中途半端な俺が異世界で全部覚えました

黒田さん信者

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バレンタイン! 〜二人の魔女編〜

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「サイフォスよ」
「はい? なんでしょうか?」
 私はポーションを煮詰める手を止め、振り返った。
「今日、ネリアのいる世界では『バレンタイン』というやつがあるらしいぞい」
「バレンタイン? ……ああ、この前ソア様が話していらっしゃった、男女間でのイベントですよね」
「そうじゃ」
 ソア様は胸元から、チョコレートの特集本を取り出す。
「折角じゃし、わしらも作ってみんか?」
「チョコレートをですか?」
 生憎、お菓子作りはあまり得意では無いのですが……。
「くふふっ、実はの、この前しょこらてぃえに弟子入りしてきたのじゃ」
 ソア様が薄い胸を張る。
「てんぱりんぐやら、色々学んできたぞ」
「……あー! この前、二週間ぐらい留守にしていたときですか?」
「そうじゃ。全てはこの日のため! じゃ!」
 わしの実力を見せてやる! とショコラティエみたいな服に着替える。
「……本気ですか?」
「もちろんじゃ! さあ、作るぞちょこれーと!」
 




「砂糖を三十g、あ、ちょこは後でてんぱりんぐするから、混ぜないで欲しいのじゃ」
 ソア様の的確な指示により、きっかり分量通りの材料が用意された。
「本当に学んできたんですね」
「当たり前じゃ。わしは全ての技能を身につけたいのじゃ」
 さらっと恐ろしいことを言うソア様。
「今から作るのは、ネリアにあげるようじゃ」
 カカオから作る本格的なチョコ。これは凄い!
「で、合間に作るのはこれじゃ!」
 ばさっ! ソア様が、昨日運んできたダンボール箱を開いた。
「……チョコレート業務用?」
「うむ! こっちはかけるようじゃ」
「かけるって一体……」
「くふふっ、それはの……」
 ごにょごにょ………
「!」
「おっと、そろそろ時間がギリギリじゃ。急いで支度してくるのじゃ」
「え、でも」
「別にいいんじゃぞ? やらなくても。ま、わしはやるがな」
「……やります」
 こうして私の黒歴史はまた一ページ増えていくのだった。


             ~数時間後~ 

「ちわーっす」
 ソア様が呼んだネリアくんが来た!
 ナナカちゃんにお願いして、ネリアくんに一時的に帰ってきてもらったの。
「ってあれ? 誰もいないのか……?」
 私たちは今、とある一室でスタンバイしています。
「ネリアー! すまんが、右の三番目の部屋に来てくれー!」
 ソア様がネリアくんを呼ぶ。ナイスです!
「ソアさん? どうしたんですか?」
 パタパタ。段々とネリアくんが近づいてくる。
「はぁぁ、やっぱりやるって言わなきゃ良かった……」
「くふっ、もう遅いぞい」
 心臓バクバク、胃はキリキリ。
「失礼します」
 コンコンとノックが聞こえる。
「ど、どうぞー!」
 やや上ずった声で答える私。
 ガチャ。扉が開く――
「急に呼び出してどうしたんですかってうわー!」
 ネリアくんが悲鳴をあげた! 作戦は成功よ!
 




