186 / 245
ここまでのまとめ的な【完全版】
しおりを挟む
わかりづらくなってるから、ここまでのまとめ!
「……はいはーい! どうも! みんなお待ちかねのフェイウちゃんだよっ!」
元気してたー? ひっさしぶりー!
「おひさしぶりでーす! ナナカです!」
二人同時にピース!
「えーっとですね、今回はなんと! いろいろごちゃごちゃしてきたであろう皆さんに、私達が今まで起きてきたことを、振り返りながら解説しまーす! では、スペシャルゲスト? の登場です!」
「うむ、ばれんたいん以来じゃな、皆のものよ、ソアじゃ」
涼しい顔でソアさんは着物の裾をはためかせ登場する。
「どうもー、サイフォスです」
いつもよりも少し豪華なローブを着て、笑顔で登場したサイフォスさん。
「今回はいわゆる特番じゃな」
「そうですソアさん! その通り!」
少し事態の収集に当たろうっていう、作者さんの考えです。
「では、まずは最初からじゃ。寝ずに聞くのじゃぞ?」
「はーいソアせんせー!」
元気にナナカちゃんが返事をする。
「相変わらずペースを乱すのぉ……」
ソアさんが、気を取り直すようにコホンと一つ咳払いをする。
「まず、この話は、異世界と異世界を渡り歩く異世界クロスオーバーファンタジーじゃ。で、舞台はわしらが住む世界インバワルズじゃ。まあ、いろいろな世界を渡り歩くのじゃから、舞台は、全世界でもあるのじゃ。で、わしらが住むインバワルズでは、魔獣が存在する。俗に言う、剣と魔法の世界ってやつじゃな!」
「ソア様、それは漫画の読みすぎです」
サイフォスさんが冷静にツッコむ。
で、次は私ね!
「主人公の名前はネリア・ハラベスト! 才能なしのダメ男よ!」
私はババーンと真実だけを語る。
「いやそれは要約しすぎですよ!?」
ナナカちゃんにツッコまれちゃった、てへ。
「まあ、間違ってはいないんですが……」
どうしたもんかと頭を悩ませるナナカちゃん。
「そのう、ご主人はですね、確かに才能なしですけど、ダメ男では無いんですよ。ええ、多分」
「ナナカよ、自分に言い聞かせるように言うのはやめてあげてくれぃ、あやつにもいいところはあるんじゃ」
あまりにもネリアが不憫に思えたのか、ソアさんがフォローを入れる。
「命令すれば、ぶつくさ言いながらもしっかりこなすところとか、お願いした買い物は、直ぐ買ってくるところとかな」
「それ良いところじゃなくて、従順なパシリですよね」
サイフォスさんが冷静にツッコミを入れる。
「む? それ以外にはやる気があるところしか良いところがないぞ?」
「そこをもっと言ってあげて下さい」
「ふむ、なるほど。では、逆に聞くがサイフォスよ、お主が思うネリアの良いところは何じゃ?」
「そ、それはですね……」
サイフォスさんは、たっぷり三十秒ほど考えた後、言った。
「……思わず養ってあげたくなっちゃうところですかね?」
「「「それ、駄目なところだから!(じゃから!)(ですよ!)」」」
見事に三人同時にハモった。
「えー、このままでは埒が明かないので、作者さんが渡してきた設定資料を読みます」
私は司会者としての義務を果たすため、設定資料を取り出した。
「それがあるならもっと早くだして欲しかったわい……なんだかツッコミ疲れてしまったのじゃ」
なんだかもうお疲れの様子なソアさん。
「えーっと、ネリア・ハラベスト、年齢は十七歳。彼はインバワルズのキワカ村で生を受ける。その後、順調に育っていくが、とあることが判明。そう、彼には何の才能も無かったのである!」
ここ大事ね! 才能がないってとこ!
「そんなトラウマを抱えながらも、懸命に自分を高め、いつか魔獣狩りを専門とするハンターになろうと最強の剣豪である男に弟子入りをお願いする。彼の名は、ガヤエア・リースト。で、今この会場にお呼びしていまーす! ガヤエアさーん?」
「はいよ。久しぶりだな」
ガヤエアさんが、登場し、ニヒルに笑う。わお、ダンディ!
「ネリアがガヤエアさんの弟子になった経緯を知りたいんですけど、話してもらえませんか?」
私が司会者らしく質問を振る。
「弟子になった経緯? 確か、弟子にしてくれ! って勢い良く飛び込んできたアイツに俺が、いいとも! 俺と一緒に強くなろう! って言ったんだ」
少し得意気に語るガヤエアさん。
「あれ? 確か何度か断って、でも最後はネリアにササラさんに――」
「フェイウちゃん! 頼むからその先はダメだ! 後生だから!」
ガヤエアさんはこの先を言わすまいと私の口を塞いだ。
「ふむー! ふむー!」
は、離してー!
「コ、コマーシャル入ります!」
慌てたように言うガヤエアさん。
「この世界にコマーシャルなんて概念はありませんよ!?」
「むー!」
結局私が話さないと約束するまで手を離してもらえなかった……。
「ごほん、気を取り直して次の質問です」
私は原稿を見る。
「劇中によく登場するリースト流、あれの説明をお願いします! ペンネームネリ……N・Hさんからです」
「今ネリアって言いかけなかったか?」
「いえいえ、気のせいですよぉー」
個人情報の取扱は大切ですからね。
「んー、まあいいか。えーっとだな、リースト流ってのはな、俺が立ち上げた流派の一つだ」
「ほうほう」
「流派には色々あって、カタラナ流とか、ミサナ流とか、神道山削流とか、いっぱいあるんだが、どれもがどれも大体演舞型、つまり形を意識した、美しくて、戦闘に不向きなものばっかりだった。んで、俺は自分が戦いやすいように、自分専用の流派を作ったんだ」
「確か流派を作るには、王都での許可が必要なんですよね?」
「そうだ。しかも、しっかりと国王の前での演舞が必要だ、まあ、俺の場合は、大会に優勝して、認められたんだが」
「凄い! やっぱり凄かったんですね!」
ナナカちゃんが驚いたような声を上げる。
「って、凄かったじゃなくて凄いの!」
さらっと失礼なことを言ってるねナナカちゃん!
「す、すまんのガヤエアよ」
苦笑いをしながらソアさんがフォローを入れる。
「この村で、わしの二番目に強いんじゃ。誇っていいぞえ?」
「……言わせておけば……ソア、表に出ろ。俺の剣技でその間違った認識を改めさせてやるぜ」
怒り心頭って感じのガヤエアさん。ひ、ひぃぃ……
「ほお? 若造よ、わしに勝とうとでも? 百年ほど早いんじゃ」
ふ、二人の間から物凄い闘気が!
「や、やるならこの特番が終わってからにしてくださーい!」
もう司会辞めたい……(泣)
「え、えーっと、どこまで話したっけ?」
二人を何とかなだめ、再開した。
「流派の話だったか? 確か俺が大会を優勝した話までだったはずだ。で、その後、剣術の大会だけじゃなく、武術の大会も優勝してな、結局リースト流は、二つできた。それがリースト流剣術と、リースト流体術だ」
ガヤエアさんが過去を懐かしむような目で話す。
「リースト流剣術は、全部で十一の技がある。第一の技流水、第二の技二連線、第三の技針撃……って感じにな。んで、リースト流体術も同じだ。全部で技は十一個」
「ほえー、結構バリエーションあるんですねぇ、ご主人の戦いを見る機会が残念ながらあんまりないので、どこまで習得していんですかね?」
ナナカちゃんが、ガヤエアさんに質問する。
「うーむ、一応第五の技までの型は教えてあるから、多分両方とも、第四の技ぐらいだと思うぜ」
「ペースが遅いですねぇ。私がこの前見たときは、確か、第二の技だったはず……」
「……遅っ」
思わず呟いちゃったよ!
「ま、気楽に待ってやんな。ネリアは才能は無いが、やる気は人一倍だ」
「……ですね!」
「んじゃ、俺はここでおさらばだ。アディオス!」
と、ガヤエアさんは退場していった。
「じゃ、ネリアの説明の続きー!」
次はみんなお待ちかね、サイフォスさんの出番です!
