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73,再開
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「よし、今日はわしの番じゃな」
頭の白い耳をぴこぴこさせながらソアが部屋に入ってきた。
「今日は基礎訓練をやるぞ!」
「基礎訓練?」
今日はせっかくの休息日なので、外にでも出かけようと思っていたのに。
「さあ、まずはわしと組手じゃ!」
可愛らしく構えるソア。しかし――
「丁重にお断りさせていただきます」
「何故じゃ!?」
私はソアを部屋からつまみだした。
「こんなこと前もあったような……じゃなくて!」
バン! とドアを乱暴に開けた。
「なんじゃそんなにだらけよって! それでも戦士か! 魔術師か!」
いや、自衛官なんですけど……。
「いいの、今日は休みなの! 休みは休み、仕事は仕事!」
そう。それが私の信条! 休めるときには休まないと!
「それに今日はこれからスイーツを食べに行く予定なの。ってことでまたあしt――」
「わしも行く」
「……へ?」
「わしも行くぞ。すいーつと聞いたら黙っておけん。今日は休みじゃ!」
いきなり正反対なことを言い出したソア。
「ってことは」
「わしも連れて行ってくれぃ」
ちゃっかりついていこうとしてるこの人!
「大丈夫じゃ! 尻尾も、耳も隠すし、お金もちゃんと自分で出す!」
……ならいいかな。
「じゃあ、今から十分後に出発するから、自分の部屋で準備してきて」
「準備はできておる。というより、このまま行くつもりじゃ」
「……え?」
今のソアの格好は、日本の着物風の服を着て、草履を履いている状態だ。
「ん? ダメか?」
「駄目です。その格好は良くも悪くも注目を浴びます」
なので、着替えてきてくれと言ったのだが――
「わし、この服しか持っていないんじゃ」
ということで、一旦私の家に寄っていくことにした。
「もしもしお母さん? あ、うん。久しぶり〜。
実はね、ちょっと用事があって、一旦家に戻ろうと思っているんだけどさ、私の昔の服って無い? え、ある?
あるなら用意しといてくれない? え? 何に使うかって? まあ、それは着いてからのお楽しみということで!
じゃあ、あと一時間後ぐらいにまた」
とりあえず家には連絡しておいた。
「ほう、そのすまほとやらから聞こえてきた声はもしかして」
「うん。お母さん。美沙だよ」
するとソアは嬉しそうに笑った。
「ほえー、車とは速いのう」
車に初めて乗ったらしいソア。
「そう? 今は渋滞しているから、あまりスピードは出てないよ?」
運悪く、結構大きな渋滞にはまってしまった私達。
「いや、魔力を使わないでこのスピードなら全然アリじゃ」
「じゃあ、テレポートでもするか?」
「テ、テレポート? 瞬間移動?」
「うむ。かなり魔力を消耗するから使いたく無かったんじゃが、リサとわし二人ぐらいなら全然大丈夫――」
「大丈夫じゃないよっ! 車を置き去りにはできないよっ!」
「た、ただいまー」
結局あの渋滞は家の近くまで続き、到着予定時刻を三十分オーバーしてしまった。
「あらあら、遅かったのね……ってソア!」
「おう、久しいのミサ」
パタパタと奥から掛けてきたお母さんは、嬉しそうに驚いた。
「もー、この世界に来るなら、前もって教えてよー」
お母さんはとても嬉しそうだ!