「うわー!」
 俺は目の前の光景に思わず絶叫した!
「どどど、どうしたんですかこれは!」
 そう、俺が絶叫した理由。それは――
「「ハッピーバレンタイン!」」
 溶けたチョコレートの中で、裸で佇むサイフォスさんとソアさんがいたからだ。
「ハッピーバレンタインじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
 俺は叫んでから、目を隠す。紳士的配慮! これ大事!
「これ、なに目を隠しておる。もっと見てもいいんじゃぞ?」
 ソアさんがちゃぷとチョコレートの沼で移動する音が聞こえる。
「その前にアンタは色々隠せー!」
 これは健全な作品なの!
「っていうか、なにサイフォスさんまで参加してるんですか! いつもはツッコミ役でしょう!?」
「私ってそういう印象だったの!?」
 ヒドイ! とショックを受けるサイフォスさん。
「と、とにかく! 大事なところはしっかり隠れているから大丈夫! だから目を開けて?」
 …………それならまあ……
 俺は恐る恐る目を開ける。
「くふっ、一回やってみたかったのじゃ。『私達がちょこれーとだよっ!』」
「……ソースはなんですか?」
「漫画じゃ」
「悪影響しか受けてねぇぇぇぇ!」
 この前お土産先発隊として送った漫画が仇となった!
「嬉しいじゃろ?」
「い、いや、流石に貧相な体で興奮するほど俺は変態じゃな――すいません許してくださいお願いしますだからその武器しまってください」
 本音が漏れたー! 
「……貧相か。よし、なら――」
 ソアさんがいつものようにボンッ! と白煙をあげる。
「これでどうじゃ?」
「こ、これはっ!」
 ソアさんがナイスバディな大人モードになった!
「くふふ、わしは知っておるぞ。過去の話を読めば、お主の好みなどまるわかりじゃ」
 くっ…………悔しいが、めっちゃ興奮するぜー!
 豊満な果実に、滴るチョコレート。黒くて濃密な液体が、輝く玉鋼のような肢体を、磨き上げるかのように滑る。
「これは……エロい!」
 くふふ、と幾分かハスキーになった声で笑うソアさん。まじ俺好み。
「もー! 私も恥ずかしかったんだから、見て! ……いや、見るならやっぱり少しで……」
 サイフォスさんが、ソアさんに見とれていた俺を現実に引き戻す。
「ももも、もちろん! サイフォスさんもエロいです! 間違いない!」
 いつもはローブに包まれ、滅多に肌という肌を露出させないサイフォスさんが脱いだのだ。そりゃあもう破壊力抜群ですよ!
「さ、さすがにもう無理……」
 耳まで赤くなったサイフォスさんは、とぷん、とまたチョコレートの沼に沈む。
「サイフォスもまだ青いの」
 ソアさんは俺に向かってウインク!
「……なんかもうソアさんルートでもいいかな……?」
「惑わされないでネリアくん!?」




 で、少ししたのち、すっかり満足したソアさんは、一瞬でチョコレートを片付け、いつもの姿に戻った。
「これからちょこふぉんでゅじゃ。こんなに大量のちょこれいと、わしらだけでは処理できん」
「いやじゃあやらないでくださいよ」
 この人ほんとに自由人。
「よし、ネリア! わしが作ったちょこれいとをやろう」
 ごそごそと、着物の帯の部分を漁り、きれいなラッピングを施した箱を出す。
「これが本命ちょこじゃ! 味わって食えぃ!」
「ど、どうも……」
 あまりの迫力に気圧される俺。
「で、サイフォス。お主の分じゃが――」
「じ、自分で渡します!」
 着替えが終わったサイフォスさんが、違うラッピングの施された箱を持ってくる。
「はい! ハッピーバレンタイン!」
 俺がサイフォスさんに近づくと、ふわりと髪から甘い甘いチョコレートの香りが。
「さ、さっきのはその……忘れて、ね?」
 恥ずかしそうにもじもじするサイフォスさん。可愛い。
「ありがとうございます! 俺、大切に食わせてもらいますね!」
 この光景、マザ兄が見たら嫉妬するんだろうなぁ。
「じゃ、ちょこふぉんでゅじゃ!」
 一段落付いた、とソアさんは魔法でさっきのチョコレートを滝のように動かす。
「わしら美少女の体を伝ったちょこれーとじゃぞ? ふぉんでゅしなきゃ損じゃ!」
 …………確かに!
「お風呂は入ったから! 汚くないよ! ……多分!」
 これ、商品化したらバク売れじゃね? とチョコフォンデュしながら考えた俺であった。
 
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