愛縁奇祈

春血暫

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〇〇師にご用心!!

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 課長が、僕に向かって何かを言う。
 引馬さんに喧嘩を売って。
 でも、なぜか、僕のことばかり。

 ああ、課長。僕のこと、好きだったんだ。

 そう思って、少し安心した。

 でも。

 でも、なんか、違う気がした。

――課長にとって、僕ってなんだったんだろう。

 やっぱり、遊びだった?

 てか、愁哉は、もういないって言った?

 じゃあ、どうすれば良いんだろう。

「……なんか、すごい、引馬さん怒ってるなあ」

 小さく息を吐く。
 柳楽くんは、引馬さんを見て、少し震えている。

 僕は柳楽くんに「大丈夫だって」と笑いかける。

 けど、きっと、そんな笑えていないと思う。

 あー、もう、なんか、気分変えるためた、何か飲もうかな。

 と、思って、僕は冷蔵庫を見る。

「うわ、何もない」

 どうしよ。

 もう、愁哉いないし。
 愁哉いないし。
 愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。愁哉いないし。

 愁哉いないし。

「はあ」

 と、ため息を深く吐き出して、もう一度見てみると、飲み物を見つけた。

「あ、あった」

 中身が、何かはよくわかんないけど。
 まあ、ないよりはましだ。

 と、思って、僕はそれを飲んだ。

 飲んで気づいた。

 あ、これ、酒だ。

 そう言えば、みんなに、お酒は飲んじゃダメ、と言われていたんだよな。

 どうしよ。

 なんか、一気に飲んじゃったから、くらくらする。

――ヤバイ。

 と、思った瞬間。
 クラリ、と視界が歪んで、僕は少し後ろによろけた。
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