「ネリアは、剣術だけでは駄目だと思い、村の魔道士、マジックアカデミアを飛び級で、かつ主席で卒業した天才魔道士に師事することにしました! しかも美女! 小野小町もびっくり! その彼女の名前はサイフォス・クリシュライド! では、どうぞ!」
バッ! とさっきガヤエアさんが出てきた幕が開く。
「……ど、どうも……」
サイフォスさんは、控えめに手を振り、私の横の椅子に座った。
…………サイフォスさんめっちゃ顔赤い!
「だ、誰!? こんな紹介文書いたの!?」
私が読み上げた紹介文を赤面しながら破りさった。
「あ、書いたのは私です! 物足りませんでしたか?」
ナナカちゃんが元気よく名乗りを上げる。
「物足りないんじゃなくて書きすぎ! 盛すぎだよ!」
そうかなぁ? 全部事実だし、そこまで照れること無いんじゃないかなぁ?
「フェイウちゃんだって、あんなに書かれたら恥ずかしいでしょ!?」
「いや全く」
「う、嘘!? そんなこと無いよね!? ねえソア様!?」
ソアさんに縋るサイフォスさん。
「サイフォスよ、お主が謙虚すぎるだけじゃ。わしだったらもう少し書いてもらうぞ」
…………あっ、ソアさんも私達と同じ考えでしたか……。
サイフォスさんはがっくりと肩を落とし、やや自嘲気味につぶやき出した。
「もういいわよ……ええ、私は天才よ……研究に没頭すること十五年、彼氏も友達もいない孤高の魔道士よ……もう闇落ちするわ……」
ああ、サイフォスさんが闇落ち! どよーんとした雰囲気に!
「サイフォスお主……」
流石に可哀想になったのか、バッとサイフォスさんのもとへ駆け寄るソアさん。
「師弟パワーで蘇ってー!」
ドドドとサイフォスさんに突撃していく。
「……師匠」
サイフォスさんは突撃してくるソアさんを柔らかく受け止めた。
「もお可愛いー!」
そしてそのままぎゅーっと抱きしめる。
「ぐふっ……く、苦しいのじゃ……」
思いっきり抱きしめられ、顔を青くしてサイフォスさんの腕をタップする。
「この可愛さは反則級だよー」
嬉しそうにサイフォスさんはソアさんの頭を撫でる。
「げ、元気が出たなら良かったのじゃ……早く離して……」
弟子思いのソアさんは一瞬嬉しそうな顔をした後、カクっと首が落ち、意識を飛ばしてしまった。
「……ごめんね?」
気絶したままのソアさんを愛で続けること十分。落ち着いたのか、顔をまた赤くし小声で私に謝罪をした。
「い、いえ、元気になってよかったです」
私は後ろでノビているソアさんを横目でちらりと見ながら答える。私の笑い、引きつってなかったかな……?
「で、では質問です。この世界の魔術の基礎知識をもう少し詳しく教えてください、とのことです。ペンネームはネリ……N.Hさんです」
「今ネリアくんって言いかけなかった?」
「いいえ、気のせいです」
また言いかけてしまった! 気をつけなきゃ……。
「魔法の基礎知識ねぇ……。わかった。私で良ければガンガン説明しちゃうよ~。あ、ホワイトボードとかある?」
サイフォスさんは案外ノリノリで裏からホワイトボードをゴロゴロと引きずり出してきた。
「私とネリア君、ソア様、そしてフェイウちゃんが使っている魔法の基礎は七つのアークからなりたっているの。火、水、草、土、雷、闇、光があって、私とネリア君が使用しているアークが水、で、ソア様が使用しているのが闇。ま、ソア様はどのアークも使えるんだけどね」
なるほどー。勉強になります。
「フェイウちゃんが使っている雷は、結構レアなんだよ? 知ってた?」
「そうなんですか?」
「そうよ。多分ソア様でも雷の中級魔法は難しいと思うわ」
ほえー、そうだったのか。
「で、どうやってその人の適正アークを見つけるかって言うとね、本当は判別石っていう特殊な鉱石を使うの。判別席に自分の魔力を流すと、自分の属性の色に光るの」
「でも、私は使って無いですよ?」
「確か独学って言ってたもんね。それは多分だけど、フェイウちゃんがマルチアーカーだったんじゃない?」
「マルチアーカー?」
なんぞそれは?
「えーっと、なんて言えばいいのかな……ざっくり言っちゃうと、いろいろな属性を扱える人のこと。私も一応は他のアークも使えるけど、それは修練の結果によるもの。先天性の才能のマルチアーカーはそんな努力無しで、複数の属性を使える」
「それってすごくないですか?」
「そう、凄いのよ。確率としては十万分の一。で、ソア様は――」
「これ、あまりわしの手の内を明かすでない」
ずびし、といつの間にか復活したソアさんがサイフォスさんに手刀を食らわす。
「いたっ! わ、わかりましたよぅ」
ソアさんはやっぱりミステリアスなままでいたいのね。
「それもあるが、情報が漏れる口は少ない方がいいからの」
まるで私の考えを読んだかのように呟くソアさん。
「ま、わしからも補足説明じゃ。わしが見たところ、フェイウは火、木、雷、光のアークが使えそうじゃな」
「そ、そんなにですか師匠!?」
サイフォスさんは驚きの声をあげた。そんなに凄い?
「うむ、こやつの才能は百年に一度出てくるかどうかのものじゃ。はぁ……ネリアがかわいそうじゃ」
「そうですね……」
二人が同時にため息をつく。
「あのー」
少し申し訳ない気持ちにはなったが、私にはやることがあるのだ!
「サイフォスさんには他の質問も届いているんで次、いいですかね?」
少し時間が押してるんで……。
「おっけー。どしどしどうぞ!」
「では……」
私は読み上げるのが少しためらわれる質問をする。
「ス、スリーサイズを教えてください。ペンネームは……マザイ」
「ちょー! なんで名前を読み上げてるのフェイウちゃーん!」
外野からマザイの声が聞こえた。けど、私は無視することにする。
「うぇぇ……?」
明らかに困惑……というより、ドン引きしたような声を上げるサイフォスさん。
「……屑じゃな」
「屑ですね」
私とソアさんは揃って冷ややかな目でマザイの質問を見つめる。
「……マザイくんは、その……私のス、スリーサイズが聞きたいんだよね……?」
……へ?
「い、一回しか言わないからね!」
すーっと大きく息を吸う。
「う、上から93、59、86……だよ」
………………い、言ったーーー!?
私とソアさんが驚きで目を丸くさせていると、サイフォスさんは――
「だ、だってだって! いつもマザイくん、優しくしてくれるし、その……」
もじもじと、本当に恥ずかしそうに指をいじる。
「こんな私に興味を持ってくれるって……嬉しいじゃない?」
…………ガチ天使!
「……うぅっ……天使だ……天使がいるよ……」
……マザイはガチ泣きしていた。未だかつてこの世界で、女性のスリーサイズを聞いてガチ泣きする男がいただろうか……?
「……マザイ、キモいぞお主……」
ソアさんドン引き。
「……ありがとう……俺、これからももっと応援していくよ!」
こうしてサイフォスさんのファンはまた一層信仰心を増したようだ。
「さて、次はわしじゃな」
お待ちかね、ソアさんのお時間です。
ここで説明も入れとかなきゃね。
「えー、ネリアは収穫祭間近、伝説の戦士である聖騎士に出会いました。しかし、彼は無情にも、ネリアに才能がないことをハッキリと告げます」
「うむ、そこでわしの出番じゃな」
「もう少し後なのでどうかお静かに……。えー、その後、傷ついたネリアは私と収穫祭に出かけ、癒やされるのであった……」
「おい、嘘を言うな嘘を」
……てへ、ばれちゃった。
「わしじゃよ、わし。わしが傷心のネリアを癒したのじゃ」
無い胸を精一杯張るソアさん。
「えー、はい。そうです、ソアさんです」
面倒だから十話あたりを見てね!
「わしの説明雑すぎない!?」
ソアさんの驚きを無視し、先程の説明の続きに戻る。
「ソア・クラナド・レイズはこの世界で、天幻の称号を持つ最強に近い魔法使いです。ただしロリババア」
「殺す」
「じょっ、冗談ですよ!」
今! 一瞬ソアさんの背後に超巨大な何かが強烈な殺意と共にブワッと出てきた!
