最弱騎士だけど、最強の王女の騎士に選ばれました

黒田さん信者

文字の大きさ
17 / 29

17

しおりを挟む






「…………ゴホン、おはようルベル」
 ルベルが支度を終えて部屋から出ると、昨日と同じような軍服を着たスカーレットが壁に寄りかかっていた。

「……何事もなかったかのように振る舞っているけど、さっき寝起きを襲来したばかりだよな?」

「……先のことは忘れろ。いや、忘れてくれ。……朝食にしないか?」
 やはり華麗なスルースキルを遺憾なく発揮し、ルベルを朝食に誘う。

「喜んでご一緒させてもらうぜ」
 人間腹が減っては戦が出来ぬと、ルベルが賛同し、二人は一緒に歩きだした。

「ってあれ? そっちは食堂じゃないんじゃないか?」
 ルベルは昨日知った城の間取りとは違うのではないかとスカーレットに訪ねた。

「ん? ああ、大丈夫だ。食堂はあっちだが、こっちであっているぞ」

「へ? どういうことだ?」
 そう言いながらも、スカーレットは振り返ることもなくどんどん人気のない、城の端のほうまで歩いていく。

「そろそろだ。あそこに見えるのが、我々の食堂だ」
 そう言ってスカーレットが指差したのは――

「……テラス?」
 あたり一面に広がる草花、中央には噴水。奥には立派な木と一面ガラス張りの小屋が一つ。

「そうだ。ここが我々の食堂だ」








「おはようございます、姫様、そしてルベル様。本日のメニューはフレンチトーストと採れたて野菜のサラダ、ハーブティーでございます」
 ラミベルがペコリと頭を下げ、椅子を一脚引く。

「さあ、ルベル様もどうぞー! 今日は腕を存分に振るったから美味しいよ!」
 マリベルがニコニコと元気よく椅子を引いてくれた。

「あ、ああ。美味しそうだな」
 予想していた食堂と違い、なんと言っていいのか半ばフリーズするルベル。

「ふふっ、困惑しているな?」

「え? ま、まあ」
 この国の時期女王候補ともあろう方がまさか外で食事をするとは……とルベルは困惑を隠しきれない。

「ところで、話は変わるが、他の王女たちがどこで、どのように食事をするか知っているか?」

「いや、知らないな」
 確かに、そういうことは考えたことがなかったとルベルは考える。

「まあ、もちろん王女ひとりひとり違うし、全員のことを把握しているわけではないが、けっこう面白いぞ」

「そうなのか?」
 
「ああ。例えばマリーゴールド姉さまはいつも子どもたちを招待して、仲良く食堂などで食べている。逆にアマリリス姉さまは常に自室で食べている。あとはヒナギク姉さまは自分の食事は自分で作るし、コスモスは彼女の父と一緒に食べる。そして私は――」
 ニッ、といたずらっぽく笑う。

「ここで、日陰者らしく私のメイドたちと食事をする。まあ、いるのは日向ではあるがな!」
 ワハハと豪快に笑う。

「それに、ここの空気は素晴らしいぞ。幸せな気分になる。あと、これだけ広いと暗殺者とかが来てもわかりやすいしな」

「最後物騒だな」
 暗殺者って……と、苦笑いをするルベル。

「いや、案外本気でわかりやすいんだ。城内だと、かなり分かりづらい。何度か危ない場面もあったな」

「経験談かよ⁉」

「ああ。ここでも何度か来たが、わかりやすかったぞ。丸見えだからな。弓を引くにも、遮蔽が少ないから目立つからな」

「は、はは……」
 もう笑うしかない、とルベルは引きつった笑いをこぼす。

「ルベル様ー! できましたよー!」
 わーい! とマリベルが皿を持って走ってきた。

「フレンチトーストです! 美味しいですよ!」

「うむ、私が保証しよう。絶品だ」
 ウキウキと鼻歌交じりにスカーレットも席につく。

「では、温かいうちにいただくとしよう」

「はーい! あ、姉さまとクラウおばさまは先にどうぞと言ってました!」

「そうか? すまないな。では……いただきます」
 パシッと礼儀正しく手を合わせるスカーレットに習い、ルベルも手を合わせる。

「いただきます」
 そして、フォークとナイフを手に取る。

「あむっ」
 スカーレットはというと、嬉しそうに頬張り、頬をほころばせている。

「うまい! 流石だマリベル!」

「おお、本当にうまい」
 ふんわりと仕上げられたフレンチトーストは上品で、繊細だ。甘さもかなり控えめで、食べやすい。

「ふふん、しっかり腕によりをかけましたから!」
 むふーっ、と嬉しそうに鼻息荒く答える。

「凄いな、城のシェフと比べても遜色ないレベルの品だぞこれ」
 かつて一度城の料理食べたことのあるルベルが感想を言う。

「良かったわねマリベル。口説かれたわよ」

「ええーっ、本当ですか? 嬉しい!」
 ピョンと飛び跳ね、全身で喜びを表現する。

「ずっ、ずるいぞ! 私はまだ口説かれてもいないのに!」 
 ガタッとスカーレットが席を立つ。

「姫様、お食事中ですよ。またクラウおばさまに怒られてしまいます、大丈夫です、ルベル様はスカーレット様にメロメロです」

「なに? 本当かラミベル! それならいいんだ」
 ふふんと急に上機嫌になってまたフレンチトーストを食す作業に戻った。

「ということですルベル様」

「どういうことだよ⁉」
 思わず突っ込んでしまうルベルであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...