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第6章 国境を越えて
ユエたちの今後
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「やーん! かわいー!!」
思い切り抱きつかれて、ユエはびっくりしたようにまばたきを繰り返した。
「桜理……ちょっと落ち着きなよ。」
想定外の反応に、実は狼狽えてしまう。
ここは、桜理がいるサレイユの屋敷。
実はユエと共にタリオンに戻った後、各所との話し合いの末に、ユエをこのままタリオンに置くのではなく、サレイユに連れていくことにした。
エーリリテたちの善意には申し訳ないが、神の守護がついているユエには、ここの環境の方が合っていると思ったのだ。
ここには聖木と言っても過言ではないアティの力が満ちているし、他に比べて強力な魔力を持つ精霊たちが多い。
格上の精霊ほど操るのが難しいので、ここなら仮にユエの魔力が暴走することがあっても、嵐が起こるまで事態が悪化することはない。
そんな環境なら、焦らずに魔力の制御方法を教えてやれるだろう。
それに、ここには誰よりも信頼できる桜理がいる。
自分がタリオン以上にここへ足を運ぶというのも、ユエをここに連れてきた要因の一つだ。
そこで生じた懸念は、どういった建前でユエをサレイユに招き入れるかという点だったが、桜理が〝桜が指名した私の後継者よ〟と言うだけで万事解決してしまった。
桜理にユエのことを相談してから一週間と経っていないのだが、すでに神殿全体がユエを大歓迎しているという状態だ。
「だって、実!」
桜理は興奮した様子で実を見上げる。
「可愛いじゃない! 髪の毛さらさらだし、ほっぺたぷにぷにだし。私、ずっと妹が欲しかったのよー♪」
「気持ちは分かるけど、ユエが困ってるじゃん……」
「そんなことないよねー?」
にこやかに同意を求めてくる桜理に、ユエは答えに窮しているようだった。
どう見たって困っているではないか。
「でも、しばらくこっちに来ないと思ったら、子供を保護してたなんて…。相変わらずのお人好しなんだから。」
桜理はユエを離して、実を上目遣いに見つめた。
「お人好しを直せとは言わないけど、あんまり無茶はしないでよね。」
「……だ、大丈夫だよ。無茶はしてないつもりだから。」
「それ、私の目を見て言える?」
「いや……その……」
たじろぐ実に、桜理は軽やかな声で笑う。
「そ、そんなことより! ドラード、本当にこっちに来てよかったの?」
気まずくなった実は、早々に話題を変えた。
「ええー。もう契約した後なのに、今さらそれを訊くのー?」
「いや、だって……結構引き止められてたから……」
実は、ユエをサレイユに連れていくと決めてタリオンを去る際に、完全に想定外の事態が起こった。
いつの間にか、ドラードがユエと守護獣の契約を結んでいたのだ。
ユエを助け出した後、ドラードはユエに自分の主になってほしいと直接交渉をしていたらしい。
そんなことなど露知らず、イリヤたちと今後の方向性を話し合い、話に一区切りつけてユエのところに戻った頃には、契約が終わってしまっていた。
本人たちの間で合意を取った上の契約なので、もちろん異論はなかった。
というか、守護獣の契約によってユエの魔力がドラードにも分散されるなら、魔力が暴走する可能性がさらに低くなり、こちらとしてはむしろありがたいくらい。
しかし、まさかこんなことになるとは想像すらしていなかったので、報告を受けた時は相当驚いたものだ。
おかげで、ドラードの家族の元へ出向いてかいつまんだ事情を説明するはめになり、ドラードと一緒に彼の家族を説得するのがそれはもう大変だった。
最終的には送り出してもらえたものの、きっと彼の家族はまだ心配しているだろう。
「大丈夫だって。実、たまにはタリオンに連れてってくれるってユエに言ってたじゃん。その時に顔を出せば、みんなもそのうち安心してくれるよ。」
