中途半端な俺が異世界で全部覚えました

黒田さん信者

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17、旅立ち(今度こそ!)

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             二時間後……



「来たぜ異世界ー!」
 言い争っているサイフォスさんとフェイウから逃げ、再度ナナカにゲートを開いてもらい、異世界に逃げ……飛んできた。
「ここが異世界か……」
 見渡す限り木。木木木。
「ここはですね、精霊の森と呼ばれてまして、エルフが生息しているんですよ」
「へー、エルフが!」
 エルフ。俺達の世界では確か、超長命種で、数々の秘術を使える。剣技も、弓の腕も凄く、ヒューマンじゃ歯が立たない。ま、俺達の世界のおとぎ話のなかではね。
「しっかし、ホント見渡す限り木だな……」
 どっち方向に歩けばいいかわからん。
「ご主人、近くに村や街はありません。大体三百キロぐらい先に、エルフの集落があります」
「マジか……」
 なんてこった。これじゃあどこにも泊まれない。
「そもそもここの世界の通貨を持っていないので、宿泊は不可能ですよ?」
 ナナカが俺の甘い甘い考えを瞬間で砕く。
「稼ぐには魔獣を狩って換金素材を手に入れるか、アイテムの採取ですね」
「魔獣狩りはまだ絶対無理だし、採取はやったことないしな……こんなことなら、マザ兄に採取の仕方聞いておくんだった」
 狩人のスキル、採取。習得すれば、ひと目でその物の適切な採取の仕方、売値などがわかる、超便利スキル! ただ、採取スキル持ちのレクチャーを受ける必要があるため、習得に時間がかかるのだ。
「結局は野宿か……はぁ」
 泣く泣く野営装備を確かめた俺であった。





 少し準備をした後、本格的にエルフの集落に向けて歩き出した。
「あんまり俺達の世界と変わらないなー」
 草むら、花、木。俺の知っている森とあまり変わらない。
「そうですねー。文明のレベルとしては、あまり変わらないと思いますよ?」
 ナナカは俺の横を滑るようにスイーッと飛んでいる。時折解説も織り交ぜてくれるあたり、本の妖精だということを思い出させてくれる。
 この森、ほんとに静かだな。なんか、その、俺のいた世界と違くて、違和感を覚える。「あ、そういえば、魔獣って、俺達の世界よりも少ないの?」
「そうですねー、多分ですけど、こっちの世界のほうが少ないと思いますよ?」
 ナナカはそう言いながらあたりを見回す。
「でも、本当は魔獣がもっと多いはずなんですよ。魔獣だけでは無いです。小動物や、鳥、虫も」
 ……ああ! 道理でで静か過ぎると思ったこの森!
 さっきから感じ始めた違和感の理由が拭えた。
「ヴィーオさんがひたすらプレッシャーを出し続けてくれているおかげですね」
 俺の腰元に挿しているヴィーオを見て笑みを浮かべるナナカ。
「俺がいなかったら、ここから一キロ先のメーロウの群れに襲われてるぜ」
 ヴィーオがちろちろと火の粉を出しながら、得意げに喋る。
「おう、サンキューな」
「へん! お前なんざ襲われちまえばいいけどよ、フェイウちゃんとの約束があるしな……」
 いやー、ありがたいぜ。魔獣の襲撃を心配しなくて済むからな。
「ちなみにですね、メーロウは魔獣ランクDです。実戦経験のないご主人には、少し厳しいかもしれませんね」
「魔獣ランクDかー」
 魔獣ランクとは、魔獣の強さを文字化させたものである。魔獣ランクFが最低であり、魔獣ランクSSが最高。駆け出し冒険者が互角に戦えるのがEであり、Dはかなり危ない。ま、師匠とか、サイフォスさんなら余裕だろうけど。
「おー! ご主人! 見てください! ダクラムの花ですよ!」
 ナナカがきれいな一輪の花を指差した。その花は、輝くような黄色で、見ていると元気をもらえるような、そんな気がする。
「この花、たしか売値で売れますよー」
「なぬ!」
 この世界の通貨獲得チャンス! せめて安宿でもいいので、部屋で寝たい!
 しかしそんな俺の願いも虚しく、ナナカは解説を重ねる。
「でも、採取手順がすごく面倒で、摘み取った瞬間から、わずか数秒で枯れてしまいますよ。オーラで花の周りを囲んで、中に精気を満たす必要があるんです」
「……諦めよう」
 難しすぎる。まじで。
 断念することにした。






 そして迎えた夜。これ以上進むのは危険だと判断したナナカの指示により、開けた原っぱに野営準備。
 火を炊いて、持ってきた干し肉と乾いたパンを温めて食べた。
 で、粗末な夜飯を食べた後、あまりにも暇なため、ナナカと髪型について議論していた。
「だからさ、俺思うんだよね。やっぱりツインテールよりロングかショートだよね。いやほんと」
「はぁ、ご主人ツインテールの素晴らしさわかんないんですかぁ? ほんっとにダメですね。いいですか? ツインテールの良いところはポニーテールのあのぴょこぴょこした動きが2つもついているんですよ! お得ですよお得!」
「ああん? 貴様、ツインテールは邪道だ邪道」
 白熱する議論。人が周りにいないことをいいことに、声はどんどん大きくなっていく。
「だからさ――」
 ピューイ。
「……んん?」
 遠くから何か聞こえた?
 明らかに俺達から出た音ではない。鳴き声? でも、ヴィーオの威嚇で、並大抵の生物は近づけないはずだが――
 ピューイ、ピューイ。
「……んんん?」
 し、しかもどんどん近づいてきてない? もうかなり近く。
「な、なあ、ナナカ」
「は、はい」
「この森ってさ……」
「はい……」
 ゴクリ。緊張でカラカラになった喉、唾を飲む。
「俺達が一瞬で殺される可能性のある魔獣ってどれぐらいいる?」
「……いっぱいいます。少なくとも、今の時点では、五十種類は超えているかと」
 ……ヤバイ。いきなりピンチ。
 鳴き声はどんどん近くなっていく。
「……ヴィーオ、頼む」
「……ッチ、めんどくせーな」
 ヴィーオにお願いし、強めの殺気を出してもらうことにした。
「ご主人、火を消してください」
 ナナカが緊張した声で言う。
「ああ、わかった」 
 火を消して、魔石灯のランプを用意する。
「よし、威嚇するからな」
 と言ったヴィーオが紅く光る。
「……ダメだな、威嚇してみたが全く怯んだ気配がない」
 ガチモンの猛獣だった。
「……逃げよう」
 広げた荷物をバックパックに急いでしまいはじめる。
「急げ急げ!」
 手当たり次第バックパックに詰めていく。
「……ん? なんだこりゃ」
 バックパックに荷物を詰めていると、さっきまではなかった、何やらふわふわした大きな毛玉がバックパックの横にあった。
「なあ、ナナカ」
 何者かの視線を感じる。
「な、何でしょうご主人」
 引きつった顔のナナカ。どうやら俺の言わんとしたことがわかっているらしい。
 俺はランタンを掴んでその毛玉を照らして見た。
「俺たち……死んだかもな」
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