「たちの悪い冗談じゃ」
ふっ、とソア様が肩の力を抜くと、殺意が消える。
「こ、怖かった……」
私がブルブル震えていたら、マイクを奪われた。
「ソア様に年齢のことを聞くなんて……フェイウちゃん、恐ろしい子……」
後ろでサイフォスさんが何か言ってるけど、無視しよう。
「んじゃ、わしも自分で自己紹介させてもらうぞぃ」
私からマイクを奪い取ったソアさんが勝手に進行を始めた!
「わしはネリアの才能の無さをひと目で見抜いた。まあ、本当に覇気も何も無かったのでな。で、わしは考えた。一応勇者の子孫であるネリアなら、中途半端でもそこそこの数の能力や技を手に入れられるのではないかとな」
ソアさんは胸元の魔法陣から、一冊の本を取り出す。
「これはネリアの成長日記じゃ」
タイトルの欄には、ネリア・ハラベストの成長日記』と記されていた。
「なんだかあじさいの観察日記みたいですね~」
ナナカちゃんがポケーッと感想を漏らす。
「ここにネリアの全てのデータが載っておる。今覚えているもの、このご習得させようと思っているもの全部じゃ!」
「ほおー、どれどれ、私にも少し見せて……」
「いかん!」
「ぎゃっ!?」
ふわふわと飛行しながら本に近づいたナナカちゃんが、本で挟まれた!
「く、くるひいですソア様……」
ぎゅむっと潰されてしまったナナカちゃんは必死に押し返す。
「まだ完成していないのでな。まだ見せることはできん」
「わ、わかりますたから、離して……」
息も絶え絶えなナナカちゃん。
「む、これはすまぬ」
ソアさんはサッと本を消し、ナナカちゃんを自由にした。
「苦しかったですよ……」
げっそりしたナナカちゃんは私の肩の上にちょこんと座る。
「……フェイウさん、フェイウさん」
「ん? どうしたの?」
こそこそとナナカちゃんが耳打ちしてきた。
「実は、チロッと内容を読むことができたんですけど、なかなか凄かったですよ」
「そんなに? どこまで網羅してるの?」
ストーカもびっくりみたいな情報まではいってたりするの?
「いや、そういうことでは無いんですよ……もう少し寄ってもらえます?」
「こう?」
顔を少し傾け、ナナカちゃんに寄せる。
「……ソア様、実は字が可愛いんですよ! いや、字だけじゃなくて、書き方も!」
「え! そうなの!?」
なにそれ! 気になる!
「で、こっそり魔書館から日記を持ってきちゃったんですけど……読みたいですか?」
「読みたい読みたい!」
私はちらりとソアさんの方を見る。
「ふむ、こういうのありじゃのう」
ソアさんはサイフォスさんと何かを話している。チャーンス!
「では……」
ソアの日記帳と書かれた日記を開く。
「……字、本当に可愛い……」
もう本当に可愛いの! 丸っこくて、少し小さめで、綺麗!
で、内容を読んでみる。
「えーっと、八月一七日、きょう、ネリアは新しく魔法をおぼえたの! すごい! やればできるの! でも、わたしったら、ついきびしくしちゃうの……。反省しなきゃ」
……………誰? これは誰の日記なの?
あまりにも違いすぎて一度日記を閉じて深呼吸。
「……ナナカちゃん」
「……なんでしょうフェイウさん」
二人で苦笑い。
「これ、ネリアに見せたらどう思う?」
「きっと驚いて卒倒するレベルですね」
私たちはソアさんの尊厳のため、これを見なかったことにした。
「さあ、次のコーナー! 私の紹介に移るよー! ……はあ、もう疲れた」
折角私の紹介コーナーなのに、疲労感が凄い……。自由奔放な人たちに振り回されて、私の精神と体はボロボロよ……。俺の体はボロボロだー!
「私のことを自分で自己紹介しても面白みがないので、またもやゲストをお呼びしています! で、私は誰かは知らないので、早速お呼びしましょう! この方です! どうぞ!」
私の合図で舞台裏から出てきたのは――?
「どうも~、メーナ・ロウ・アラスダイでーす」
……………お母さん!?
「な、なんでここに……?」
「来ちゃった♡」
てへ、と可愛らしく笑うお母さん。
「てへじゃなーい! 誰!? お母さん呼んだの!」
「あ、わしじゃ」
「わしじゃ、じゃなーい!」
まるで先程の仕返しとばかりに、にやりと口の端を歪め笑うソアさん。
「あらあら、私が来たら嫌だった?」
私の様子を見て少し悲しそうに顔を伏せるお母さん。
「い、いや、別にそんなこと……」
急に悲しそうになったお母さんを見て、思わず私はタジタジになる。
「き、来てくれて嬉しいよ!」
「……そう? やっぱりそう思ってたのよ!」
急に元気になる。
「じゃあ、せっかくだし、紹介させてもらうわね! あぁ、実の娘の紹介をするなんてなんだか緊張するわぁ」
嬉しそうにポケットから紙を取り出す。
「えーっと、私の娘であるフェイウ・アラスダイはただいま十七歳! ピチピチの生娘よ! 私に似て銀髪で、美少女。……ただし、ファッショセンスには期待しないことね」
そ、それは言わなくていいと思うんだけど……。
「でね、こんな私の娘はとある男の子に恋をしています!」
「……ちょーーー!」
な、何をいきなり言おうとしてるのぉぉぉ!?
「その男の子の名前はネリア・ハラベスト! で、今日私はなんと! 二人の出会いのころの絵、あ、私が書いたものなんだけど、見せちゃうね」
舞台裏から大きな額縁を持ってくるお母さん。
「ほぉ、これがネリアとフェイウかの?」
「そう、確か四歳か五歳の頃の絵かな?」
ソアさんはしげしげと絵と私の顔を見比べる。
「しかし、よく描けておるのぉ。画家の才能があるの」
「そうかしら?」
私も観念しながら、初めて見る絵を見てみる。
「……うっま……」
想像以上の出来にびっくりした。
「これってネリアが私に投げ飛ばされて、骨折したとき?」
「そうよー。あの時のポーション代、高かったわねー」
「……恐ろしいのぉ」
私は苦笑いをしながら、初めて私達が出会った頃のことを思い出す。
~今から約十三年前~
「な、なに? だれ?」
私は目の前の黒髪の男の子に目を向ける。
「わたし? わたしはさいきょーむてきびしょーじょのフェイウちゃん!」
にっこり笑顔で男の子に詰め寄る。
「あなたは?」
目の前の黒髪の男の子は、ちらりと手を繋いでいるお父さんに目を向ける。
「ん? ああ、知らない人に名前を教えるなってこの前言ったからか? 別にいいぞ。ご近所のメーナさんのとこの娘さんなら」
最近引っ越してきたえっと……ぐらんさんだっけ?
「……ぼ、ぼくはネリア」
ぼそりとうつむきがちに自己紹介をするネリア。
「へぇー、よろしくっ! じゃっ、いっしょにあそびにいこうよ!」
「え、えぇ……?」
またちらりとお父さんを見る。
「良かったなネリ。初めてこっちで出来た友達じゃないか。うし、暗くなる前には帰ってこいよ。お嬢ちゃん、うちの弱虫を頼んだ」
「まかされた!」
私はエヘンと胸を張る。
「じゃあ俺は家に戻るからな。仕込みがまだ終わってないんだ」
そしてこの場には私とネリアだけが残された。
「……おとうさん……」
ネリアのお父さんが見えなくなった途端、ネリアの目には涙が浮かび始めた。
「ちょ、ちょっと! なかないの! おとこのこでしょ!」
私はぐわんぐわんとネリアを揺さぶる。
「ふぇ、ふぇいうちゃん……はいちゃうよ……」
「おとこならげろげろしても、なかなければおーけー!」
「そ、そんなばかな……」
そして私が手を離した後、ネリアは青い顔で草むらによろよろと向かい、げろげろしていた。
これが私とネリアのファーストコンタクト。まあ、初っ端嘔吐という、かなり最悪な出会いだったなぁ……。
「フェイウ? もうこのコーナー、終わりの時間が近いわよ?」
ハッと回想から帰ってくると、もう私のコーナーの時間は終わりに近づいていた。
「えぇぇ!? まだほぼ何も紹介してないのに!」
「まあ、時間は時間じゃ。残念じゃったな。ま、知りたい人は一話から読み返してみるのじゃ」
「それ、絶対読み返す人いないですよ……」
無念……。
「つ、次はナナカちゃんの紹介です!」
悲しみを抑え、次のコーナに行こう……。
「はいどーも! みなさんこんにちはー! みんなのアイドルナナカですっ!」
きらりーん! と輝くような笑顔で登場ナナカちゃん。
「なんかアイドルデビューしてから、ますます磨きがかかったの」
「へっへーん! ナナカちゃんの可愛さが更にパワーアップですよ!」
私たちに向けてピースサイン。
「さて、今回は、ナナカちゃんの紹介だけでなく、お姉さん方にも登場してもらおうと思います!」
「はい! でも、イチカお姉ちゃんが、もう少し待ってほしいそうです」
「了解! では、先にナナカちゃんの紹介からかな」
私は台本に目を落とす。
「彼女の名前はナナカ。ソアさんに創られた、『異世界の歩き方』という本の妖精です。名前からわかる通り、異世界を渡り歩く能力を持っています。ナナカちゃんは、ネリアのと契約していて、ネリアの大事な仲間です。最近は、歌手デビューしたんだよね?」
「そうですフェイウさん! ナンバーズ習得のためですけどね」
「そうそれ! 私、ナンバーズってこの前話してたけど、なんなの?」
ナンバーズ、とても重要みたいだし、是非とも知っておきたい!
