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3,魔道士(水)
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「つ、ついた……はぁはぁ……」
ここは村の外れの俺のもう一人の師匠の家。そう、サイフォスさんが住む家だ。一見、廃屋に見えるかもしれないが、中には最新式の魔道装置やらなんやらが揃っている。
あ、もう一人の師匠の名はサイフォス・クリシュライド。彼女は十八歳でマジックアカデミアを首席で卒業した、いわゆる天才だ。なぜこんな特に何もない村に来たんだろうか? プロポーションはボンキュッボンって言えばわかるかな? そんなかんじ。で、彼女の髪と瞳は吸い込まれそうな黒。あとかなりの美人。
「ふー、やっと呼吸が整った」
じゃ、紹介はここで終わりにしよう。
俺はサイフォスさんの家の古びた木製の扉を開ける。
「す、すいません、遅れました……」
こっそりと覗き込むようにして中を見る。すると、机で怪しい紫色の湯気の立つお茶を飲みながら本を読む女性を見つけた。そう、彼女こそサイフォスさんである。
「あっ! やっと来た!」
サイフォスさんは読みかけの本をやや乱雑にテーブルに置き、カップをソーサーに乗っけた。
「もー、女の子を待たせちゃだめだよー」
ぷりぷりと可愛く怒るサイフォスさん。ぱっと見、あんまり怒っていなさそうだけど。
「ほんっとうにすいません! 師匠との打ち合いに夢中になっちゃって……」
っていうか、もうサイフォスさんは女の子って年じゃな……すいません、俺の配慮が足りませんでした。まだ二十二歳ですものね、はい。じゅーぶんに女の子です。
「もー、許す! 許すよ! 遅刻なんて気にしない!」
快諾! なんて器が広いんだ! 流石ですサイフォスさん!
「さてと、じゃあどうする? 一昨日の復習からにする? それとも新しいことをしてみる?」
怪しい試験管やらなんやらを片付け、もとい、強引にそこらにあった木箱にしまい(見なかったことにしよう)、俺の座れるスペースを作ってくれた。
「あー、まだ心配なんで、できれば復習からで……」
物覚えが遅いもので……
「ん、おっけ。じゃあその木刀をそこに置いて準備してね」
「はい!」
「よし、始められる?」
「もうバッチリです」
今日やるのは一昨日の復習。魔法陣無しで水を生成する+水の形状変化だ。
魔法陣ありはいわば、補助付きで魔法を発動させること。魔法陣無しが普通。ただし、大きな魔法や、高度な魔法、他には設置式魔法とかは地面に魔法陣を書いて発動する。
「魔力にイメージを送って。流れる水のイメージを」
サイフォスさんの指示通りに俺は魔力にイメージを送り込む。魔力に送り込むイメージが強ければ強いほど魔力の変換が速くなる。
「目に魔力が集まってるってこの前言ったよね? とりあえずは目から魔力を引き出すイメージよ」
目には魔力を溜めておく器官がある。まあ、全体的に魔力は体の中を循環してるけど、特に魔力が溜まりやすいのは目のあたり。
「むむむ……」
目を閉じ、体内の魔力の流れを確認。そして、目から魔力を手の方に持っていく。すると、少しずつだが、俺の周りに水が生成され浮いてきた。
「おっけー! あと少し生成できたら止めていいよ」
そう言われたので、あと少しだけ水を生成し、俺の中の魔力にイメージを送り込むのを止めた。
「じゃあ次は発展編。水を操ってみて」
「はい」
俺は生成した水に今度は魔力を通して動くイメージを送る。
「んむむむむ……」
「頑張って! 水を操るのは他の属性を操るよりも少し難しいけど、できるようになったら、確実に成長できてるから!」
「わかりました……あっ」
残念ながら、俺の魔力が尽きてしまった。そのため水は魔力という支えを失い、重力に逆らうことが出来ずに下へ落ち、容赦なく床を濡らした。
「す、すいません! 急いで拭くんで!」
慌てて立ち上がり、何か拭く物を探す。しかし、この部屋には拭けるようなものがない! まじで! 変な鉱石とか、本とか、植物はあるけど、布がない!
「あー、別に大丈夫だよー」
そう言うと、サイフォスさんは指を一振り。すると俺がこぼしてしまった水はあっというまに蒸発し、跡形もなくなってしまった。水を生成するのも難しいが、水を消すのはもっと難しい!
