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しおりを挟む「…………ゴホン、おはようルベル」
ルベルが支度を終えて部屋から出ると、昨日と同じような軍服を着たスカーレットが壁に寄りかかっていた。
「……何事もなかったかのように振る舞っているけど、さっき寝起きを襲来したばかりだよな?」
「……先のことは忘れろ。いや、忘れてくれ。……朝食にしないか?」
やはり華麗なスルースキルを遺憾なく発揮し、ルベルを朝食に誘う。
「喜んでご一緒させてもらうぜ」
人間腹が減っては戦が出来ぬと、ルベルが賛同し、二人は一緒に歩きだした。
「ってあれ? そっちは食堂じゃないんじゃないか?」
ルベルは昨日知った城の間取りとは違うのではないかとスカーレットに訪ねた。
「ん? ああ、大丈夫だ。食堂はあっちだが、こっちであっているぞ」
「へ? どういうことだ?」
そう言いながらも、スカーレットは振り返ることもなくどんどん人気のない、城の端のほうまで歩いていく。
「そろそろだ。あそこに見えるのが、我々の食堂だ」
そう言ってスカーレットが指差したのは――
「……テラス?」
あたり一面に広がる草花、中央には噴水。奥には立派な木と一面ガラス張りの小屋が一つ。
「そうだ。ここが我々の食堂だ」
「おはようございます、姫様、そしてルベル様。本日のメニューはフレンチトーストと採れたて野菜のサラダ、ハーブティーでございます」
ラミベルがペコリと頭を下げ、椅子を一脚引く。
「さあ、ルベル様もどうぞー! 今日は腕を存分に振るったから美味しいよ!」
マリベルがニコニコと元気よく椅子を引いてくれた。
「あ、ああ。美味しそうだな」
予想していた食堂と違い、なんと言っていいのか半ばフリーズするルベル。
「ふふっ、困惑しているな?」
「え? ま、まあ」
この国の時期女王候補ともあろう方がまさか外で食事をするとは……とルベルは困惑を隠しきれない。
「ところで、話は変わるが、他の王女たちがどこで、どのように食事をするか知っているか?」
「いや、知らないな」
確かに、そういうことは考えたことがなかったとルベルは考える。
「まあ、もちろん王女ひとりひとり違うし、全員のことを把握しているわけではないが、けっこう面白いぞ」
「そうなのか?」
「ああ。例えばマリーゴールド姉さまはいつも子どもたちを招待して、仲良く食堂などで食べている。逆にアマリリス姉さまは常に自室で食べている。あとはヒナギク姉さまは自分の食事は自分で作るし、コスモスは彼女の父と一緒に食べる。そして私は――」
ニッ、といたずらっぽく笑う。
「ここで、日陰者らしく私のメイドたちと食事をする。まあ、いるのは日向ではあるがな!」
ワハハと豪快に笑う。
「それに、ここの空気は素晴らしいぞ。幸せな気分になる。あと、これだけ広いと暗殺者とかが来てもわかりやすいしな」
「最後物騒だな」
暗殺者って……と、苦笑いをするルベル。
「いや、案外本気でわかりやすいんだ。城内だと、かなり分かりづらい。何度か危ない場面もあったな」
「経験談かよ⁉」
「ああ。ここでも何度か来たが、わかりやすかったぞ。丸見えだからな。弓を引くにも、遮蔽が少ないから目立つからな」
「は、はは……」
もう笑うしかない、とルベルは引きつった笑いをこぼす。
「ルベル様ー! できましたよー!」
わーい! とマリベルが皿を持って走ってきた。
「フレンチトーストです! 美味しいですよ!」
「うむ、私が保証しよう。絶品だ」
ウキウキと鼻歌交じりにスカーレットも席につく。
「では、温かいうちにいただくとしよう」
「はーい! あ、姉さまとクラウおばさまは先にどうぞと言ってました!」
「そうか? すまないな。では……いただきます」
パシッと礼儀正しく手を合わせるスカーレットに習い、ルベルも手を合わせる。
「いただきます」
そして、フォークとナイフを手に取る。
「あむっ」
スカーレットはというと、嬉しそうに頬張り、頬をほころばせている。
「うまい! 流石だマリベル!」
「おお、本当にうまい」
ふんわりと仕上げられたフレンチトーストは上品で、繊細だ。甘さもかなり控えめで、食べやすい。
「ふふん、しっかり腕によりをかけましたから!」
むふーっ、と嬉しそうに鼻息荒く答える。
「凄いな、城のシェフと比べても遜色ないレベルの品だぞこれ」
かつて一度城の料理食べたことのあるルベルが感想を言う。
「良かったわねマリベル。口説かれたわよ」
「ええーっ、本当ですか? 嬉しい!」
ピョンと飛び跳ね、全身で喜びを表現する。
「ずっ、ずるいぞ! 私はまだ口説かれてもいないのに!」
ガタッとスカーレットが席を立つ。
「姫様、お食事中ですよ。またクラウおばさまに怒られてしまいます、大丈夫です、ルベル様はスカーレット様にメロメロです」
「なに? 本当かラミベル! それならいいんだ」
ふふんと急に上機嫌になってまたフレンチトーストを食す作業に戻った。
「ということですルベル様」
「どういうことだよ⁉」
思わず突っ込んでしまうルベルであった。
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