「ふむ、それならわしが説明しよう」
すっと横からまたソアさんが出てきた。
「……出番多すぎません?」
「なに、作者がわしのことを好きなんじゃろう。人気者はつらいの。で、ナンバーズの説明じゃな。ナンバーズというのは、ずばり、シスターズ専用にわしが考案した魔法なんじゃ。で、ここが肝心なのじゃが、ナンバーズはズバリ、シスターズにしか使えん。理由としては、魔力消費の大きさじゃ。ま、お主なら使えるかもしれんがの」
「私ですか?」
「そうじゃフェイウよ。お主も一応シスターズの一員となったんじゃからな」
そう、この私フェイウは、ひょんなことからシスターズに参加しているのだ。あ、私は別に本の妖精じゃないよ?
「そうなんですか!? ってことは、ぐへへ、私にもついに妹が……」
ナナカちゃんがめちゃくちゃ嬉しそうな顔してる! というより、危ない顔してる!
「姉としての威厳を見せるときがついに……」
ナナカちゃんもお姉さんでありたいという欲があるのかな?
「あ、お姉ちゃんたちの準備が出来たみたいなので、お呼びしますね!」
ナナカちゃんが大きな声で、お姉さん方を呼ぶ。
「イチカお姉ちゃんー! ニホ姉! ミツカお姉さま! シーナ姉さま!」
「うむ、遅くなったな。フェイウー! ナナカー! 来たぞー!」
「……どうもなの」
「はーい! お呼ばれしました、ミツカですっ」
「やあ、皆様はじめまして」
各々個性を見せつけながら登場。
「あら~、あなたがフェイウちゃんね? 初めまして、私はミツカよ」
一人だけ物々しい軍服……と思っていたら、一転、もの凄くたおやか!
「は、初めましてミツカさん。私、この度シスターズに入らせていただきましたフェイウです」
「もー、私はお姉ちゃん、と気軽に呼んでいいのよ? それにしても、可愛いわ~」
むぎゅ。気がつくと私は、もの凄く柔らかい胸に顔を埋めていた。
「ふむー!?」
な、なんなのこの柔らか天国は! 幸せを感じる! 同時に、私の胸に対するコンプレックスがむくむくと膨れ上がる! なんて罪な胸なの……。
「ああぁ、私もやってほしいですー!」
ナナカちゃんの羨ましそうな声が聞こえる。
「あらあら、ナナカ、また後でね?」
「むぅ、私だって胸はあるのだぞ……」
イチカお姉ちゃんの声も聞こえるけど、まあ……聞こえなかったことにしておこう。
「で、まだ私は彼女とファーストコンタクトなのですが。どうも、私はシーナです。以後お見知りおきを」
「あ、どうも初めまして」
きっちりとした挨拶。そして、私と同じようなサラサラの銀髪。どこかシンパシーを感じるわ……。
「なるほど、非常に私と髪色が似ていますね。そして、是非とも私も他の姉方に習い、姉とお呼びください」
あ、やっぱりそう思う? そして、また姉と呼んでくれと来ましたか。ナナカちゃんみたいに、呼び方を変えたほうがいいかな?
「私もそれ思ったの。でも、フェー子のほうが鮮やか。まあ、シーちゃんもいい色の髪なの」
イチカお姉ちゃんを覗くと、唯一接点のあったニホ姉が、まじまじと私とシーナを見比べる。
「そんな、恥ずかしいですよニホお姉」
少し照れたように髪をささっと隠すシーナお姉さん。
「ふむふむ、やはりシスターズを招集すると目の保養になるの」
「あ、それ俺も思いました! めちゃくちゃいいっすね!」
「お主は何処かに行っとれ」
「酷いっ!?」
いつの間にかでれーっとした顔でいたマザイを何処かにフルパワーで投げ飛ばしたソアさん。飛んでけー。
「ふぅ、あの男もなかなか可哀想なやつじゃ」
「私もそう思います」
「さあ、残念ながらお時間が近づいてきました。では、最後のゲストをお呼びしましょう! リーヴァさん、出番ですよー!」
最後の締めくくり、きっちり頼みます!
「はい、皆様、お久しぶりでございます」
白いドレス調のワンピースの裾をひらりひらりと揺らしながら、まさに清純派、といった感じの褐色のお姉さまが登場する。そう、我らが良心、リーヴァさんである!
「初めましての方ははじめまして。私、ハイとシュヴァル・リーヴァでございます。ネリア・ハラベスト様の眷属にございます」
と、優美にお辞儀。はぅ、正統派すぎる……!
「お久しぶりですねリーヴァさん!」
私は久しぶりの再会に喜ぶ。
「ええ、ご無沙汰しております、フェイウ様」
笑顔で渡しに笑いかけてくれる。毎回思うのだけど、この私、フェイウちゃんがメインヒロインのはずなのに、リーヴァさんと話すとなんだか、劣等感を感じちゃうのよね。
「えー、リーヴァさんは、ネリアがここではない世界、キースラードで出会いました。Sランク魔獣である彼女が、ネリアと出会ったきっかけは、お酒です。彼女はこう見えて、お酒が大好きなのです」
「そのおかげで、私たちは仲間になったんですよね!」
ナナカちゃんが、ひょいっと顔を出した。
「ええ、この姿ではないときは、特にお酒の香りに敏感になって……」
少し恥ずかしそうにリーヴァさんははにかむ。うぅ、またヒロインとしての格の違いを見せつけられた気がするよぉ……。
「で、少しメタい話をすると、次からはネリアのお話に戻るじゃないですか、前回、かなーりべた褒めされて逃走という手段をとったリーヴァさん、お気持ちはどうですか?
少しだけ意地悪な質問を、と思ったのだが――
「とても嬉しかったです。何よりも、あれが本心だということが、何よりもです。私は、ご主人様の従者として、ふさわしいのかと常日頃から考えていました。ですが、本当に安心しました。それに……」
ここで、恥ずかしそうに顔を下に向ける。
「告白、に近いような言葉も頂きましたし」
「…………え?」
私はその言葉にフリーズする。
「ああ、言ってしまいました! お恥ずかしい!」
そしてバヒュンとその場から猛スピードで飛んで逃げてしまった。速すぎて、一瞬で姿が掻き消えた。
「……前回何があったんだろう」
バクっとしか把握していなかった己の愚かさを悔いた。
「……さて、全七回にわたってお送りしてきた振り返り、どうだったでしょうかー!」
まあ、振り返りという振り返りはしていないんだけどね!
「うむ、どちらかと言うと、キャラ紹介のほうが近い気がするのじゃが」
「ソア様、それは言わないお約束です」
わいわいと他の人達も集まってきた。
「えーっとですね、これで振り返りは終わりです。次からは、ネリアのターン!」
かなり長々とこの企画引きずったよね、ほんとに。ま、私、フェイウちゃんが司会というのもやぶさかじゃなかったし、良しとしようじゃないの!
「以上、フェイウがお送りしました―! それじゃあ、まったねー!」
「……はいはーい! どうも! みんなお待ちかねのフェイウちゃんだよっ!」
元気してたー? ひっさしぶりー!