「はー、やっぱりすげぇな」
俺はその鮮やかな技に感心する。
サイフォスさんは世界でも数千人しかいないとされている『魔士』の魔道称号を持っているのだ。
「はーい、じゃ、今日の訓練はここまでね。あ、一応魔力補充のためのポーションでも飲んでおこうか」
ささっと俺たち一般庶民には手の出ない、高級アイテムを取り出すサイフォスさん。
「い、いや、高いんでいらないですよ」
安売りのポーションでも一万銅貨。高級ポーションにまでなると十万銅貨以上もするアイテムなのだ。だけど効き目は抜群。多分これは魔力回復ポーションだが、回復ポーションとなると、大きな傷も、一瞬で完治する凄いアイテム。中でも、エリクサーなんて、腕が再生するなんて噂も聞いたことがある。
「だいじょぶだいじょぶ、私が作ったやつだから。ほら、市場で安売りされてた薬草から作ったの」
「あのひと束三十銅貨の?」
それ、さっき食べたばかりです。
「そうそう。だから遠慮せずに飲んで!」
一万銅貨以上もするアイテムをまさか三十銅貨の薬草から作るとは……恐るべしサイフォスさん。きっと売りに出したら、ポーション市場は大混乱に陥るだろう。さすが、才女は違う。
「そ、それなら頂きます」
キュポッ! きつく締めてあった蓋を開けると、小気味いい音が響いた。
ゴキュゴキュ……
「…………にがまずっ!?」
さっき食べた薬草の比ではない苦さとエグみが襲ってくる。やべぇ! 端的に言ってしまえばクソまずい!
「み、水! なにか飲み物をぉぉぉぉぉ!?」
「あ、あら? まあ、味は改善の余地ありだけど、効き目は売っているポーションと変わりないから、その……ドンマイ!」
トポポポと慌ててビーカーに水を生成して注いでくれる。それを俺は貪るように飲む。
「うげー……あーでも、確かに、急速に魔力が回復するのは感じます」
薬草のように少しずつ元気になるのではなく、もっと急激に回復してくれる。やっぱりサイフォスさんって凄い! まあ、ポーションはマズいけど。
「でしょでしょ?」
サイフォスさんが嬉しそうに笑う。
「でも、ネリアくんの最大魔力量の上昇具合には泣けてくるね。今の時点だと、一般の人よりやや高いってぐらいだね。でもまあ、なんとかなるよ!」
また悲しい慰めを頂いてしまった。本日二度目である。なんか悲しい。
「これでも頑張っているんですけどねー」
俺はポーションの空き瓶を咥えながらため息をつく。
少しでも早く水魔法の基本をマスターするために、村の図書館に通い、魔法の勉強をしてはいるのだが、何分小さな村なので魔道関連の本が極端に少ない。多いのは農作物関連の本。しかも、「魔法! 収穫量が三倍に!?」「水を変えるだけで起こる魔法、病気に強くなる!」「麦の魔力」「魔法の農作、百二日の奇跡」とか、紛らわしい本がとにかく多い! 魔法大好きか!
「まあ、気長に頑張っていこう? あ、そうだ!」
キュピーンとサイフォスさんの目が光る。どうやらサイフォスさんが何か閃いたようだ。
「そういえば、今度の収穫祭のときに私の師匠が来るの。で、そこでなんだけど会ってみない? 師匠と」
「えっ!? い、いいんですか?」
この前聞いた話によると、とてもすごい人物。何よりも『天幻』の魔道称号を持つぐらいなのだから。
天幻の魔道称号を持つ魔導師は、現在、たったの三人しかいない。ここまで来るともうおとぎ話の領域だ。ちなみに魔導師の称号としては上から『天幻』、『夢双』、『魔士』、『魔導師』、『見習い魔導師』だ。こう考えるといかに天幻が凄いのかがよくわかる。天才と歌われたサイフォスさんもいずれかは天幻の名を冠するに違いない。
「もちろん! 私の愛弟子であるネリアくんを紹介しないわけにはいかないでしょ!」
そう言って俺に笑いかけてくれた。凄く嬉しいぃぃぃぃぃぃぃ!
