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第2章 声
お部屋の中では……
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床には大量の服や装飾品。
その海の中に身を置く数人の女性たち。
「これは……一体…?」
かろうじて、尚希がそれだけを絞り出す。
それに対して、実は困ったように頬を掻いた。
「着替えはどんなものがいいかって訊かれたから、任せるって言ったんですけど……そしたら、何故かこんなことに。」
溜め息をつく実。
そんな実の気疲れにはお構いなしといった様子で、女性の一人が別の服を抱えて寄ってくる。
「実様! 次は、これでも着てみませんこと?」
女性は嬉々として実に持ってきた服を当てる。
あまりにも輝いているその表情を見ると非常に言いづらいのだが、実はおずおずと口を開いた。
「あ、あの……連れも起きてきたし、そろそろ……」
頼むから解放してくれ。
そんな実の心の内が滲み出た声に、女性は「まあっ」と口元に手をやる。
「申し訳ございません。もうそんなに時間が経っていたのですね。本当に、楽しい時間は過ぎるのが早いものですわ。」
「た、楽しいって……」
愛想笑いを浮かべる実の表情が引きつる。
「だってー…」
解せない様子の実に対して、女性はうっとりとした表情で体を揺らした。
「実様ったら、どんな服でも着こなしてしまうんですもの。私、もう楽しくて楽しくて。ねえ、みんなもそうでしょう?」
女性が室内に向かって首を巡らせてそう訊ねると、他の女性たちもうんうんと頷いた。
「そうなんですよ。次はどれがいいでしょう?」
「実様なら、このクールなデザインの服もお似合いではないでしょうか?」
「数が多くて困りますねぇ……」
思い思いに話す女性たち。
と、その中の一人がにわかに立ち上がった。
「私、新しいデザインを思いついたわ。イメージが鮮明なうちに形にしないと!」
創作意欲に掻き立てられたらしい彼女は、急ぎ足ながらも床の服は踏まずに部屋を出ていく。
「………」
「………」
「……とまあ、こんな感じでして。」
猛ダッシュで駆けていく女性を無言で見送る拓也たちを横目に、実は肩を落とす。
「一応、仕事なんだろうけど……」
拓也が呟くと、実の前に立っていた女性が大きく首を縦に振った。
「そうですわ! 皆様を飾るのが私たちの仕事。そこにとんでもない逸材がいて、飾らない手はありませんもの。素敵な原石を磨かず飾らずそのままにしておくなんて、服飾係の名折れですわ!!」
ぐっと拳を握り締める女性。
彼女だけではなく、室内に残る女性たちの目にもめらめらと燃えているものがあった。
人はこれを、情熱とでも呼ぶのだろうか。
全く理解はできないが、彼女たちの着せ替え人形という状況からまだ逃げられないことは確実らしい。
ここで怒りを示せば、さすがに彼女たちも引いてくれるのだろう。
とはいえ、特に自分に害という害もないし、これも彼女たちの仕事なのだと思うと強く言うこともできない。
何より、こんなにちやほやされている状況に内心焦っている状態で、下手に何かを口走って墓穴を掘りたくない。
こういった状況下においては、相手にいいように転がされてばかりだと自覚しているのだ。
そんな実としては、ここは自滅しないように口を閉ざすしかないのだった。
「さ・て・と♪」
女性たちの熱意に返す言葉もなく棒立ちになっていた拓也と尚希の腕に、彼女たちの手がするりと絡んだ。
「あなた方も、随分と飾りがいのある容姿をしてますこと。」
「……えっ!?」
今まであくまでも他人事としか捉えていなかった二人の顔に、衝撃が走る。
「さあさあ奥へ。あなた方にも、あなた方の魅力を最大限に引き出す服を見立てて差し上げますわ。」
「ちょ…っ」
抗議する間もなく二人は室内に誘われ、女性たちに囲まれてしまう。
予測は十分にできたはずなのに、こうなることに今さら気付くとは。
実は二人を助けることはせず、自分から注意が逸れたことにほっとしながら、その様子を見守るに徹するのだった。
その海の中に身を置く数人の女性たち。
「これは……一体…?」
かろうじて、尚希がそれだけを絞り出す。
それに対して、実は困ったように頬を掻いた。
「着替えはどんなものがいいかって訊かれたから、任せるって言ったんですけど……そしたら、何故かこんなことに。」
溜め息をつく実。
そんな実の気疲れにはお構いなしといった様子で、女性の一人が別の服を抱えて寄ってくる。
「実様! 次は、これでも着てみませんこと?」
女性は嬉々として実に持ってきた服を当てる。
あまりにも輝いているその表情を見ると非常に言いづらいのだが、実はおずおずと口を開いた。
「あ、あの……連れも起きてきたし、そろそろ……」
頼むから解放してくれ。
そんな実の心の内が滲み出た声に、女性は「まあっ」と口元に手をやる。
「申し訳ございません。もうそんなに時間が経っていたのですね。本当に、楽しい時間は過ぎるのが早いものですわ。」
「た、楽しいって……」
愛想笑いを浮かべる実の表情が引きつる。
「だってー…」
解せない様子の実に対して、女性はうっとりとした表情で体を揺らした。
「実様ったら、どんな服でも着こなしてしまうんですもの。私、もう楽しくて楽しくて。ねえ、みんなもそうでしょう?」
女性が室内に向かって首を巡らせてそう訊ねると、他の女性たちもうんうんと頷いた。
「そうなんですよ。次はどれがいいでしょう?」
「実様なら、このクールなデザインの服もお似合いではないでしょうか?」
「数が多くて困りますねぇ……」
思い思いに話す女性たち。
と、その中の一人がにわかに立ち上がった。
「私、新しいデザインを思いついたわ。イメージが鮮明なうちに形にしないと!」
創作意欲に掻き立てられたらしい彼女は、急ぎ足ながらも床の服は踏まずに部屋を出ていく。
「………」
「………」
「……とまあ、こんな感じでして。」
猛ダッシュで駆けていく女性を無言で見送る拓也たちを横目に、実は肩を落とす。
「一応、仕事なんだろうけど……」
拓也が呟くと、実の前に立っていた女性が大きく首を縦に振った。
「そうですわ! 皆様を飾るのが私たちの仕事。そこにとんでもない逸材がいて、飾らない手はありませんもの。素敵な原石を磨かず飾らずそのままにしておくなんて、服飾係の名折れですわ!!」
ぐっと拳を握り締める女性。
彼女だけではなく、室内に残る女性たちの目にもめらめらと燃えているものがあった。
人はこれを、情熱とでも呼ぶのだろうか。
全く理解はできないが、彼女たちの着せ替え人形という状況からまだ逃げられないことは確実らしい。
ここで怒りを示せば、さすがに彼女たちも引いてくれるのだろう。
とはいえ、特に自分に害という害もないし、これも彼女たちの仕事なのだと思うと強く言うこともできない。
何より、こんなにちやほやされている状況に内心焦っている状態で、下手に何かを口走って墓穴を掘りたくない。
こういった状況下においては、相手にいいように転がされてばかりだと自覚しているのだ。
そんな実としては、ここは自滅しないように口を閉ざすしかないのだった。
「さ・て・と♪」
女性たちの熱意に返す言葉もなく棒立ちになっていた拓也と尚希の腕に、彼女たちの手がするりと絡んだ。
「あなた方も、随分と飾りがいのある容姿をしてますこと。」
「……えっ!?」
今まであくまでも他人事としか捉えていなかった二人の顔に、衝撃が走る。
「さあさあ奥へ。あなた方にも、あなた方の魅力を最大限に引き出す服を見立てて差し上げますわ。」
「ちょ…っ」
抗議する間もなく二人は室内に誘われ、女性たちに囲まれてしまう。
予測は十分にできたはずなのに、こうなることに今さら気付くとは。
実は二人を助けることはせず、自分から注意が逸れたことにほっとしながら、その様子を見守るに徹するのだった。
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