「おひさしぶりでーす! ナナカです!」
二人同時にピース!
「えーっとですね、今回はなんと! いろいろごちゃごちゃしてきたであろう皆さんに、私達が今まで起きてきたことを、振り返りながら解説しまーす! では、スペシャルゲスト? の登場です!」
「うむ、ばれんたいん以来じゃな、皆のものよ、ソアじゃ」
涼しい顔でソアさんは着物の裾をはためかせ登場する。
「どうもー、サイフォスです」
いつもよりも少し豪華なローブを着て、笑顔で登場したサイフォスさん。
「今回はいわゆる特番じゃな」
「そうですソアさん! その通り!」
少し事態の収集に当たろうっていう、作者さんの考えです。
「では、まずは最初からじゃ。寝ずに聞くのじゃぞ?」
「はーいソアせんせー!」
元気にナナカちゃんが返事をする。
「相変わらずペースを乱すのぉ……」
ソアさんが、気を取り直すようにコホンと一つ咳払いをする。
「まず、この話は、異世界と異世界を渡り歩く異世界クロスオーバーファンタジーじゃ。で、舞台はわしらが住む世界インバワルズじゃ。まあ、いろいろな世界を渡り歩くのじゃから、舞台は、全世界でもあるのじゃ。で、わしらが住むインバワルズでは、魔獣が存在する。俗に言う、剣と魔法の世界ってやつじゃな!」
「ソア様、それは漫画の読みすぎです」
サイフォスさんが冷静にツッコむ。
で、次は私ね!
「主人公の名前はネリア・ハラベスト! 才能なしのダメ男よ!」
私はババーンと真実だけを語る。
「いやそれは要約しすぎですよ!?」
ナナカちゃんにツッコまれちゃった、てへ。
「まあ、間違ってはいないんですが……」
どうしたもんかと頭を悩ませるナナカちゃん。
「そのう、ご主人はですね、確かに才能なしですけど、ダメ男では無いんですよ。ええ、多分」
「ナナカよ、自分に言い聞かせるように言うのはやめてあげてくれぃ、あやつにもいいところはあるんじゃ」
あまりにもネリアが不憫に思えたのか、ソアさんがフォローを入れる。
「命令すれば、ぶつくさ言いながらもしっかりこなすところとか、お願いした買い物は、直ぐ買ってくるところとかな」
「それ良いところじゃなくて、従順なパシリですよね」
サイフォスさんが冷静にツッコミを入れる。
「む? それ以外にはやる気があるところしか良いところがないぞ?」
「そこをもっと言ってあげて下さい」
「ふむ、なるほど。では、逆に聞くがサイフォスよ、お主が思うネリアの良いところは何じゃ?」
「そ、それはですね……」
サイフォスさんは、たっぷり三十秒ほど考えた後、言った。
「……思わず養ってあげたくなっちゃうところですかね?」
「「「それ、駄目なところだから!(じゃから!)(ですよ!)」」」
見事に三人同時にハモった。
「えー、このままでは埒が明かないので、作者さんが渡してきた設定資料を読みます」
私は司会者としての義務を果たすため、設定資料を取り出した。
「それがあるならもっと早くだして欲しかったわい……なんだかツッコミ疲れてしまったのじゃ」
なんだかもうお疲れの様子なソアさん。
「えーっと、ネリア・ハラベスト、年齢は十七歳。彼はインバワルズのキワカ村で生を受ける。その後、順調に育っていくが、とあることが判明。そう、彼には何の才能も無かったのである!」
ここ大事ね! 才能がないってとこ!
「そんなトラウマを抱えながらも、懸命に自分を高め、いつか魔獣狩りを専門とするハンターになろうと最強の剣豪である男に弟子入りをお願いする。彼の名は、ガヤエア・リースト。で、今この会場にお呼びしていまーす! ガヤエアさーん?」
「はいよ。久しぶりだな」
ガヤエアさんが、登場し、ニヒルに笑う。わお、ダンディ!
「ネリアがガヤエアさんの弟子になった経緯を知りたいんですけど、話してもらえませんか?」
私が司会者らしく質問を振る。
「弟子になった経緯? 確か、弟子にしてくれ! って勢い良く飛び込んできたアイツに俺が、いいとも! 俺と一緒に強くなろう! って言ったんだ」
少し得意気に語るガヤエアさん。
「あれ? 確か何度か断って、でも最後はネリアにササラさんに――」
「フェイウちゃん! 頼むからその先はダメだ! 後生だから!」
ガヤエアさんはこの先を言わすまいと私の口を塞いだ。
「ふむー! ふむー!」
は、離してー!
「コ、コマーシャル入ります!」
慌てたように言うガヤエアさん。
「この世界にコマーシャルなんて概念はありませんよ!?」
「むー!」
結局私が話さないと約束するまで手を離してもらえなかった……。
「ごほん、気を取り直して次の質問です」
私は原稿を見る。
「劇中によく登場するリースト流、あれの説明をお願いします! ペンネームネリ……N・Hさんからです」
「今ネリアって言いかけなかったか?」
「いえいえ、気のせいですよぉー」
個人情報の取扱は大切ですからね。
「んー、まあいいか。えーっとだな、リースト流ってのはな、俺が立ち上げた流派の一つだ」
「ほうほう」
「流派には色々あって、カタラナ流とか、ミサナ流とか、神道山削流とか、いっぱいあるんだが、どれもがどれも大体演舞型、つまり形を意識した、美しくて、戦闘に不向きなものばっかりだった。んで、俺は自分が戦いやすいように、自分専用の流派を作ったんだ」
「確か流派を作るには、王都での許可が必要なんですよね?」
「そうだ。しかも、しっかりと国王の前での演舞が必要だ、まあ、俺の場合は、大会に優勝して、認められたんだが」
「凄い! やっぱり凄かったんですね!」
ナナカちゃんが驚いたような声を上げる。
「って、凄かったじゃなくて凄いの!」
さらっと失礼なことを言ってるねナナカちゃん!
「す、すまんのガヤエアよ」
苦笑いをしながらソアさんがフォローを入れる。
「この村で、わしの二番目に強いんじゃ。誇っていいぞえ?」
「……言わせておけば……ソア、表に出ろ。俺の剣技でその間違った認識を改めさせてやるぜ」
怒り心頭って感じのガヤエアさん。ひ、ひぃぃ……
「ほお? 若造よ、わしに勝とうとでも? 百年ほど早いんじゃ」
ふ、二人の間から物凄い闘気が!
「や、やるならこの特番が終わってからにしてくださーい!」
もう司会辞めたい……(泣)
「え、えーっと、どこまで話したっけ?」
二人を何とかなだめ、再開した。
「流派の話だったか? 確か俺が大会を優勝した話までだったはずだ。で、その後、剣術の大会だけじゃなく、武術の大会も優勝してな、結局リースト流は、二つできた。それがリースト流剣術と、リースト流体術だ」
ガヤエアさんが過去を懐かしむような目で話す。
「リースト流剣術は、全部で十一の技がある。第一の技流水、第二の技二連線、第三の技針撃……って感じにな。んで、リースト流体術も同じだ。全部で技は十一個」
「ほえー、結構バリエーションあるんですねぇ、ご主人の戦いを見る機会が残念ながらあんまりないので、どこまで習得していんですかね?」
ナナカちゃんが、ガヤエアさんに質問する。
「うーむ、一応第五の技までの型は教えてあるから、多分両方とも、第四の技ぐらいだと思うぜ」
「ペースが遅いですねぇ。私がこの前見たときは、確か、第二の技だったはず……」
「……遅っ」
思わず呟いちゃったよ!
「ま、気楽に待ってやんな。ネリアは才能は無いが、やる気は人一倍だ」
「……ですね!」
「んじゃ、俺はここでおさらばだ。アディオス!」
と、ガヤエアさんは退場していった。
「じゃ、ネリアの説明の続きー!」
次はみんなお待ちかね、サイフォスさんの出番です!
「ネリアは、剣術だけでは駄目だと思い、村の魔道士、マジックアカデミアを飛び級で、かつ主席で卒業した天才魔道士に師事することにしました! しかも美女! 小野小町もびっくり! その彼女の名前はサイフォス・クリシュライド! では、どうぞ!」
バッ! とさっきガヤエアさんが出てきた幕が開く。
「……ど、どうも……」
サイフォスさんは、控えめに手を振り、私の横の椅子に座った。
…………サイフォスさんめっちゃ顔赤い!
