟んでいるからか、蓮たちの術と拓也たちの術がぶつかり合うこともない。
 そしてどうやら、この二重の結界は死神に想定以上の効果をもたらしているようだ。


「面白いくらいに上手くいってるみたいだな。さすがのあんたも、これにはひとたまりもないみたいで。」


 くつくつと、実は低く笑って肩を震わせる。


「ありがとな。綺麗にはまってくれて。」


 それは、神にも引けを取らない威圧感と、圧倒的な存在感をたっぷりと含んだ笑み。
 誰もが身震いするほどにあやしくも、とても美しい笑みだった。


「くっ…」


 いくにも張られた結界に、さすがの死神もなすすべがなかった。


 蓮たちの術が、佳境に入っていく。


「くくく……」


 微笑む実の前で、ふいに死神が笑い出した。


「これも運命さだめならば仕方ないか……だが―――」


 死神は、手にしたかごと実を交互に見やる。


「お主も道連れだぞ?」
「!!」


 それを聞いた蓮の顔に、衝撃が走った。


 実が封印の道連れになること。
 それは、蓮がこの秘術の話を聞いた時から最も危惧していたことだ。


「蓮さん、躊躇ためらっちゃだめですよ。」


 蓮の心境を見抜いて、実は言う。
 その表情に動揺はない。


 実際のところ、動揺する必要がなかったのだ。
 その理由は、すぐ後に知れた。


 死神の後ろから伸びてきた手が、実の魂が収まったかごを素早く奪い取っていったのだ。

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