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正月だから正月ネタで(前編)
しおりを挟む新年。ソシャゲとかソシャゲとかのイベントが熱いこの期間。インバワルズ(この世界)にも新年イベントは存在した――!
「うぁー」
暖炉のそばで、ぬくぬくと布団にくるまる俺。あぁ、至福だぜ……。
「リーヴァ、近くのその本とってくれー」
「はいー」
堕落という堕落を貪る俺たち。いつもピリピリしてるもんな。たまにはいいよな?
「おっ、あと少しで新年じゃないか?」
「そうかもですねー。ごしゅじーん、暖炉の火が弱くなってきてますよー」
「うぁ? めんどくさーい、まあ、あとででいいだろ」
よし、このままだらだらと新年とつにゅ……
「こらー! なにダラダラしてんの!」
バン! とひときわ大きな音を立て、うちのトラブルメイカー、フェイウがやってきた。
「おお、トラブルメイカー。こっちきて新年迎えよーぜ」
「誰がトラブルメイカーよ! 失礼しちゃうわ!」
フェイウがプリプリと怒る。結構ホントのことだと思うけどなぁ……。
「それよりソアさんが呼んでる。今年が終わる前に、サイフォスさんの家に来いってさ。あ、私も行かないといけないから、急いでね!」
「…………え? 今年が終わるまで?」
「うん。遅刻したらお仕置きだって。じゃーね」
フェイウはそう言い残して、出ていってしまった。
……ちらっと時計を見る。
「あ、あと十分しかないじゃんか!?」
ヤバい!
「行くぞナナカ! リーヴァ! あの人のお仕置きは、何されるかわからん!」
急いで着替え、家を飛び出す。
「キツイキツイ!」
ここからサイフォスさんの家までゆうに十五分はかかる。
「リ、リーヴァ、変身して飛べないか!?」
そうだ! Sランク魔獣のリーヴァなら、余裕じゃないか――
「私でございますか? いいですわ~、おまかせくださいまし!」
と、赤い顔で申し上げております。
「酔ってるね、うん」
飲酒飛行させたらどうなるかわからないので、この案は却下。
「どーするどーする?」
焦る! どーするよ!?
「あ! 私、良い物持ってます!」
ナナカがぽんと手を叩く。
「これで速く走れます! 見てください、これが――」
人間サイズのナナカがポケットから一本の瓶を取り出した。
「師走ドリンクです!」
「師走ドリンク!?」
なにそれ!
「これを飲めば、超スピードで走ることができるらしいです! お坊さんもびっくりです! 師走限定商品で、使用期限が今日の12時までなんです」
「全然言っていることがわからんが、起死回生の一手だということはわかった。これを飲めば間に合うんだな?」
「はい! ささ、時間がないのでぐいっと飲んでください!」
俺はナナカから師走ドリンクなるものを受け取り、きゅぽっと栓を開ける。
「……なあ」
「はい?」
「危ない香りがしてるんだが……」
鼻を刺すような刺激臭。目が痛い。
「大丈夫です! 死にませんから! それよりも、もう時間が無いです! 後五分!」
「五分!? ……ええい、ままよ!」
鼻を摘んで、一気にぐいっとあおるように飲む。
「……おえぇえぇえ……」
ゲ、ゲロまじぃ……………………うぷっ。
「で、でも、なんだか力が湧いてきたぞ!」
気がつくと俺は、タッタッタと軽快に走り出していた。
「うぉぉぉ!? 速いぞ!」
俺としては軽く走っているつもりなのだが、全速力で走っているよりも速いスピードで景色が流れてく!
「よし、間に合う! 間に合うぞー!」
「ぎりぎりじゃな、ネリアよ」
「っあ、っはっ、はっ、はーっ、はーっ、ま、間に合った……」
只今十一時五十九分なり。もうほんとにぎりぎりだった。
「あー、疲れた疲れた……ってあれ? ソアさん、その格好は?」
ソアさんが、いつもと違う着物を着ている。いつもより刺繍がちょこっと多くて、ちょこっと豪華だ。そして、いつものセミロングの髪を結っている。でも、なによりも――
「なんで、大人姿なんですか……?」
そう! 俺の好みにどストライクの大人バージョンなんだよ!
「くふっ、どうじゃこの姿での、この晴れ着は。お主程度なら、悩殺できそうじゃのう」
と、ちらりと胸元を開く。
「ぶっ! ほ、本当に悩殺されそうなんで、控えてください……」
洒落にならないぐらい色気があるからね? イヤほんとまじで。肌もつやつやだし、胸も大きいし、なによりも、妖艶なんだよ! わかるか!? この凄さ!
「くふふっ、ネリアにドキドキされるのも悪くないの。それよりもお主、なぜそんなに疲れておるのじゃ?」
「え? 走って来たからですよ?」
「……え? フェイウに持たせた跳躍符はどうした?」
「跳躍符?」
俺、そんなもの持ってないけど?
「あー! ごめん! 忘れてた!」
他の部屋からフェイウの叫び声が聞こえた。
「ほんっとにごめん! 渡しそびれてた! 使うと、ここまで一瞬でワープできたの! てへぺろ」
…………は?