「だ、誰!? こんな紹介文書いたの!?」
私が読み上げた紹介文を赤面しながら破りさった。
「あ、書いたのは私です! 物足りませんでしたか?」
ナナカちゃんが元気よく名乗りを上げる。
「物足りないんじゃなくて書きすぎ! 盛すぎだよ!」
そうかなぁ? 全部事実だし、そこまで照れること無いんじゃないかなぁ?
「フェイウちゃんだって、あんなに書かれたら恥ずかしいでしょ!?」
「いや全く」
「う、嘘!? そんなこと無いよね!? ねえソア様!?」
ソアさんに縋るサイフォスさん。
「サイフォスよ、お主が謙虚すぎるだけじゃ。わしだったらもう少し書いてもらうぞ」
…………あっ、ソアさんも私達と同じ考えでしたか……。
サイフォスさんはがっくりと肩を落とし、やや自嘲気味につぶやき出した。
「もういいわよ……ええ、私は天才よ……研究に没頭すること十五年、彼氏も友達もいない孤高の魔道士よ……もう闇落ちするわ……」
ああ、サイフォスさんが闇落ち! どよーんとした雰囲気に!
「サイフォスお主……」
流石に可哀想になったのか、バッとサイフォスさんのもとへ駆け寄るソアさん。
「師弟パワーで蘇ってー!」
ドドドとサイフォスさんに突撃していく。
「……師匠」
サイフォスさんは突撃してくるソアさんを柔らかく受け止めた。
「もお可愛いー!」
そしてそのままぎゅーっと抱きしめる。
「ぐふっ……く、苦しいのじゃ……」
思いっきり抱きしめられ、顔を青くしてサイフォスさんの腕をタップする。
「この可愛さは反則級だよー」
嬉しそうにサイフォスさんはソアさんの頭を撫でる。
「げ、元気が出たなら良かったのじゃ……早く離して……」
弟子思いのソアさんは一瞬嬉しそうな顔をした後、カクっと首が落ち、意識を飛ばしてしまった。
「……ごめんね?」
気絶したままのソアさんを愛で続けること十分。落ち着いたのか、顔をまた赤くし小声で私に謝罪をした。
「い、いえ、元気になってよかったです」
私は後ろでノビているソアさんを横目でちらりと見ながら答える。私の笑い、引きつってなかったかな……?
「で、では質問です。この世界の魔術の基礎知識をもう少し詳しく教えてください、とのことです。ペンネームはネリ……N.Hさんです」
「今ネリアくんって言いかけなかった?」
「いいえ、気のせいです」
また言いかけてしまった! 気をつけなきゃ……。
「魔法の基礎知識ねぇ……。わかった。私で良ければガンガン説明しちゃうよ~。あ、ホワイトボードとかある?」
サイフォスさんは案外ノリノリで裏からホワイトボードをゴロゴロと引きずり出してきた。
「私とネリア君、ソア様、そしてフェイウちゃんが使っている魔法の基礎は七つのアークからなりたっているの。火、水、草、土、雷、闇、光があって、私とネリア君が使用しているアークが水、で、ソア様が使用しているのが闇。ま、ソア様はどのアークも使えるんだけどね」
なるほどー。勉強になります。
「フェイウちゃんが使っている雷は、結構レアなんだよ? 知ってた?」
「そうなんですか?」
「そうよ。多分ソア様でも雷の中級魔法は難しいと思うわ」
ほえー、そうだったのか。
「で、どうやってその人の適正アークを見つけるかって言うとね、本当は判別石っていう特殊な鉱石を使うの。判別席に自分の魔力を流すと、自分の属性の色に光るの」
「でも、私は使って無いですよ?」
「確か独学って言ってたもんね。それは多分だけど、フェイウちゃんがマルチアーカーだったんじゃない?」
「マルチアーカー?」
なんぞそれは?
「えーっと、なんて言えばいいのかな……ざっくり言っちゃうと、いろいろな属性を扱える人のこと。私も一応は他のアークも使えるけど、それは修練の結果によるもの。先天性の才能のマルチアーカーはそんな努力無しで、複数の属性を使える」
「それってすごくないですか?」
「そう、凄いのよ。確率としては十万分の一。で、ソア様は――」
「これ、あまりわしの手の内を明かすでない」
ずびし、といつの間にか復活したソアさんがサイフォスさんに手刀を食らわす。
「いたっ! わ、わかりましたよぅ」
ソアさんはやっぱりミステリアスなままでいたいのね。
「それもあるが、情報が漏れる口は少ない方がいいからの」
まるで私の考えを読んだかのように呟くソアさん。
「ま、わしからも補足説明じゃ。わしが見たところ、フェイウは火、木、雷、光のアークが使えそうじゃな」
「そ、そんなにですか師匠!?」
サイフォスさんは驚きの声をあげた。そんなに凄い?
「うむ、こやつの才能は百年に一度出てくるかどうかのものじゃ。はぁ……ネリアがかわいそうじゃ」
「そうですね……」
二人が同時にため息をつく。
「あのー」
少し申し訳ない気持ちにはなったが、私にはやることがあるのだ!
「サイフォスさんには他の質問も届いているんで次、いいですかね?」
少し時間が押してるんで……。
「おっけー。どしどしどうぞ!」
「では……」
私は読み上げるのが少しためらわれる質問をする。
「ス、スリーサイズを教えてください。ペンネームは……マザイ」
「ちょー! なんで名前を読み上げてるのフェイウちゃーん!」
外野からマザイの声が聞こえた。けど、私は無視することにする。
「うぇぇ……?」
明らかに困惑……というより、ドン引きしたような声を上げるサイフォスさん。
「……屑じゃな」
「屑ですね」
私とソアさんは揃って冷ややかな目でマザイの質問を見つめる。
「……マザイくんは、その……私のス、スリーサイズが聞きたいんだよね……?」
……へ?
「い、一回しか言わないからね!」
すーっと大きく息を吸う。
「う、上から93、59、86……だよ」
………………い、言ったーーー!?
私とソアさんが驚きで目を丸くさせていると、サイフォスさんは――
「だ、だってだって! いつもマザイくん、優しくしてくれるし、その……」
もじもじと、本当に恥ずかしそうに指をいじる。
「こんな私に興味を持ってくれるって……嬉しいじゃない?」
…………ガチ天使!
「……うぅっ……天使だ……天使がいるよ……」
……マザイはガチ泣きしていた。未だかつてこの世界で、女性のスリーサイズを聞いてガチ泣きする男がいただろうか……?
「……マザイ、キモいぞお主……」
ソアさんドン引き。
「……ありがとう……俺、これからももっと応援していくよ!」
こうしてサイフォスさんのファンはまた一層信仰心を増したようだ。
「さて、次はわしじゃな」
お待ちかね、ソアさんのお時間です。
ここで説明も入れとかなきゃね。
「えー、ネリアは収穫祭間近、伝説の戦士である聖騎士に出会いました。しかし、彼は無情にも、ネリアに才能がないことをハッキリと告げます」
「うむ、そこでわしの出番じゃな」
「もう少し後なのでどうかお静かに……。えー、その後、傷ついたネリアは私と収穫祭に出かけ、癒やされるのであった……」
「おい、嘘を言うな嘘を」
……てへ、ばれちゃった。
「わしじゃよ、わし。わしが傷心のネリアを癒したのじゃ」
無い胸を精一杯張るソアさん。
「えー、はい。そうです、ソアさんです」
面倒だから十話あたりを見てね!
「わしの説明雑すぎない!?」
ソアさんの驚きを無視し、先程の説明の続きに戻る。
「ソア・クラナド・レイズはこの世界で、天幻の称号を持つ最強に近い魔法使いです。ただしロリババア」
「殺す」
「じょっ、冗談ですよ!」
今! 一瞬ソアさんの背後に超巨大な何かが強烈な殺意と共にブワッと出てきた!
「たちの悪い冗談じゃ」
ふっ、とソア様が肩の力を抜くと、殺意が消える。
「こ、怖かった……」
私がブルブル震えていたら、マイクを奪われた。
「ソア様に年齢のことを聞くなんて……フェイウちゃん、恐ろしい子……」
後ろでサイフォスさんが何か言ってるけど、無視しよう。
「んじゃ、わしも自分で自己紹介させてもらうぞぃ」
私からマイクを奪い取ったソアさんが勝手に進行を始めた!
