最弱騎士だけど、最強の王女の騎士に選ばれました

黒田さん信者

文字の大きさ
12 / 29

12

しおりを挟む

「……は?」
 突然のことで、思わず間抜けな声が漏れてしまった。

「いやだから、私とルベルで、剣で打ち合いをしようとだな……」

「いやいや、それぐらいはわかるわ! そうじゃなくて、俺と、スカーレットで打ち合い⁉」

「そうだ。何か問題でもあるのか?」

「あるわー! 大アリだよ! 王女と打ち合いをする近衛がどこにいるんだよ!」

「……私と打ち合うのが嫌なのか?」
 急にしおらしくなって、しょんぼりとするスカーレット。

「え? い、いや、そういうことではなくて、えっと、これだけ身分が違う者同士が打ち合いするのはマズいというか……」

「そうか……なら命令だ! ルベル・ライヴァー! 修練の成果を、力を持って我に示せ!」
 そう言い、腰の剣を抜き、スカーレットはルベルに斬りかかる。

「ッ⁉」
 慌ててルベルは後転し、剣を避ける。

「危ねっ⁉」
 なにすんだよ! と王女に抗議しようとするが、スカーレットの構えを見て、黙って剣を抜いた。

「……しょうがねぇ、王女サマのご命令とあらば!」
 やるしか無い、そう感じたルベルは腰を低く落とし、剣の切っ先を上げる。

「いいぞルベル、なに、ほんの数分打ち合うだけだ。大丈夫だ、死なない程度には加減しておいてやる」

「……ご忠告どーも。でも、俺だってプライドっつうもんがありましてね。手加減されてボコされましたじゃ格好がつかないんですわ!」
 ルベルが仕掛ける。まずは様子見と、自分の態勢が崩れない、コンパクトな上段斬りを繰り出す。

「シッ!」
 しかしスカーレットは、それを剣の柄でいなし、蹴りを見舞っていた。

「ごっ⁉」
 腹をしこたま蹴りぬかれ、たまらず後退するルベル。

「どうした、私は剣だけしか使わないとは言っていないぞ?」

(……鬼強っよ……。普通蹴りでこんなダメージもらうか?)
 もちろん、ルベルも剣術に体術を組み込んでいるので、蹴りなどは予想していた。しかし、その予想を上回るほどスカーレットの技は速く、重いのだ。

「ゴホッゴホッ! んん、そーですよね」
 さすがクリムゾン・プリンセス、一筋縄ではいかないとルベルは冷や汗をかく。

「攻めないのか? なら、こちらから行かせてもらうぞ」
 フラッ……と王女が揺れたかと思うと、一瞬でルベルの目の前に現れる。

「な――」

(回避――間に合わない! 防御――無理! それなら――!)
 瞬時に判断し、ルベルは後退するのではなく、あえて前に踏み込む。

「はっ!」
 そして、今まさに振り上げようとしていた剣の鍔を手で押さえる。さらに、グッと肩でスカーレットを押し、バランスを崩させる。いくら強いとはいえ、王女は女性であるので、ルベルとの体重差は明確だ。

「もらった!」
 そのまま強引にスカーレットの剣を押さえたまま、自分の剣でスカーレットの首もとに剣を押し当てようと――

「甘い」
 ドゴォ! スカーレットの冷静な膝蹴りが、ルベルの腹を撃ち抜いた。

「ガッフ……!」
 猛烈に来る吐き気、衝撃に顔をしかめ、体をくの字に折り曲げる。

「カッ、カハッ……!」
 よろよろと、なんとか地面に膝を付き呼吸を整えようとする。

「ふむ、まだまだ。だが、まあ、その剣をよく使いこなせているな。期待しているぞ」
 そんな言葉が頭上から降り注ぎ、ルベルが顔を上げると――

「がっ⁉」
 急に空を飛んでいた。ルベルがスカーレットにアゴを蹴り上げられたと気づくまで、ルベルは――

(お、俺、こんな王女を本当に守れんのか……?)
 薄れゆく意識で、そんな事を考えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...