中途半端な俺が異世界で全部覚えました

黒田さん信者

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152,背負う

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「あー、もうなんだか久しぶりだぜー」
 なんか知らんが半年ぐらい時間が合いたような……気のせいかな、うん、気のせい。
「私もなんかほんとに久しぶりに話す気がするんだけど」
 ナナカの歌が終わり、まだ衝撃が抜け切らない俺たち。
「最近訪ねて来なかったのは、こういう理由だったのか」
 納得。どんなに忙しくても、週三回のペースで俺のもとに来ていたナナカが急に来なくなったんだもの。そりゃ忙しいわな。
「おっと、もうこんな時間か」
 時計を見ると夜中の九時半。色々な事があった俺たちにとっては、もうお眠の時間なのだ。
「布団は敷いてくれてるから、もう寝れるねぇ……ふにゃぁ」
「ちょいちょい、まだ寝ちゃアカンで」
 明日のこととか話し合わないと。
「うえー? もう寝ようよー。眠いよー、私、つい数時間前には永遠の眠りにつくとこだったんだから」
「いやそれまじ冗談にならないから」
 明日でもいいか? 作戦会議。
「大体ね、ネリアくんは……少し…………固すぎ……………」
「……梨沙?」
 がくりと梨沙の頭が垂れた。
「ああー、本格的に寝ちまったか」
 ダメだ。また明日だな。
「俺も眠ぃ。ふぁーあ、寝るか」
 実は結構梨沙の治療で俺の血だ体液だを魔力化しているので、正直フラフラだ。
「おやすみ…………」



「…………んん……」
 …………今何時だ? まだ暗いけど。
 しょぼしょぼする目をこすり、MAギアで時刻を確認する。
「…………午前三時ちょいか」
 なぜこんな時間に起きたのか? 俺、寝付きはいいほうなんだけどなぁ。
 起きてしまったついでという事で、ふらつく体で水を飲みに行く。
「イチチ、筋肉痛かよ」
 もうすっかり日常茶飯事になってしまった筋肉痛に顔をしかめつつ、乾いた喉を水で潤す。この世界の水は美味しいが、少し鉄臭い。まるで血――いや、やめとこう。水を飲むたびに、血を連想してるとかサイコパスすぎる。
「うぁー、寝直すか」
 まだまだ寝足りない。もっと睡眠をよこせと、俺の脳と身体が叫んでいる。
 俺は布団をかぶり、寝直――
「ん、んん、あぁ、んっ、ああ!」
 …………梨沙?
 急に梨沙が苦しみだした!?
「おい梨沙! どうした!?」
 布団から飛び出、梨沙のもとへ行く。
「うぅ、あぁ、くっ……」
 どうやら悪夢を見ているようだ。彼女の頬からじわりと脂汗がにじみ出る。苦しそうにうめきながら、彼女は熱に浮かされたように、たわごとを言い始めた。
「怖い、怖かったよ……死にたくない、生きてたいよぉ……」
 すすり泣くように。或いは誰かに訴えかけるかのようにつぶやく梨沙。
 ……これは梨沙の本当の感情?
 俺に今日一度も見せなかった感情。死に対する恐怖、生への渇望。それをすべて笑顔の下に隠し、押さえ込んでいた。
 梨沙はいつも自分を偽っている。それは誰に対しても。自衛隊のみんなや、俺や、自分に。本当の梨沙が恐怖に震えていても、笑って押さえ込もうとする。何事もなかったかのように、忘却の彼方へ追いやろうとするように。布志名さんであるとき梨沙であるとき、いろいろな顔の下には、さらに深い深い梨沙がいる。
「……ひとりで抱え込んでないで、俺も頼ってくれよ……」
 苦しそうな梨沙を抱きしめる。ああ、こんなに軽かったんだ。
「全部は俺じゃ背負えない。でも、半分ぐらいなら背負えるからさ、頼ってくれよ」
「……うぅ…………」
 少しずつ梨沙の顔色が良くなり、強張っていた顔も穏やかになった。
「うし、これでいいか」
 俺は梨沙を下ろす。そして、布団を整える。
「おやすみ。今度こそいい夢を」
 俺は梨沙に聞こえていなかったとしても、自分の思いを伝えることが出来て満足だ。頼ってくれ。口にするのが難しいこの言葉を俺は梨沙に投げかけた。それは、自分に対してもいい喝が入った。頼られる、つまりは、自分が強くなければ、出来ないことだ。それを俺は初めて口にした。

 口にすれば叶う。

 そんな甘っちょろい、でも、力に変わる言葉を胸に俺はまた寝始めた。
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