「ありがとうございます! じゃあ次は収穫祭で。さよなら!」
そう言って俺はサイフォスさんの家を後にした。
「よっしゃ! サインしてもらお!」
こんな月並みな感じで申し訳ないが、やっぱりサインは欲しい。だって天幻の魔道士だぜ? 一生お目にかかれないかもしれないぐらいすごい人なんだぜ! そりゃサインは貰うわ。
「あ、帰りに色紙買ってかーえろーっと」
ここは村の外れの俺のもう一人の師匠の家。そう、サイフォスさんが住む家だ。一見、廃屋に見えるかもしれないが、中には最新式の魔道装置やらなんやらが揃っている。
あ、もう一人の師匠の名はサイフォス・クリシュライド。彼女は十八歳でマジックアカデミアを首席で卒業した、いわゆる天才だ。なぜこんな特に何もない村に来たんだろうか? プロポーションはボンキュッボンって言えばわかるかな? そんなかんじ。で、彼女の髪と瞳は吸い込まれそうな黒。あとかなりの美人。
「ふー、やっと呼吸が整った」
じゃ、紹介はここで終わりにしよう。
俺はサイフォスさんの家の古びた木製の扉を開ける。
「す、すいません、遅れました……」
こっそりと覗き込むようにして中を見る。すると、机で怪しい紫色の湯気の立つお茶を飲みながら本を読む女性を見つけた。そう、彼女こそサイフォスさんである。
「あっ! やっと来た!」
サイフォスさんは読みかけの本をやや乱雑にテーブルに置き、カップをソーサーに乗っけた。
「もー、女の子を待たせちゃだめだよー」
ぷりぷりと可愛く怒るサイフォスさん。ぱっと見、あんまり怒っていなさそうだけど。
「ほんっとうにすいません! 師匠との打ち合いに夢中になっちゃって……」
っていうか、もうサイフォスさんは女の子って年じゃな……すいません、俺の配慮が足りませんでした。まだ二十二歳ですものね、はい。じゅーぶんに女の子です。
「もー、許す! 許すよ! 遅刻なんて気にしない!」
快諾! なんて器が広いんだ! 流石ですサイフォスさん!
「さてと、じゃあどうする? 一昨日の復習からにする? それとも新しいことをしてみる?」
怪しい試験管やらなんやらを片付け、もとい、強引にそこらにあった木箱にしまい(見なかったことにしよう)、俺の座れるスペースを作ってくれた。
「あー、まだ心配なんで、できれば復習からで……」
物覚えが遅いもので……
「ん、おっけ。じゃあその木刀をそこに置いて準備してね」
「はい!」
「よし、始められる?」
「もうバッチリです」
今日やるのは一昨日の復習。魔法陣無しで水を生成する+水の形状変化だ。
魔法陣ありはいわば、補助付きで魔法を発動させること。魔法陣無しが普通。ただし、大きな魔法や、高度な魔法、他には設置式魔法とかは地面に魔法陣を書いて発動する。
「魔力にイメージを送って。流れる水のイメージを」
サイフォスさんの指示通りに俺は魔力にイメージを送り込む。魔力に送り込むイメージが強ければ強いほど魔力の変換が速くなる。
「目に魔力が集まってるってこの前言ったよね? とりあえずは目から魔力を引き出すイメージよ」
目には魔力を溜めておく器官がある。まあ、全体的に魔力は体の中を循環してるけど、特に魔力が溜まりやすいのは目のあたり。
「むむむ……」
目を閉じ、体内の魔力の流れを確認。そして、目から魔力を手の方に持っていく。すると、少しずつだが、俺の周りに水が生成され浮いてきた。
「おっけー! あと少し生成できたら止めていいよ」
そう言われたので、あと少しだけ水を生成し、俺の中の魔力にイメージを送り込むのを止めた。
「じゃあ次は発展編。水を操ってみて」
「はい」
俺は生成した水に今度は魔力を通して動くイメージを送る。
「んむむむむ……」
「頑張って! 水を操るのは他の属性を操るよりも少し難しいけど、できるようになったら、確実に成長できてるから!」
「わかりました……あっ」
残念ながら、俺の魔力が尽きてしまった。そのため水は魔力という支えを失い、重力に逆らうことが出来ずに下へ落ち、容赦なく床を濡らした。
「す、すいません! 急いで拭くんで!」
慌てて立ち上がり、何か拭く物を探す。しかし、この部屋には拭けるようなものがない! まじで! 変な鉱石とか、本とか、植物はあるけど、布がない!