「しかしねぇ、二十年前からすっかり変わらないのね、ソア」
「いや、それはお前もじゃぞミサ。少しもシワが無いではないか」
なんておしゃべりが二十分弱。きっと、二人は大親友だったのだろう。親子二代で親友って、なんか不思議。
「いやー、でもあの紅姫と呼ばれたおぬしがこんなにまったりした日常を送っていたとはの」
「そ、その話題禁止!」
「レッドドラゴンを一撃で屠ったあの魔術の威力といったら! 大地がえぐれ、木々は吹き飛び、全てを薙ぎ払ったあの魔術のことは今でも伝説じゃ」
「もう! ばかばかぁ!」
……こわっ。
お母さんにはもう逆らわないようにしよう。そう誓った私であった。
頭の白い耳をぴこぴこさせながらソアが部屋に入ってきた。
「今日は基礎訓練をやるぞ!」
「基礎訓練?」
今日はせっかくの休息日なので、外にでも出かけようと思っていたのに。
「さあ、まずはわしと組手じゃ!」
可愛らしく構えるソア。しかし――
「丁重にお断りさせていただきます」
「何故じゃ!?」
私はソアを部屋からつまみだした。
「こんなこと前もあったような……じゃなくて!」
バン! とドアを乱暴に開けた。
「なんじゃそんなにだらけよって! それでも戦士か! 魔術師か!」
いや、自衛官なんですけど……。
「いいの、今日は休みなの! 休みは休み、仕事は仕事!」
そう。それが私の信条! 休めるときには休まないと!
「それに今日はこれからスイーツを食べに行く予定なの。ってことでまたあしt――」
「わしも行く」
「……へ?」
「わしも行くぞ。すいーつと聞いたら黙っておけん。今日は休みじゃ!」
いきなり正反対なことを言い出したソア。
「ってことは」
「わしも連れて行ってくれぃ」
ちゃっかりついていこうとしてるこの人!
「大丈夫じゃ! 尻尾も、耳も隠すし、お金もちゃんと自分で出す!」
……ならいいかな。
「じゃあ、今から十分後に出発するから、自分の部屋で準備してきて」
「準備はできておる。というより、このまま行くつもりじゃ」
「……え?」
今のソアの格好は、日本の着物風の服を着て、草履を履いている状態だ。
「ん? ダメか?」
「駄目です。その格好は良くも悪くも注目を浴びます」
なので、着替えてきてくれと言ったのだが――
「わし、この服しか持っていないんじゃ」
ということで、一旦私の家に寄っていくことにした。
「もしもしお母さん? あ、うん。久しぶり〜。
実はね、ちょっと用事があって、一旦家に戻ろうと思っているんだけどさ、私の昔の服って無い? え、ある?
あるなら用意しといてくれない? え? 何に使うかって? まあ、それは着いてからのお楽しみということで!
じゃあ、あと一時間後ぐらいにまた」
とりあえず家には連絡しておいた。
「ほう、そのすまほとやらから聞こえてきた声はもしかして」
「うん。お母さん。美沙だよ」
するとソアは嬉しそうに笑った。
「ほえー、車とは速いのう」
車に初めて乗ったらしいソア。
「そう? 今は渋滞しているから、あまりスピードは出てないよ?」
運悪く、結構大きな渋滞にはまってしまった私達。
「いや、魔力を使わないでこのスピードなら全然アリじゃ」
「じゃあ、テレポートでもするか?」
「テ、テレポート? 瞬間移動?」
「うむ。かなり魔力を消耗するから使いたく無かったんじゃが、リサとわし二人ぐらいなら全然大丈夫――」
「大丈夫じゃないよっ! 車を置き去りにはできないよっ!」
「た、ただいまー」
結局あの渋滞は家の近くまで続き、到着予定時刻を三十分オーバーしてしまった。
「あらあら、遅かったのね……ってソア!」
「おう、久しいのミサ」
パタパタと奥から掛けてきたお母さんは、嬉しそうに驚いた。
「もー、この世界に来るなら、前もって教えてよー」
お母さんはとても嬉しそうだ!
「しかしねぇ、二十年前からすっかり変わらないのね、ソア」
「いや、それはお前もじゃぞミサ。少しもシワが無いではないか」
なんておしゃべりが二十分弱。きっと、二人は大親友だったのだろう。親子二代で親友って、なんか不思議。
「いやー、でもあの紅姫と呼ばれたおぬしがこんなにまったりした日常を送っていたとはの」
「そ、その話題禁止!」
「レッドドラゴンを一撃で屠ったあの魔術の威力といったら! 大地がえぐれ、木々は吹き飛び、全てを薙ぎ払ったあの魔術のことは今でも伝説じゃ」
「もう! ばかばかぁ!」
……こわっ。
お母さんにはもう逆らわないようにしよう。そう誓った私であった。
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