中途半端な俺が異世界で全部覚えました

黒田さん信者

文字の大きさ
205 / 245

192,破魔矢

しおりを挟む
 

 破魔弓と破魔矢とは、古来から伝わる魔を退ける弓である。この世界では、お正月などに売られていることが多い、本当は武器ではない縁起物。矢の先端の鏃は尖っていなく、殺傷能力が高いとはお世辞にも言えない。しかし、それでいいのである。射つのは、邪な心や、魔、悪などの邪気だからだ。つまり、悪しきものに効果があるとでも思っていてくれればいい。
「聖灰を俺の魔力で固めて、水と炎の属性を付与する。それを破魔弓と、破魔矢一本に加工する」
 魔技の応用だ。そこにないものを、本来は魔力で形成する。だからこそ、他のものでも応用は可能だ。
「先に破魔矢を作る。時間がないから、直接行こう」
 俺は慎重に手に灰を乗っける。そして、少しずつ矢をイメージしていく。形を先に作って、その上から術式の重ねがけと同じ要領で作る。これが一番早いだろう。
「申し訳ないですご主人様……細かい作業は苦手でして……」
 苦しそうな表情で、申し訳なさそうにうなだれるリーヴァ。
「大丈夫だ。出番はこのあとだ。少しでいいから、体を休めていてくれ」
「はい、そうさせていただきます……」
 とまた苦しそうに咳き込んだ。
「よし、そろそろいいか?」
 なんとか形になってきた。これで消費した灰は俺が持っていた灰の半分ほど。残るはリーヴァの持っていた灰と、半分になった灰だけ。足りるか?
「次は弓だ……」
 破魔矢を射つための、重要なアイテム。破魔矢のみでは、力が足りない。性質が違うので、弦と本体を分けて作る。先に本体。魔力で灰を弓の形にかたどる。その間に、今もなお続く戦闘に目を向ける。
「ぐぅぅぅらぁっ!」
「くぅ……!」
 野良神と戦っている狐は、どんどん減っている。もう二十体を切りそうだ。梨沙は何かを溜めているらしく、結界の修復に出した鏡意外はすべて集めて何かを唱えている。
「間に合わないか……!?」
 ええい仕方ない! やるしかない!
「性質を付与しながらやらねば……!」
 形作ることと同時並行で、性質も一緒に付与する。難易度がぐっと上がるが、その分速い。
「……性質、しなやか、硬い、曲がる……くそっ!」
 性質を全部言っていってはキリがないので、必要最低限の性質を付け加える。
「よし! 次は弦だ!」
 なんとか本体は形になった。急いで弦を……!
「性質、しなやか、弾力がある、押し出す!」
 弦は大雑把に作った。あとは……
「……相反する属性の封じ込めか……」
 これが一番難しいことだ。俺が使う水魔法と、火具土。その両方をこの矢に込めなければならない。
「ふっ……!」
 矢を握り、水の力を帯びた魔力を注ぎ込む。ここまではそこまで難しくない。ここからが問題だ。
「……火具土」
 残り少ない魔力で火具土を呼び出し、火具土の炎を押し込める。しかし――
「ぐぐぐ……!」
 先に入れた水の魔力が反発して入らない!
「くそっ!」
 思わず悪態をついてしまった。
「ご主人様っ、手伝います。力技なら、得意、なので……」
 火具土を装着した手をリーヴァが握る。
「んんっ!」
「ぐぅぅ……! ……入った!」
 二人の力で荒れ狂う火具土の魔力を矢に封じ込めることに成功した!
「よし、あとは射るだけだ!」
「キュウン!?」
 俺が矢を弓につがえているとき、最後の狐がやられた。
「マズイ!」
 俺は梨沙のもとへ向かおうとする野良神に冷や汗を流す。
「ええい! もう仕方ねぇ!」
 慌てて弓を構える。マザ兄に教えてもらったことを思い出しながら、弓を引く。だが――
「か、かてぇっ!?」
 あまりにも弦が固く、悲鳴をあげた。
「性質の付与がうまくいかなかったか……!」
 引けないことは無い。ただ、非常に硬い。そのため、飛距離が伸びない。
「……リーヴァ、頼めるか?」
「い、行けます! いいえ、やります!」
 リーヴァが辛そうな呼吸を繰り返しながら、俺の後ろに立った。
「ふぅー」
 乱れた呼吸を整え、ぐっと力を入れ弓を引く。
「よし、いいぞ……」
 キリキリと破魔弓が悲鳴をあげながらしなる。
「狙いを定めて……」
 しかし、フルパワーで引いている破魔弓は力のコントロールが出来ずに先端がぶれ、狙いがうまく定まらない!
 野良神はもう梨沙の近くまで迫っている。
「頼むから少し止まってくれよ……!」
 俺は念じながら、限界ギリギリまで待つ。すると――


 ―――しゃぁねぇなぁ。ほれ、行け!――――

 頭に声が聞こえた。その声は、俺の声のようで、俺の声でない。誰――? 
 そのとき、フッと肩の力が抜けた。それに、ブレが収まった?
「ご主人様! 今ですっ……!」
「おうよ! 行っけぇぇぇぇ!」
 ただ感じたままに破魔矢から指を離した。そして破魔矢はまっすぐ野良神の脳天へ――
「うぎゃぁぁぁぁ!?」
 ズプリ! と破魔矢は頭に突き刺さり、そこから黒い邪悪な瘴気が漏れ出てきた。
「お、おのれぇぇぇ!」
「梨沙!」
「はいはい! まったくもう! おいしいところばっかり持っていっちゃって! でも、これでとどめ! 日矛鏡(ひぼこのかがみ)!」
 梨沙が唱えると、鏡の半分が集まり、一枚の橙色の枠の丸い鏡へと変化した。
「即ち石凝姥を以て冶工(たくみ)として、天香山(あめのかぐやま)の金(かね)を採りて、日矛を作らしむ! 又、真名鹿の皮を全剥ぎて、天羽鞴(あめのはぶき)に作る! 此を用て造り奉る神は、是即ち紀伊国に所坐す日前神なり――!」
 新しく変化した鏡から、赤銅色の熱線が放出され、野良神を焼いた!
「ぎゃぁぁぁ! ふ、ふざける、なぁ…………」
 最後の言葉を発し、野良神は灰へと変わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた

平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。 それから幾千年。 現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。 そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。 ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。 だが彼自身はまだ知らない。 自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。 竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。 これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

​『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規

NagiKurou
ファンタジー
​「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」 国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。 しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。 「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」 管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。 一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく! 一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...