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第5章 それぞれの選択
親友になる男の子
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実と初めて出会ったのは、六歳になったばかりの秋だった。
隣の組に、綺麗な髪の色をした男の子が入ってきたと。
その日の幼稚園は随分と騒がしかったのをよく覚えている。
興味本位で隣の組を覗きに行くと、そこには確かに、他よりも目立つ見慣れない男の子がいた。
淡い栗毛色の柔らかな髪。
ガラス玉のように透き通った薄茶色の瞳。
黒髪の子供たちの中でその子はものすごく目立ち、皆もそれに惹かれて彼の元に集まっていた。
今考えれば、あれは珍しいものを見つけた時に特有の奇異の眼差しだったのだと思う。
もちろん、オレも例外ではなかった。
ただ違ったのは、みんなに囲まれて笑顔を浮かべるその子の様子に、少し違和感を持ったこと。
それからしばらく、彼は色んな子と一緒にいた。
入れ代わり立ち代わり、誰かが去っていけば誰かが近寄ってくる。
組が違うオレはそんな彼に声をかけるきっかけも持てずに、ただ時間ばかりが過ぎた。
彼と初めて話ができたのは、彼が幼稚園に来てからかれこれ二ヶ月ほどが経ってからだった。
すでに彼のいる日常も珍しいものではなくなり、園児たちの興味もそれなりに落ち着いていた。
彼もだんだん幼稚園に慣れていき―――何故か、一人でいる時が増えた。
その日たまたま見かけた時も、彼はたった一人で教室の窓から外で遊ぶ子供たちを見つめていた。
「おーい、何してんの?」
思わず、声をかけた。
彼は一瞬肩を震わせて、ゆっくりと顔を上げた。
(わ…)
息を飲んだ。
その時のオレには、これが何を感じてのことかは分からなかった。
けれど今なら、オレは幼いながらに彼に魅入ってしまったのだろうと思う。
こちらをまっすぐに見上げた薄茶色の瞳は本当に綺麗に澄んでいて、その中で揺れる輝きはとても惹かれるものだったから。
「み……見てるだけじゃ、つまらなくない? 一緒に遊べば?」
しゃべらずにずっと見ているだけのオレに彼が首を捻ったので、オレは何故か慌ててそう言った。
すると……
「……ううん。僕は、いいんだ…。見てるだけで、十分。」
「そっか……」
普通なら、ここでその場を去ったのだろう。
だが、積もり積もった彼への興味も相まって、オレは無意識のうちに彼の隣に腰を下ろしていた。
少しの間、彼の同じように外の景色を見つめる。
―――が、根が短気なオレだ。
すぐに飽きが来た。
「ねえ……何が楽しいわけ?」
「別に、楽しいわけじゃないけど。」
「何それ。変な奴。」
幼いが故に、思ったことをストレートに言ってしまった。
すると、彼がピクリと震える。
変な奴という言葉が気に障ったのかと思ったが、彼はこちらを見るとまた首を傾げた。
「……そういえば、初めてしゃべるね。誰?」
「え……あ、そっか。オレは、三村晴人。」
自己紹介の言葉を受けて「僕は…」と言おうとした彼を、オレは両手で制した。
そして、上半身だけでふんぞり返ってやる。
「待て。オレは、お前の名前を知ってるぞ。お前、有名人だからな。えっと、確か……あれ?」
言葉が続かなかった。
ここまでの態度を取っておいて馬鹿な話だが、興味はあったのに名前を知らなかったということに、今初めて気がついたのだ。
彼のことをずっと見ているうちに、知っている気になっていたらしい。
「ごめん。なんていったっけ?」
この時から今の性格はできつつあったので、あえて悪びれもなく訊いた。
彼はポカンとオレを見上げて―――初めて、無邪気な笑顔を浮かべた。
「あははっ……変なの。」
こいつも、ちゃんと笑えるじゃん。
