狂気醜行

春血暫

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杜和泉切り裂きジャック事件

002

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「こいつは、また派手にやったなあ」
 川中かわち文弘ふみひろは、煙草に火をつけて呟く。
 彼の目線の先には、バラバラにされた女の死体がある。
 両腕、両脚は切断され、頭も切断されている。
 バラバラにされたその死体は、とても綺麗とは言えず。
 鳥などが少し食ったようにみえるくらい傷だらけだった。
「これで、何件目だ?」
 文弘の言葉に、彼の隣にいる瀧代たきしろはじめが「えっと」と手帳を見る。
「これで、今月は十件目です」
「……まだ今月、始まって一週間だぞ。さすがに、殺りすぎだろ」
「ですね。犯人は、どうしてこんなに人を殺すのでしょうか」
「それを考えたりするのが、俺らの仕事だよ。瀧代」
「まあ、そうなんですけど。川中先生」
 一は困ったような顔をして、死体を見る。
「連続で何ヵ月も前から同じ時間、同じ手口って何でしょうか」
「さあな。考えられるのは、その時間に何か意味がある、というのと。その時間にしか犯行ができない、というのかな。手口に関しては、これしかやり方を知らないみたいだ」
「さすが川中先生」
「いや、普通に考えたらそうだろ? 瀧代は、もっと勉強して自分で考えろ」
「すみません」
 一が謝ると、二人の後ろから「どうも」と一人の刑事が現れる。
「川中先生、またお会いしてしまいましたね」
「本当だな」
 文弘は面倒くさそうに煙草をポケット灰皿に捨て、刑事を見る。
「相変わらず、男か女かわからない容姿だね」
「気にしてるから、やめてください。侮辱されている気持ちだ」
「侮辱罪とかやめろよ?」
「しませんって」
 刑事は少し長い茶髪を後ろに軽くひとつにまとめながら、一を見る。
「おや、初めまして。川中先生の教え子?」
「へ? あ、はい! 杜和泉といずみ大学一年の瀧代一です!」
「一年生か。一年生で、川中先生の授業なんて……」
「? 珍しいんですか?」
「とってもね。まあ、君は運が悪いというか、逆に良いというか。あ、僕は杜和泉署の北ヶ峰きたがみね理緒りおって言います」
「運が悪い? て、どういうことですか? 北ヶ峰さん」
「先生の授業は基本、課外だからね。実際の事件を見て、そこから学んでいくっていう感じ。だから、警察とかを目指す学生には良いんだけど。それ以外だと、かなりトラウマになるというか」
「なるほど?」
 一はよくわからず、首を傾げる。
「北ヶ峰さんは、何で先生のことを知ってるんですか?」
 一の問いに、理緒ではなく文弘が「生徒だったからさ」と答える。
「五年くらい前まで俺の生徒だったから、よく知ってる。ただ、それだけのことだ」
「えー!? じゃあ、その、俺の先輩ってことですか!?」
 一は驚いて手帳を落とす。
 理緒は落とした手帳を拾い、一に渡す。
「大体この辺りの刑事は、先生の教え子だよ」
「え、じゃあ、うちの大学が警察に就職する率が高いのって……」
「先生がいるから、かな?」
「先生、すごい人なんですね!」
 一は目を輝かせて文弘を見る。
「改めて尊敬します」
「よせやい」
 文弘は少し照れながら、一に言う。
「俺は俺の授業をしてるだけだ。どうするかは自分で決めろ」
「はい」
 一が返事をすると、文弘は頷き、理緒に言う。
「犯行の時間、手口が前回と同じだから、これも『杜和泉切り裂きジャック事件』の一つだな。北ヶ峰刑事」
「ええ、そう考えて良いと思います。川中先生」
 理緒が頷くと。
 彼の後ろから「先輩~!」と一人の刑事が走ってきた。
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