「わしはネリアの才能の無さをひと目で見抜いた。まあ、本当に覇気も何も無かったのでな。で、わしは考えた。一応勇者の子孫であるネリアなら、中途半端でもそこそこの数の能力や技を手に入れられるのではないかとな」
ソアさんは胸元の魔法陣から、一冊の本を取り出す。
「これはネリアの成長日記じゃ」
タイトルの欄には、ネリア・ハラベストの成長日記』と記されていた。
「なんだかあじさいの観察日記みたいですね~」
ナナカちゃんがポケーッと感想を漏らす。
「ここにネリアの全てのデータが載っておる。今覚えているもの、このご習得させようと思っているもの全部じゃ!」
「ほおー、どれどれ、私にも少し見せて……」
「いかん!」
「ぎゃっ!?」
ふわふわと飛行しながら本に近づいたナナカちゃんが、本で挟まれた!
「く、くるひいですソア様……」
ぎゅむっと潰されてしまったナナカちゃんは必死に押し返す。
「まだ完成していないのでな。まだ見せることはできん」
「わ、わかりますたから、離して……」
息も絶え絶えなナナカちゃん。
「む、これはすまぬ」
ソアさんはサッと本を消し、ナナカちゃんを自由にした。
「苦しかったですよ……」
げっそりしたナナカちゃんは私の肩の上にちょこんと座る。
「……フェイウさん、フェイウさん」
「ん? どうしたの?」
こそこそとナナカちゃんが耳打ちしてきた。
「実は、チロッと内容を読むことができたんですけど、なかなか凄かったですよ」
「そんなに? どこまで網羅してるの?」
ストーカもびっくりみたいな情報まではいってたりするの?
「いや、そういうことでは無いんですよ……もう少し寄ってもらえます?」
「こう?」
顔を少し傾け、ナナカちゃんに寄せる。
「……ソア様、実は字が可愛いんですよ! いや、字だけじゃなくて、書き方も!」
「え! そうなの!?」
なにそれ! 気になる!
「で、こっそり魔書館から日記を持ってきちゃったんですけど……読みたいですか?」
「読みたい読みたい!」
私はちらりとソアさんの方を見る。
「ふむ、こういうのありじゃのう」
ソアさんはサイフォスさんと何かを話している。チャーンス!
「では……」
ソアの日記帳と書かれた日記を開く。
「……字、本当に可愛い……」
もう本当に可愛いの! 丸っこくて、少し小さめで、綺麗!
で、内容を読んでみる。
「えーっと、八月一七日、きょう、ネリアは新しく魔法をおぼえたの! すごい! やればできるの! でも、わたしったら、ついきびしくしちゃうの……。反省しなきゃ」
……………誰? これは誰の日記なの?
あまりにも違いすぎて一度日記を閉じて深呼吸。
「……ナナカちゃん」
「……なんでしょうフェイウさん」
二人で苦笑い。
「これ、ネリアに見せたらどう思う?」
「きっと驚いて卒倒するレベルですね」
私たちはソアさんの尊厳のため、これを見なかったことにした。
「さあ、次のコーナー! 私の紹介に移るよー! ……はあ、もう疲れた」
折角私の紹介コーナーなのに、疲労感が凄い……。自由奔放な人たちに振り回されて、私の精神と体はボロボロよ……。俺の体はボロボロだー!
「私のことを自分で自己紹介しても面白みがないので、またもやゲストをお呼びしています! で、私は誰かは知らないので、早速お呼びしましょう! この方です! どうぞ!」
私の合図で舞台裏から出てきたのは――?
「どうも~、メーナ・ロウ・アラスダイでーす」
……………お母さん!?
「な、なんでここに……?」
「来ちゃった♡」
てへ、と可愛らしく笑うお母さん。
「てへじゃなーい! 誰!? お母さん呼んだの!」
「あ、わしじゃ」
「わしじゃ、じゃなーい!」
まるで先程の仕返しとばかりに、にやりと口の端を歪め笑うソアさん。
「あらあら、私が来たら嫌だった?」
私の様子を見て少し悲しそうに顔を伏せるお母さん。
「い、いや、別にそんなこと……」
急に悲しそうになったお母さんを見て、思わず私はタジタジになる。
「き、来てくれて嬉しいよ!」
「……そう? やっぱりそう思ってたのよ!」
急に元気になる。
「じゃあ、せっかくだし、紹介させてもらうわね! あぁ、実の娘の紹介をするなんてなんだか緊張するわぁ」
嬉しそうにポケットから紙を取り出す。
「えーっと、私の娘であるフェイウ・アラスダイはただいま十七歳! ピチピチの生娘よ! 私に似て銀髪で、美少女。……ただし、ファッショセンスには期待しないことね」
そ、それは言わなくていいと思うんだけど……。
「でね、こんな私の娘はとある男の子に恋をしています!」
「……ちょーーー!」
な、何をいきなり言おうとしてるのぉぉぉ!?
「その男の子の名前はネリア・ハラベスト! で、今日私はなんと! 二人の出会いのころの絵、あ、私が書いたものなんだけど、見せちゃうね」
舞台裏から大きな額縁を持ってくるお母さん。
「ほぉ、これがネリアとフェイウかの?」
「そう、確か四歳か五歳の頃の絵かな?」
ソアさんはしげしげと絵と私の顔を見比べる。
「しかし、よく描けておるのぉ。画家の才能があるの」
「そうかしら?」
私も観念しながら、初めて見る絵を見てみる。
「……うっま……」
想像以上の出来にびっくりした。
「これってネリアが私に投げ飛ばされて、骨折したとき?」
「そうよー。あの時のポーション代、高かったわねー」
「……恐ろしいのぉ」
私は苦笑いをしながら、初めて私達が出会った頃のことを思い出す。
~今から約十三年前~
「な、なに? だれ?」
私は目の前の黒髪の男の子に目を向ける。
「わたし? わたしはさいきょーむてきびしょーじょのフェイウちゃん!」
にっこり笑顔で男の子に詰め寄る。
「あなたは?」
目の前の黒髪の男の子は、ちらりと手を繋いでいるお父さんに目を向ける。
「ん? ああ、知らない人に名前を教えるなってこの前言ったからか? 別にいいぞ。ご近所のメーナさんのとこの娘さんなら」
最近引っ越してきたえっと……ぐらんさんだっけ?
「……ぼ、ぼくはネリア」
ぼそりとうつむきがちに自己紹介をするネリア。
「へぇー、よろしくっ! じゃっ、いっしょにあそびにいこうよ!」
「え、えぇ……?」
またちらりとお父さんを見る。
「良かったなネリ。初めてこっちで出来た友達じゃないか。うし、暗くなる前には帰ってこいよ。お嬢ちゃん、うちの弱虫を頼んだ」
「まかされた!」
私はエヘンと胸を張る。
「じゃあ俺は家に戻るからな。仕込みがまだ終わってないんだ」
そしてこの場には私とネリアだけが残された。
「……おとうさん……」
ネリアのお父さんが見えなくなった途端、ネリアの目には涙が浮かび始めた。
「ちょ、ちょっと! なかないの! おとこのこでしょ!」
私はぐわんぐわんとネリアを揺さぶる。
「ふぇ、ふぇいうちゃん……はいちゃうよ……」
「おとこならげろげろしても、なかなければおーけー!」
「そ、そんなばかな……」
そして私が手を離した後、ネリアは青い顔で草むらによろよろと向かい、げろげろしていた。
これが私とネリアのファーストコンタクト。まあ、初っ端嘔吐という、かなり最悪な出会いだったなぁ……。
「フェイウ? もうこのコーナー、終わりの時間が近いわよ?」
ハッと回想から帰ってくると、もう私のコーナーの時間は終わりに近づいていた。
「えぇぇ!? まだほぼ何も紹介してないのに!」
「まあ、時間は時間じゃ。残念じゃったな。ま、知りたい人は一話から読み返してみるのじゃ」
「それ、絶対読み返す人いないですよ……」
無念……。
「つ、次はナナカちゃんの紹介です!」
悲しみを抑え、次のコーナに行こう……。
「はいどーも! みなさんこんにちはー! みんなのアイドルナナカですっ!」
きらりーん! と輝くような笑顔で登場ナナカちゃん。
「なんかアイドルデビューしてから、ますます磨きがかかったの」
「へっへーん! ナナカちゃんの可愛さが更にパワーアップですよ!」
私たちに向けてピースサイン。
「さて、今回は、ナナカちゃんの紹介だけでなく、お姉さん方にも登場してもらおうと思います!」
「はい! でも、イチカお姉ちゃんが、もう少し待ってほしいそうです」
「了解! では、先にナナカちゃんの紹介からかな」
私は台本に目を落とす。
「彼女の名前はナナカ。ソアさんに創られた、『異世界の歩き方』という本の妖精です。名前からわかる通り、異世界を渡り歩く能力を持っています。ナナカちゃんは、ネリアのと契約していて、ネリアの大事な仲間です。最近は、歌手デビューしたんだよね?」
「そうですフェイウさん! ナンバーズ習得のためですけどね」
「そうそれ! 私、ナンバーズってこの前話してたけど、なんなの?」
ナンバーズ、とても重要みたいだし、是非とも知っておきたい!