そう思って言葉を失くしていると、彼はにっこりとオレに笑いかけた。
「僕は実。宮崎実。」
これが、後の親友との出会いだった。
隣の組に、綺麗な髪の色をした男の子が入ってきたと。
その日の幼稚園は随分と騒がしかったのをよく覚えている。
興味本位で隣の組を覗きに行くと、そこには確かに、他よりも目立つ見慣れない男の子がいた。
淡い栗毛色の柔らかな髪。
ガラス玉のように透き通った薄茶色の瞳。
黒髪の子供たちの中でその子はものすごく目立ち、皆もそれに惹かれて彼の元に集まっていた。
今考えれば、あれは珍しいものを見つけた時に特有の奇異の眼差しだったのだと思う。
もちろん、オレも例外ではなかった。
ただ違ったのは、みんなに囲まれて笑顔を浮かべるその子の様子に、少し違和感を持ったこと。
それからしばらく、彼は色んな子と一緒にいた。
入れ代わり立ち代わり、誰かが去っていけば誰かが近寄ってくる。
組が違うオレはそんな彼に声をかけるきっかけも持てずに、ただ時間ばかりが過ぎた。
彼と初めて話ができたのは、彼が幼稚園に来てからかれこれ二ヶ月ほどが経ってからだった。
すでに彼のいる日常も珍しいものではなくなり、園児たちの興味もそれなりに落ち着いていた。
彼もだんだん幼稚園に慣れていき―――何故か、一人でいる時が増えた。
その日たまたま見かけた時も、彼はたった一人で教室の窓から外で遊ぶ子供たちを見つめていた。
「おーい、何してんの?」
思わず、声をかけた。
彼は一瞬肩を震わせて、ゆっくりと顔を上げた。
(わ…)
息を飲んだ。
その時のオレには、これが何を感じてのことかは分からなかった。
けれど今なら、オレは幼いながらに彼に魅入ってしまったのだろうと思う。
こちらをまっすぐに見上げた薄茶色の瞳は本当に綺麗に澄んでいて、その中で揺れる輝きはとても惹かれるものだったから。
「み……見てるだけじゃ、つまらなくない? 一緒に遊べば?」
しゃべらずにずっと見ているだけのオレに彼が首を捻ったので、オレは何故か慌ててそう言った。
すると……
「……ううん。僕は、いいんだ…。見てるだけで、十分。」
「そっか……」
普通なら、ここでその場を去ったのだろう。
だが、積もり積もった彼への興味も相まって、オレは無意識のうちに彼の隣に腰を下ろしていた。
少しの間、彼の同じように外の景色を見つめる。
―――が、根が短気なオレだ。
すぐに飽きが来た。
「ねえ……何が楽しいわけ?」
「別に、楽しいわけじゃないけど。」
「何それ。変な奴。」
幼いが故に、思ったことをストレートに言ってしまった。
すると、彼がピクリと震える。
変な奴という言葉が気に障ったのかと思ったが、彼はこちらを見るとまた首を傾げた。
「……そういえば、初めてしゃべるね。誰?」
「え……あ、そっか。オレは、三村晴人。」
自己紹介の言葉を受けて「僕は…」と言おうとした彼を、オレは両手で制した。
そして、上半身だけでふんぞり返ってやる。
「待て。オレは、お前の名前を知ってるぞ。お前、有名人だからな。えっと、確か……あれ?」
言葉が続かなかった。
ここまでの態度を取っておいて馬鹿な話だが、興味はあったのに名前を知らなかったということに、今初めて気がついたのだ。
彼のことをずっと見ているうちに、知っている気になっていたらしい。
「ごめん。なんていったっけ?」
この時から今の性格はできつつあったので、あえて悪びれもなく訊いた。
彼はポカンとオレを見上げて―――初めて、無邪気な笑顔を浮かべた。
「あははっ……変なの。」
こいつも、ちゃんと笑えるじゃん。
そう思って言葉を失くしていると、彼はにっこりとオレに笑いかけた。
「僕は実。宮崎実。」
これが、後の親友との出会いだった。
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