「ま、まあ、そうかもしれないけど……」
「もう、実ったら。話をごまかしたいのがバレバレなんですけどー?」
「うう…っ」
桜理に意地悪く突っ込まれ、実は当惑顔で視線を逸らす。
「………」
ユエは、そんな実と桜理をじっと見つめていた。
二人の間には、和やかで優しい雰囲気が漂っている。
穏やかで幸せそうで、見ている人をほっと安心させるような柔らかい空気だ。
それは、ライヤたちの家族を見ているようなものによく似ている。
「……ん? ユエ、どうしたの?」
ずっと注がれている視線に気付いた実が、首を傾げる。
そんな実に、ユエはこう訊いた。
「実は、桜理が好きなの?」
「えっ!?」
「まあ。」
素っ頓狂な声をあげる実と、笑んで口元に手をやる桜理。
大袈裟とも言える実の反応に、何気なく訊いたユエの方が驚いてしまった。
さすがの実も、こんな質問が飛んでくるとは夢にも思っていなかったのだろう。
顔を真っ赤にしてかなり狼狽える姿は、普段の実からは想像できないものだった。
「桜理は、実が好きなの?」
今度は桜理に訊いてみる。
桜理は、にっこりと笑って……
「ええ、大好きよ。」
躊躇うことなく、ユエの疑問を肯定した。
「えええっ!?」
実がまた叫ぶ。
その顔は、さっきよりも赤い。
「何? 嘘はついてないわ。」
「いや、そうかもしんないけど、そんな堂々と……」
慌てふためく実は、挙動に落ち着きがない。
こんな実も初めて見る。
遊び心をくすぐられたのか、桜理は実にぐいっと詰め寄った。
「で、実は?」
「へっ!?」
「実は、私のこと嫌い?」
「そんなわけないだろ!!」
「じゃあ好き?」
「うっ……えっと……あの……」
途端に途切れる言葉。
桜理はそんな反応を楽しんでいるらしく、かなり上機嫌なようだ。
なんだかんだで、やっぱり幸せそうな光景である。
「……ふふ。」
ふと小さな笑い声が飛び込んできて、実と桜理は二人揃ってそちらを見た。
そこでは、ユエが楽しそうに声をあげて笑っている。
それは、とても活き活きして晴れやかな笑顔だった。
思い切り抱きつかれて、ユエはびっくりしたようにまばたきを繰り返した。
「桜理……ちょっと落ち着きなよ。」
想定外の反応に、実は狼狽えてしまう。
ここは、桜理がいるサレイユの屋敷。
実はユエと共にタリオンに戻った後、各所との話し合いの末に、ユエをこのままタリオンに置くのではなく、サレイユに連れていくことにした。
エーリリテたちの善意には申し訳ないが、神の守護がついているユエには、ここの環境の方が合っていると思ったのだ。
ここには聖木と言っても過言ではないアティの力が満ちているし、他に比べて強力な魔力を持つ精霊たちが多い。
格上の精霊ほど操るのが難しいので、ここなら仮にユエの魔力が暴走することがあっても、嵐が起こるまで事態が悪化することはない。
そんな環境なら、焦らずに魔力の制御方法を教えてやれるだろう。
それに、ここには誰よりも信頼できる桜理がいる。
自分がタリオン以上にここへ足を運ぶというのも、ユエをここに連れてきた要因の一つだ。
そこで生じた懸念は、どういった建前でユエをサレイユに招き入れるかという点だったが、桜理が〝桜が指名した私の後継者よ〟と言うだけで万事解決してしまった。
桜理にユエのことを相談してから一週間と経っていないのだが、すでに神殿全体がユエを大歓迎しているという状態だ。
「だって、実!」
桜理は興奮した様子で実を見上げる。
「可愛いじゃない! 髪の毛さらさらだし、ほっぺたぷにぷにだし。私、ずっと妹が欲しかったのよー♪」
「気持ちは分かるけど、ユエが困ってるじゃん……」
「そんなことないよねー?」
にこやかに同意を求めてくる桜理に、ユエは答えに窮しているようだった。
どう見たって困っているではないか。
「でも、しばらくこっちに来ないと思ったら、子供を保護してたなんて…。相変わらずのお人好しなんだから。」
