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第5章 揺れる心と揺らがぬ決意
香りを辿って
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尚希が家に戻るように言うと、男性は微かに頷いてから、ふらりと歩き始める。
その道中―――
「で、どういうことなんだ?」
尚希は拓也に訊ねた。
「昨日から、事情を聞いて回りながら捕まった人の家を調べてるんだ。だけど、家の中から手がかりが消された痕跡があってな。まだ十分な情報は集まってないのが現状。近所の人に怪しい奴が出入りしなかったか聞いたけど、目撃情報はなし。多分、皆が眠ってる間にこっそり処理しにきてるんだろうな。だから、尚希が騒ぎにならないようにこの人たちを捕まえてくれたのは美味しい収穫なんだ。今ならまだ、何かが残ってるかもしれない。」
説明すると、尚希が納得の表情を浮かべる。
前を歩く男性についていき、辿り着いた先は二階上にある一部屋。
「少しお待ちください。」
拓也たちに言い置いて、クルオルは先に部屋の中へと入っていく。
中から話し声はしない。
どうやら、誰もいないようだ。
しばらくして……
「どうぞ。」
中から、クルオルの声。
入り口の布をめくって中に入ると、クルオルが机の上にある蝋燭に火を灯すところだった。
「……またこのにおいか。」
拓也は、不愉快そうに眉根を寄せた。
襲撃者たちの家をもういくつ回ったかは覚えていないが、この香りだけはどの家にも必ずと言っていいほど漂っていた。
尚希が妙に気遣わしげな視線をこちらに向けているということは、この香りを知覚しているのは自分だけなのだろう。
クルオルも全く気付いていなかったので、自分がこのことを指摘するまでは、捜査が暗礁に乗り上げている状況だったのだ。
自分がこの香りに気付いてから、はっきりしていることが一つだけある。
襲撃者たちの家から犯人が持ち去っているのは、この香りの元となるものだ。
「クルオル、当たりだ。多分、まだ処分されてない。」
鼻を袖口で覆って嗅覚を強く刺激する香りを和らげながら、クルオルにそう伝える。
この部屋に漂う香りは、他の部屋と比べると格段に強い。
拓也はより一層顔を歪めながらも、部屋の中を物色し始める。
香りが強くなる方へ進み、その根源を探した。
吐き気がして、目が回りそうだ。
ここには謎の香りと、家主である男性の負の感情の香りが濃く渦巻いている。
その二つが混ざり合った香りはすさまじく、今すぐに結界を張って嗅覚を麻痺させたいくらいの激臭だった。
しかし、それは他ならぬ自分が許さない。
この香りが分かるのは自分だけ。
この騒ぎを解決する糸口を見つけられるのは、自分だけなのだ。
拓也は進む。
吐き気も眩暈も必死にこらえ、嗅覚に全神経を注ぐ。
そして―――
「あった!」
一際香りが強くなった場所で止まり、あるものを鷲掴みにする。
それを取り上げると、鼻をついていた香りが何倍にも凝集されて嗅覚を襲った。
「うっ…」
さすがに、これはきつい。
拓也は数歩よろけ、とっさに後ろにいたクルオルにそれを放り投げる。
放り投げられたそれ受け取ったクルオルは、しばらくそれを調べるように観察していた。
そして何かに気付いたのか、その顔を少しだけ青くする。
「これは……」
その道中―――
「で、どういうことなんだ?」
尚希は拓也に訊ねた。
「昨日から、事情を聞いて回りながら捕まった人の家を調べてるんだ。だけど、家の中から手がかりが消された痕跡があってな。まだ十分な情報は集まってないのが現状。近所の人に怪しい奴が出入りしなかったか聞いたけど、目撃情報はなし。多分、皆が眠ってる間にこっそり処理しにきてるんだろうな。だから、尚希が騒ぎにならないようにこの人たちを捕まえてくれたのは美味しい収穫なんだ。今ならまだ、何かが残ってるかもしれない。」
説明すると、尚希が納得の表情を浮かべる。
前を歩く男性についていき、辿り着いた先は二階上にある一部屋。
「少しお待ちください。」
拓也たちに言い置いて、クルオルは先に部屋の中へと入っていく。
中から話し声はしない。
どうやら、誰もいないようだ。
しばらくして……
「どうぞ。」
中から、クルオルの声。
入り口の布をめくって中に入ると、クルオルが机の上にある蝋燭に火を灯すところだった。
「……またこのにおいか。」
拓也は、不愉快そうに眉根を寄せた。
襲撃者たちの家をもういくつ回ったかは覚えていないが、この香りだけはどの家にも必ずと言っていいほど漂っていた。
尚希が妙に気遣わしげな視線をこちらに向けているということは、この香りを知覚しているのは自分だけなのだろう。
クルオルも全く気付いていなかったので、自分がこのことを指摘するまでは、捜査が暗礁に乗り上げている状況だったのだ。
自分がこの香りに気付いてから、はっきりしていることが一つだけある。
襲撃者たちの家から犯人が持ち去っているのは、この香りの元となるものだ。
「クルオル、当たりだ。多分、まだ処分されてない。」
鼻を袖口で覆って嗅覚を強く刺激する香りを和らげながら、クルオルにそう伝える。
この部屋に漂う香りは、他の部屋と比べると格段に強い。
拓也はより一層顔を歪めながらも、部屋の中を物色し始める。
香りが強くなる方へ進み、その根源を探した。
吐き気がして、目が回りそうだ。
ここには謎の香りと、家主である男性の負の感情の香りが濃く渦巻いている。
その二つが混ざり合った香りはすさまじく、今すぐに結界を張って嗅覚を麻痺させたいくらいの激臭だった。
しかし、それは他ならぬ自分が許さない。
この香りが分かるのは自分だけ。
この騒ぎを解決する糸口を見つけられるのは、自分だけなのだ。
拓也は進む。
吐き気も眩暈も必死にこらえ、嗅覚に全神経を注ぐ。
そして―――
「あった!」
一際香りが強くなった場所で止まり、あるものを鷲掴みにする。
それを取り上げると、鼻をついていた香りが何倍にも凝集されて嗅覚を襲った。
「うっ…」
さすがに、これはきつい。
拓也は数歩よろけ、とっさに後ろにいたクルオルにそれを放り投げる。
放り投げられたそれ受け取ったクルオルは、しばらくそれを調べるように観察していた。
そして何かに気付いたのか、その顔を少しだけ青くする。
「これは……」
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