「あー、別に大丈夫だよー」
そう言うと、サイフォスさんは指を一振り。すると俺がこぼしてしまった水はあっというまに蒸発し、跡形もなくなってしまった。水を生成するのも難しいが、水を消すのはもっと難しい!
「はー、やっぱりすげぇな」
俺はその鮮やかな技に感心する。
サイフォスさんは世界でも数千人しかいないとされている『魔士』の魔道称号を持っているのだ。
「はーい、じゃ、今日の訓練はここまでね。あ、一応魔力補充のためのポーションでも飲んでおこうか」
ささっと俺たち一般庶民には手の出ない、高級アイテムを取り出すサイフォスさん。
「い、いや、高いんでいらないですよ」
安売りのポーションでも一万銅貨。高級ポーションにまでなると十万銅貨以上もするアイテムなのだ。だけど効き目は抜群。多分これは魔力回復ポーションだが、回復ポーションとなると、大きな傷も、一瞬で完治する凄いアイテム。中でも、エリクサーなんて、腕が再生するなんて噂も聞いたことがある。
「だいじょぶだいじょぶ、私が作ったやつだから。ほら、市場で安売りされてた薬草から作ったの」
「あのひと束三十銅貨の?」
それ、さっき食べたばかりです。
「そうそう。だから遠慮せずに飲んで!」
一万銅貨以上もするアイテムをまさか三十銅貨の薬草から作るとは……恐るべしサイフォスさん。きっと売りに出したら、ポーション市場は大混乱に陥るだろう。さすが、才女は違う。
「そ、それなら頂きます」
キュポッ! きつく締めてあった蓋を開けると、小気味いい音が響いた。
ゴキュゴキュ……
「…………にがまずっ!?」
さっき食べた薬草の比ではない苦さとエグみが襲ってくる。やべぇ! 端的に言ってしまえばクソまずい!
「み、水! なにか飲み物をぉぉぉぉぉ!?」
「あ、あら? まあ、味は改善の余地ありだけど、効き目は売っているポーションと変わりないから、その……ドンマイ!」
トポポポと慌ててビーカーに水を生成して注いでくれる。それを俺は貪るように飲む。
「うげー……あーでも、確かに、急速に魔力が回復するのは感じます」
薬草のように少しずつ元気になるのではなく、もっと急激に回復してくれる。やっぱりサイフォスさんって凄い! まあ、ポーションはマズいけど。
「でしょでしょ?」
サイフォスさんが嬉しそうに笑う。
「でも、ネリアくんの最大魔力量の上昇具合には泣けてくるね。今の時点だと、一般の人よりやや高いってぐらいだね。でもまあ、なんとかなるよ!」
また悲しい慰めを頂いてしまった。本日二度目である。なんか悲しい。
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俺はポーションの空き瓶を咥えながらため息をつく。
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「まあ、気長に頑張っていこう? あ、そうだ!」
キュピーンとサイフォスさんの目が光る。どうやらサイフォスさんが何か閃いたようだ。
「そういえば、今度の収穫祭のときに私の師匠が来るの。で、そこでなんだけど会ってみない? 師匠と」
「えっ!? い、いいんですか?」
この前聞いた話によると、とてもすごい人物。何よりも『天幻』の魔道称号を持つぐらいなのだから。
天幻の魔道称号を持つ魔導師は、現在、たったの三人しかいない。ここまで来るともうおとぎ話の領域だ。ちなみに魔導師の称号としては上から『天幻』、『夢双』、『魔士』、『魔導師』、『見習い魔導師』だ。こう考えるといかに天幻が凄いのかがよくわかる。天才と歌われたサイフォスさんもいずれかは天幻の名を冠するに違いない。
「もちろん! 私の愛弟子であるネリアくんを紹介しないわけにはいかないでしょ!」
そう言って俺に笑いかけてくれた。凄く嬉しいぃぃぃぃぃぃぃ!
「ありがとうございます! じゃあ次は収穫祭で。さよなら!」
そう言って俺はサイフォスさんの家を後にした。
「よっしゃ! サインしてもらお!」
こんな月並みな感じで申し訳ないが、やっぱりサインは欲しい。だって天幻の魔道士だぜ? 一生お目にかかれないかもしれないぐらいすごい人なんだぜ! そりゃサインは貰うわ。
「あ、帰りに色紙買ってかーえろーっと」
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