桜理はユエを離して、実を上目遣いに見つめた。
「お人好しを直せとは言わないけど、あんまり無茶はしないでよね。」
「……だ、大丈夫だよ。無茶はしてないつもりだから。」
「それ、私の目を見て言える?」
「いや……その……」
たじろぐ実に、桜理は軽やかな声で笑う。
「そ、そんなことより! ドラード、本当にこっちに来てよかったの?」
気まずくなった実は、早々に話題を変えた。
「ええー。もう契約した後なのに、今さらそれを訊くのー?」
「いや、だって……結構引き止められてたから……」
実は、ユエをサレイユに連れていくと決めてタリオンを去る際に、完全に想定外の事態が起こった。
いつの間にか、ドラードがユエと守護獣の契約を結んでいたのだ。
ユエを助け出した後、ドラードはユエに自分の主になってほしいと直接交渉をしていたらしい。
そんなことなど露知らず、イリヤたちと今後の方向性を話し合い、話に一区切りつけてユエのところに戻った頃には、契約が終わってしまっていた。
本人たちの間で合意を取った上の契約なので、もちろん異論はなかった。
というか、守護獣の契約によってユエの魔力がドラードにも分散されるなら、魔力が暴走する可能性がさらに低くなり、こちらとしてはむしろありがたいくらい。
しかし、まさかこんなことになるとは想像すらしていなかったので、報告を受けた時は相当驚いたものだ。
おかげで、ドラードの家族の元へ出向いてかいつまんだ事情を説明するはめになり、ドラードと一緒に彼の家族を説得するのがそれはもう大変だった。
最終的には送り出してもらえたものの、きっと彼の家族はまだ心配しているだろう。
「大丈夫だって。実、たまにはタリオンに連れてってくれるってユエに言ってたじゃん。その時に顔を出せば、みんなもそのうち安心してくれるよ。」
「ま、まあ、そうかもしれないけど……」
「もう、実ったら。話をごまかしたいのがバレバレなんですけどー?」
「うう…っ」
桜理に意地悪く突っ込まれ、実は当惑顔で視線を逸らす。
「………」
ユエは、そんな実と桜理をじっと見つめていた。
二人の間には、和やかで優しい雰囲気が漂っている。
穏やかで幸せそうで、見ている人をほっと安心させるような柔らかい空気だ。
それは、ライヤたちの家族を見ているようなものによく似ている。
「……ん? ユエ、どうしたの?」
ずっと注がれている視線に気付いた実が、首を傾げる。
そんな実に、ユエはこう訊いた。
「実は、桜理が好きなの?」
「えっ!?」
「まあ。」
素っ頓狂な声をあげる実と、笑んで口元に手をやる桜理。
大袈裟とも言える実の反応に、何気なく訊いたユエの方が驚いてしまった。
さすがの実も、こんな質問が飛んでくるとは夢にも思っていなかったのだろう。
顔を真っ赤にしてかなり狼狽える姿は、普段の実からは想像できないものだった。
「桜理は、実が好きなの?」
今度は桜理に訊いてみる。
桜理は、にっこりと笑って……
「ええ、大好きよ。」
躊躇うことなく、ユエの疑問を肯定した。
「えええっ!?」
実がまた叫ぶ。
その顔は、さっきよりも赤い。
「何? 嘘はついてないわ。」
「いや、そうかもしんないけど、そんな堂々と……」
慌てふためく実は、挙動に落ち着きがない。
こんな実も初めて見る。
遊び心をくすぐられたのか、桜理は実にぐいっと詰め寄った。
「で、実は?」
「へっ!?」
「実は、私のこと嫌い?」
「そんなわけないだろ!!」
「じゃあ好き?」
「うっ……えっと……あの……」
途端に途切れる言葉。
桜理はそんな反応を楽しんでいるらしく、かなり上機嫌なようだ。
なんだかんだで、やっぱり幸せそうな光景である。
「……ふふ。」
ふと小さな笑い声が飛び込んできて、実と桜理は二人揃ってそちらを見た。
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