「……ツイてなかったの、ネリア。まあ、あやつに使いを頼んだわしも悪かった」
がっくりと項垂れる俺の肩を、ポンポンと叩いてくれるソアさん。
「ご、ご主人様、大丈夫ですか?」
酔いが醒めたリーヴァが心配そうに俺を覗き込む。
「だ、大丈夫だ。……だが」
フェイウに一言言ってやらねばならん!
「フェイウ! そこを動くなよ! 今から行くから!」
「え? ちょっと待って!」
「待たん! 行くぞ!」
フェイウがいる別の部屋に乗り込む。
「開けるぞ!」
「ちょっと待ってーーー!」
ガチャ。扉を開ける――
「……あれ?」
そこには―――
「…………」
絶賛着替え中の、下着姿のフェイウがいた。
「ば、ば、ば」
顔を真っ赤にしたフェイウの周りがバチバチとスパークしていく。
ああ、これ、わかります、ぶっ飛ばされるやつですね、はい。
「ばかーっ!」
「ぐぎゃー!?」
新年一発目の電撃をくらった。
「もう! 恥ずかしかったんだからね!」
「ご、ごめんなさい…………」
俺、土下座中。
「だいたいデリカシーというものが足りてなくてだね……」
そのままそっくりお返ししたい言葉です。
「ま、まあまあ、もう年が明けたし、それぐらいで、ね?」
サイフォスさんがフェイウをなだめてくれる。ありがたい……。
「むー、サイフォスさんがそういうのなら……」
不完全燃焼って顔だが、渋々了承してくれたようだ。
「ネリア! 次からは気をつけること!」
「は、はいっ!」
お説教終わった!
……っぅか、コイツのミスが招いた結果なのに、俺、可愛そうじゃね?
「ささ、いまから出発の準備をしようかネリアくん!」
一件落着と、サイフォスさんが俺に服を押し付ける。
「着替えて来て! 急いで!」
「ん? この服は?」
「着物! 新年だからね!」
そう言うサイフォスさんも着物を着ている。フェイウも、いつの間にかリーヴァもナナカも着替えていた。で、その女性陣が着ていたのは、『振り袖』というらしい。
「日本では、お正月、つまり新年にこれを着るらしいですよー」
ナナカが補足説明してくれた。
「へぇー、そうなのか」
それなら着替えるとするかね。
「あ、そこの部屋使っていいよー」
若干動きづらそうなサイフォスさんが、近くの空き部屋を指差す。
「はーい」
俺は着物を持って、部屋を移動する。
「えーっと、これ、どう着るの?」
「足袋、長襦袢、肌着、帯に腰紐。あとは……」
……結局、着方がわからなかったので、ソアさんにやってもらうことになりました。
「ふむ、これでいいじゃろ」
さささーっと流れるような手つきで着物の着付けを行ってくれた。
「何年着物を着続けていると思う、わしの手にかかればぱぱぱのぱじゃ」
「そりゃ、もう何十年も……あ、いえ、なんでもないです」
危ない。まじで失言するとこだったわ……。
「さ、終わったぞ」
「どもっす!」
着物って、思っていたより動きやすいのね。締め付けとかも少ないし。
「終わったぞー、では、ネリアの準備も終わったから、改めて集まってもらった理由を説明するぞい」
ソアさんはみんなをリビング(ほとんど物で埋め尽くされている)に集めた。
「こんな新年に集まって貰って悪いの。あ、そういえば言っておらんかったな。新年あけましておめでとうじゃ」
「おめでとうございます」
「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
とみんな各々で新年の挨拶。
「よし、一通り終わったかえ? じゃあ、説明を始めるぞ。我々がこんな時間に集まっているのは他でもない。『新年くえすと』に挑戦するためじゃ!」
「……新年クエスト?」
なんだそれは?
「新年くえすととは、新年にしか現れないレアモンスター『モチ』を狩るのじゃ。それで、レアドロップアイテムである、『お年玉』と『福袋』を狙うのじゃ!」
「あ、文献によると、お年玉には、金貨が。福袋には超強力なアイテムや武器が入ってるみたい」
サイフォスさんが謎の本を取り出し、読み上げた。
「レアアイテム!?」
あ、フェイウが食いついた。
「うむ。一攫千金じゃ」
「それなら早く行こ! さあ、武器を取って!」
わぁーお。なんて現金なんだろうフェイウさんよ。
「あ、でも俺、ヴィーオ置いてきちまった」
まずったなぁ。今から取りに行くのめんどい。
「大丈夫じゃ。わしが瞬間で取ってこよう。とうっ!」
バヒュン。ソアさんの姿が一瞬で掻き消えた。と思ったら、すぐ出てきた。
「ほれ、ヴィーオじゃ。箪笥の上に置いておくではないぞ」
ソアさんは俺にヴィーオをわたしてくれた。
「速すぎでしょ!?」
五秒も経ってないんだが!
「くふっ、細かいことはよい。それよりも狩りじゃ。行くぞ。ナナカ、転移を頼む」
「りょーかいですっ! いざ、転移!」
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