中途半端な俺が異世界で全部覚えました

黒田さん信者

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191,滅せよ魔を

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 梨沙の体を炎が舐める。しかし、梨沙は熱さに顔をしかめるわけでもなく、炎に怯えるわけでもなく、ただ目をつぶって平然と受け入れた。そして、炎は勢いを増していく。火具土の出す炎よりも強く、優しい炎だ。やがて炎は、光へと変わっていった。

「……神、懸り?」
 梨沙は今、はっきりとそう言った。
「……まさか巫女の家系だっタとは……面倒だ!」
 野良神は最高速度で、弾かれたようなスピードで、未だに光の消えない梨沙ももとへ突進した!
「……無駄よ」
 しかし、光の中から発せられる神々しさを含んだ梨沙の声でブレーキをかける。
「…………なんダこの奇妙なものハ?」
 野良神は少し戸惑ったような声をあげる。
「……私は天照坐皇大御神……いいえ、天照坐皇大御神の力を一時的に借り、同化した人間よ」
 そして光が弱まり、梨沙の姿が出てくる――!

「……神の裁きを。審判の時よ!」
 梨沙は赤と白の和服を幾重にも着ており、頭には……なんだ? 冠? かんざし? のようなものを乗っけている。それに、後ろにはふわふわと浮かぶ鏡が数枚。
「……凄い」
 俺は梨沙から発せられる神気に魅せられ、動けないでいた。それほどまでに澄んだ神気なのだ。人が発することのできるものでない神気。それを、堂々と放出する梨沙。
「……くくク……はーッはっは! 面白い! 面白イぞ人間よ!」
 野良神は本当に楽しそうに笑う。
「ネリアくん。これがクロスユニゾンの行きつく先だよ。『神懸かり』は、神様と人の融合。過去に何度か行われたこともあったみたいだけど、多分人意思で行われたのは初めて何じゃないかな?」
「ああ……すげぇよ梨沙」
 やっぱり梨沙は凄い。改めてそう実感させられた。
「余裕をかましていらレるのも今のうちダ! そんなの、肉体が持つわけナい!」
「そうね。だから、手短に終わらせないと!」
 梨沙が腕を上げると、後ろの鏡の半分が結界のもとへ。残りの半分が野良神のもとへ飛んでいった。
「日像鏡(ひがたのかがみ)よ!」
 鏡はくるくると野良神を挑発するかのように、奈良神を中心に周りだした。
「くっ、うっとオしい!」
 所詮は鏡、そう思ったのか野良神は鏡の中心に向けて拳を繰り出し、砕ける感触に笑う――
「……なに? 砕けナい、だと……?」
 そう、鏡は以前健在。なんてことないかのように、そこに浮いている。
「このっ! こノっ!」
 慌てて拳による連撃を繰り出すも無傷。
「どうなっている……?」
 困惑した野良神は、一旦鏡が形成する円から出ようとする。しかし、鏡はそれを許さない。ひたすらしつこく周り続ける。
「驚いた? これが日像鏡の力よ」
 梨沙が得意げに語りだす。
「壱! 吸収! 相手の攻撃をすべて吸い取る!」
 梨沙が語っていると、鏡が輝き出した。
「弐! 増幅! あなたが放ったエネルギーは、鏡と鏡の間を跳ね回り、増幅されるわ」
 梨沙の言うとおり、拳の形をした炎が複数枚の鏡と鏡の間を忙しそうに跳ね回っている。反射されては反射され、反射される。その繰り返し。その繰り返しの中で、どんどん形が大きくなっていく。
「もうあとはわかるわよね? 鏡本来の力、そう! 参! 反射っ!」
 突如鏡がエネルギーの反射をやめ、野良神の方向へ向く。
「なっ……!」
「喰らいなさいっ!」
 膨大なエネルギーが、目にも止まらぬスピードで反射された。
「ぐぅぅぅ! ぐァァァァァ!」
 野良神は、纏わりつく炎を必死に振り払いながら、地面に転がり続ける。
「くぅぅゥ……! ここで……ここデ終わるわけにはいかない……!」
 なんとか鎮火に成功した野良神は、所々を炭化、ちぎらせながら多くの仲間を呼ぶ。
「もうやけくそダ! ウぉぉぉ!」
 野良神は仲間を掴み……喰った! 
「魂喰いか! そうはさせない!」
「ウゥぅ……」
 しかし、梨沙の前に数体の低級野良神が群がる。
「邪魔ねっこのっ!」
 鏡を駆使しながら野良神を跳ね除けるも、その間にも野良神の捕食は止まらない。
「…………満たされた。……満たされたぞぉぉぉぉ!」
 百はいたはずの野良神をあらかた食い尽くした瀕死だったはずの野良神が吠えた。
「先よりも強くなってるし……ッ!」
 突如苦しそうに胸を抑えた梨沙。かっ! と喀血もした。
「り、梨沙……」
「大丈夫! こうなったら切り札も使うから!」
 むりやり俺に笑ってみせる梨沙。くっ……何か……何か俺にできることはないのか!?
 魔晶石をずっと握りしめていたので、魔力は回復した。となれば、なにか俺にもできるのでは――
「…………そうだ」 
 俺はふと思い出した。とあるものの存在と、とある知識を。
「……リーヴァ、こんな苦しい状態で頼んで済まないが、俺に力を貸してくれ」
 梨沙の戦いをかたずを飲んで見守っていたリーヴァに俺はお願いをする。かなり鬼畜なお願いなのは、承知の上だ。このあといくらでも罵倒などは受け付けよう。でも、梨沙を助けることができるのは、この手しかない。
「……わかり、ました。ご、ご主人様のためとあらば、喜んで……!」
 ぎゅぅっと力強く手を握り返された。
「ありがとう。リーヴァ、お前は最高の従者だぜ!」
 俺は腰にくくりつけておいた灰を取り出す。
「そ、それは?」
「この前の『灰』さ。よく考えてみたんだ。どうして純粋な灰でなければ行けないのかってな。それは、『聖灰』を作り出すためだったんだ」
 聖灰。それは、読んで字のごとく、聖なる灰。本当は聖人や、神聖なるものを焼いたら出る灰だが、純粋に薪のみから取れた灰も、劣るが聖灰だ。
「聖灰は、魔を退ける。これで梨沙を援護をするぞ」
 しかし、梨沙はもう限界だ。間に合うか――?

「遅くなり申した! 助太刀致す!」

 突如、高らかに声が鳴り響いた。
「あっ! 来てくれた! もう、遅いですよ!」
 梨沙がほっとため息を突いた。
「申し訳ない。我ら稲荷の集、今から全力で梨沙様を援護いたす!」
 ヒュンヒュン! と数十体の狐が飛んできて、梨沙のもとへ。
「い、いいタイミングだぜ!」
 野良神の足元で飛び回り、錯乱する。
「狐火!」
 ときおり火を吐き、着実に野良神にダメージを与えている。しかし、ヤツが手を振るたび、毎回数匹ずつふっとばされていく。全滅するのも時間の問題だ。
 だが! この稼いでくれた時間は無駄にしない!
「今から俺の聖灰とリーヴァの持っている聖灰で、『破魔矢』と『破魔弓』を作り出す!」
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