「ふむ、それならわしが説明しよう」
すっと横からまたソアさんが出てきた。
「……出番多すぎません?」
「なに、作者がわしのことを好きなんじゃろう。人気者はつらいの。で、ナンバーズの説明じゃな。ナンバーズというのは、ずばり、シスターズ専用にわしが考案した魔法なんじゃ。で、ここが肝心なのじゃが、ナンバーズはズバリ、シスターズにしか使えん。理由としては、魔力消費の大きさじゃ。ま、お主なら使えるかもしれんがの」
「私ですか?」
「そうじゃフェイウよ。お主も一応シスターズの一員となったんじゃからな」
そう、この私フェイウは、ひょんなことからシスターズに参加しているのだ。あ、私は別に本の妖精じゃないよ?
「そうなんですか!? ってことは、ぐへへ、私にもついに妹が……」
ナナカちゃんがめちゃくちゃ嬉しそうな顔してる! というより、危ない顔してる!
「姉としての威厳を見せるときがついに……」
ナナカちゃんもお姉さんでありたいという欲があるのかな?
「あ、お姉ちゃんたちの準備が出来たみたいなので、お呼びしますね!」
ナナカちゃんが大きな声で、お姉さん方を呼ぶ。
「イチカお姉ちゃんー! ニホ姉! ミツカお姉さま! シーナ姉さま!」
「うむ、遅くなったな。フェイウー! ナナカー! 来たぞー!」
「……どうもなの」
「はーい! お呼ばれしました、ミツカですっ」
「やあ、皆様はじめまして」
各々個性を見せつけながら登場。
「あら~、あなたがフェイウちゃんね? 初めまして、私はミツカよ」
一人だけ物々しい軍服……と思っていたら、一転、もの凄くたおやか!
「は、初めましてミツカさん。私、この度シスターズに入らせていただきましたフェイウです」
「もー、私はお姉ちゃん、と気軽に呼んでいいのよ? それにしても、可愛いわ~」
むぎゅ。気がつくと私は、もの凄く柔らかい胸に顔を埋めていた。
「ふむー!?」
な、なんなのこの柔らか天国は! 幸せを感じる! 同時に、私の胸に対するコンプレックスがむくむくと膨れ上がる! なんて罪な胸なの……。
「ああぁ、私もやってほしいですー!」
ナナカちゃんの羨ましそうな声が聞こえる。
「あらあら、ナナカ、また後でね?」
「むぅ、私だって胸はあるのだぞ……」
イチカお姉ちゃんの声も聞こえるけど、まあ……聞こえなかったことにしておこう。
「で、まだ私は彼女とファーストコンタクトなのですが。どうも、私はシーナです。以後お見知りおきを」
「あ、どうも初めまして」
きっちりとした挨拶。そして、私と同じようなサラサラの銀髪。どこかシンパシーを感じるわ……。
「なるほど、非常に私と髪色が似ていますね。そして、是非とも私も他の姉方に習い、姉とお呼びください」
あ、やっぱりそう思う? そして、また姉と呼んでくれと来ましたか。ナナカちゃんみたいに、呼び方を変えたほうがいいかな?
「私もそれ思ったの。でも、フェー子のほうが鮮やか。まあ、シーちゃんもいい色の髪なの」
イチカお姉ちゃんを覗くと、唯一接点のあったニホ姉が、まじまじと私とシーナを見比べる。
「そんな、恥ずかしいですよニホお姉」
少し照れたように髪をささっと隠すシーナお姉さん。
「ふむふむ、やはりシスターズを招集すると目の保養になるの」
「あ、それ俺も思いました! めちゃくちゃいいっすね!」
「お主は何処かに行っとれ」
「酷いっ!?」
いつの間にかでれーっとした顔でいたマザイを何処かにフルパワーで投げ飛ばしたソアさん。飛んでけー。
「ふぅ、あの男もなかなか可哀想なやつじゃ」
「私もそう思います」
「さあ、残念ながらお時間が近づいてきました。では、最後のゲストをお呼びしましょう! リーヴァさん、出番ですよー!」
最後の締めくくり、きっちり頼みます!
「はい、皆様、お久しぶりでございます」
白いドレス調のワンピースの裾をひらりひらりと揺らしながら、まさに清純派、といった感じの褐色のお姉さまが登場する。そう、我らが良心、リーヴァさんである!
「初めましての方ははじめまして。私、ハイとシュヴァル・リーヴァでございます。ネリア・ハラベスト様の眷属にございます」
と、優美にお辞儀。はぅ、正統派すぎる……!
「お久しぶりですねリーヴァさん!」
私は久しぶりの再会に喜ぶ。
「ええ、ご無沙汰しております、フェイウ様」
笑顔で渡しに笑いかけてくれる。毎回思うのだけど、この私、フェイウちゃんがメインヒロインのはずなのに、リーヴァさんと話すとなんだか、劣等感を感じちゃうのよね。
「えー、リーヴァさんは、ネリアがここではない世界、キースラードで出会いました。Sランク魔獣である彼女が、ネリアと出会ったきっかけは、お酒です。彼女はこう見えて、お酒が大好きなのです」
「そのおかげで、私たちは仲間になったんですよね!」
ナナカちゃんが、ひょいっと顔を出した。
「ええ、この姿ではないときは、特にお酒の香りに敏感になって……」
少し恥ずかしそうにリーヴァさんははにかむ。うぅ、またヒロインとしての格の違いを見せつけられた気がするよぉ……。
「で、少しメタい話をすると、次からはネリアのお話に戻るじゃないですか、前回、かなーりべた褒めされて逃走という手段をとったリーヴァさん、お気持ちはどうですか?
少しだけ意地悪な質問を、と思ったのだが――
「とても嬉しかったです。何よりも、あれが本心だということが、何よりもです。私は、ご主人様の従者として、ふさわしいのかと常日頃から考えていました。ですが、本当に安心しました。それに……」
ここで、恥ずかしそうに顔を下に向ける。
「告白、に近いような言葉も頂きましたし」
「…………え?」
私はその言葉にフリーズする。
「ああ、言ってしまいました! お恥ずかしい!」
そしてバヒュンとその場から猛スピードで飛んで逃げてしまった。速すぎて、一瞬で姿が掻き消えた。
「……前回何があったんだろう」
バクっとしか把握していなかった己の愚かさを悔いた。
「……さて、全七回にわたってお送りしてきた振り返り、どうだったでしょうかー!」
まあ、振り返りという振り返りはしていないんだけどね!
「うむ、どちらかと言うと、キャラ紹介のほうが近い気がするのじゃが」
「ソア様、それは言わないお約束です」
わいわいと他の人達も集まってきた。
「えーっとですね、これで振り返りは終わりです。次からは、ネリアのターン!」
かなり長々とこの企画引きずったよね、ほんとに。ま、私、フェイウちゃんが司会というのもやぶさかじゃなかったし、良しとしようじゃないの!
「以上、フェイウがお送りしました―! それじゃあ、まったねー!」
0
あなたにおすすめの小説
辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた
平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。
それから幾千年。
現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。
そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。
ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。
だが彼自身はまだ知らない。
自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。
竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。
これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規
NagiKurou
ファンタジー
「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」
国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。
しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。
「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」
管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。
一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく!
一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる