18 / 29
18
しおりを挟む「……ごちそうさま。うむ、今日もとても美味かった」
満足した、とスカーレットは席を立つ。
「さて、ルベルよ。今日も課題に取り組んでもらうぞ」
「まじかよ。終わる気がしねぇ……」
果てのない課題に頭を抱えるルベル。
「なに、先も言ったが、何かを掴むだけでもいいのだ。食事はラミベルに届けさせる。それとだな」
ズイッと顔が急に近づいてきた。
「君ならできると信じている。私の目に狂いはない」
まっすぐな瞳に見つめられ、思わずたじろぐルベル。
「そ、そうか? ま、まあ頑張ってみるよ」
「そうだ、その意気だ! やはりお前はこうではなくてはな!」
「姫様、そろそろお時間です。公務がかなり溜まっていますので」
「うむぅ……書類仕事は嫌いだが、応援しているぞルベル! ……ラミベル、手伝ってくれないだろうか……?」
「ダメです」
「なぜだ⁉ ハンコを押す簡単な仕事だぞ!」
「ダメです。適当にハンコを押したせいで、前線の補給がおかしなことになり戦況悪化しかけたの覚えていらっしゃらないんですか?」
「う、うむぅ……」
「ということですのでルベル様、失礼いたします」
「またなルベル! ……どーにかして抜け出せないものか……」
「聞こえていますよ。さ、行きますよ」
こうしてズリズリと引きずられるようにしてスカーレットは連行……もとい仕事をこなしに城に戻っていった。
「……さー、ルベル様! 今日も一日がんばりましょー! おー!」
「お、おー」
残ったマリベルと共に拳を掲げ、今日という日が始まった。
「せあっ!」
今日も今日とて剣を振るうルベル。昨日とは違い、動きが洗練されてきた。
「うーん、本当にじゃじゃ馬だなこの剣は……」
昨日よりはマシであるとは感じているものの、やはり釈然とせず渋い顔をするルベル。
「剣としては問題なく振れる。ただ、どうしても銃として扱えねぇ……」
いくらセーフティを解除し、トリガーを引いて振っても銃弾は一発も発射されない。
「実力不足もあるけど、この機構がムズすぎんだよな……」
そう言い、また昨日のスカーレットの動きを目を閉じ思い出す。
「こうで……こうして……」
一つ一つ丁寧にスカーレットの動きをトレースしていく。ゆっくりと、それでも確実に。
「この動きはこうで……」
「……ルベル様?」
「いや、違うな。もう少し角度が……」
「ルベル様!」
「はいっ⁉」
急に耳元で大声が炸裂し、目を白黒させ、耳を押さえて飛び跳ねる。
「あっ、ああ、ごめん。聞こえてなかった」
集中して剣のことを考えていたので、周りの音が一切入っていなかったようだ。
「いえ、大丈夫です。それよりも、お食事をお持ちしました」
「食事? そんなに時間が経ってないけど?」
「いえ、もう本来の食事の時間を半刻ほど過ぎています。お昼の鐘の音、聞こえていませんでしたか?」
「うっ、聞こえていなかったです」
「大丈夫です、すごい集中力でしたね。さて、これが今回のお昼となります」
スッとバスケットを差し出す。
「ああ、ありがとう」
ルベルがそれを受けとると、ズシリとした手ごたえを感じた。
「姫様いわく、男の子には肉だとのことで、今回はチキンサンドを作らせていただきました」
「おお、うまそうだ」
その言葉を聞いた瞬間、ルベルの現金なお腹はぐーと空腹であると訴えを起こした。
「ではさっそく……」
バスケットを開け、大ぶりの黒パンに手を伸ばそうとしたが――
「おっと危ない、手を洗うのを忘れてたな。悪い、ちょっと持っておいてくれるか? 急いで洗ってくるから」
昨日スカーレットに言われたことを思い出し、手を洗いに行く。
「……偉いですねルベル様」
ぼそりとラミベルが呟いたが、ルベルには聞こえなかったようだ。
「いやー、飯だ飯」
うきうきと手を洗い、ハンカチで拭く。
「あ、そー言えばラミベル、君の分は?」
「ちゃんと用意してあります、ここに。ルベル様が食べ終わるのを確認してから、どこかでいただく予定です」
そう言い、彼女は持っていたもう一つのバスケットを軽く持ち上げる。
「あー、じゃあ、それなら俺と食わないか?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる