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杜和泉切り裂きジャック事件
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理緒はその声を聞き、ため息を吐く。
「雪城恵実さん……、お前なあ」
「何でしょうか。北ヶ峰理緒先輩」
「呼び出しがあったら、すぐに来る。わかったか?」
「今回は、向かう途中にナンパに遭ったんですよ」
「前回もそうだったよなあ?」
「同じ人です。もう、しつこくてしつこくて」
「ったく、すぐに追い払うか何かしろよ」
「はーい。って、あれ? そちらの方々は?」
恵実は文弘と一を見る。
「ここは殺人事件の現場です。関係ない人は立ち入り禁止ですよ」
「あ、えっと。その、俺は杜和泉大学一年、瀧代一です。川中先生の課外授業で、その」
一はあわあわする。
その隣で、文弘は「あわあわすんな」とからかうように笑い、一の頭を軽く撫でる。
「そんなんじゃあ、警察官にはなれんぞ。瀧代」
「で、でも先生……」
「でももクソもねえよ」
文弘はそう言うと、恵実を見る。
「俺は大学で犯罪学を研究している川中と言います。この瀧代は俺のゼミの子」
「は、はあ……」
「俺のゼミでは、実際の事件を見ながら、どういうものかを学ばせている、という感じなんですよね。ま、詳しいことは、君の先輩が知っている」
「えっと、その、うん?」
恵実は理緒を見る。
理緒は、またため息を吐き「んっと」と言う。
「川中先生は、犯罪学のスペシャリスト的な存在というか。色々とお世話になっている先生なんだよ。で、こういう変わった事件は先生の研究分野というか、何だろう」
「? つまり、部外者ではない、と?」
「そう。そういうこと」
「ふむ。あ、でも川中って名前、聞いたことがあります。確か、テレビで『犯罪を本気でこの世から消したいなら、人間が滅亡するしかない』て言った、変わった学者ですよね!」
恵実の言葉に、文弘が「そんな昔のこと、よく覚えてますね」と笑う。
「加害者も被害者も人間なのだから、という言葉も付け足しておいてくださいな。新人刑事さん」
「え? あ、な、何か馬鹿にしてません?」
「今のところは、そこまで馬鹿にしてない」
「何ですと~?」
拳を作る恵実を、理緒が宥める。
「まあまあ、落ち着いて」
「しかし、先輩!」
「学者なんて、みんなこうだよ」
「……………」
恵実は文弘を睨む。
文弘は気にせず、死体を見る。
「おや、前とは違うところがあるぞ」
文弘は少し楽しそうに言い、一に言う。
「瀧代、ここを見ろ」
「? ただの刺し傷ですよね。ちょっと深い……」
「ああ、そうだ。この右腕にある刺し傷は、他の刺し傷よりも深い。何かあったのではないか!?」
「先生、テンション高っ」
一は驚き、手帳を落としかける。
が、落とさず、文弘の言う死体を見る。
「確かに、他の傷より深い……。今までは、全部同じ深さだったのに……」
「この被害者と何か関わりのある人物によるもの、かな」
「だとしても、なぜ右腕なんですかね。心臓を一突き、とかではなく」
「さあね。まあ、一つ言えるのは、簡単に解けそうな事件で、少しつまらない、ということだ」
文弘は死体から離れて、煙草を咥える。
「北ヶ峰。被害者についての情報は?」
「え?」
「犯人は被害者の知り合いか、一方的に被害者を知っているか、だ。被害者に抵抗されたか、何かで右腕を少し深めに刺した。……あと、被害者のしていた結婚指輪か婚約指輪も外していった。その跡がある」
文弘の言葉に、理緒は「確かに」と死体を見る。
「あまり気づかなかった」
「ちゃんと死体を見ろ、と教えたはずだぞ。北ヶ峰」
「すみません。先生」
えっと、と理緒は手帳を開く。
「被害者は早乙女嵐。二十五歳。この近くにあるエデンというキャバクラのナンバーワンギャバ嬢でもあり、個人的に身売りもしていたみたいです」
「男好きかな」
「そうかもしれないです」
「かも、て……。ちゃんと調べろよ」
文弘は煙草を咥えながら、現場から離れる。
「俺は俺で調べることがある。瀧代、行くぞ」
「え? あ、はいっ!」
一は少し慌てて、文弘の元に行く。
「先生、現場はもう良いんですか?」
「死体からわかることは、大体わかった。あとは、警察の仕事だよ」
「?」
「犯人を捜して、逮捕するのが警察。犯人がなぜこの犯罪を犯したのかを考え、答え合わせをするのが俺」
「答え合わせ?」
「実際に聞くんだよ」
楽しそうに言う文弘を、一は見て、少し引く。
「何か、先生……怖いです」
「なあに、俺は犯罪は犯さないさ。犯すとしても、完全犯罪。こんなわかりやすい犯罪は犯さないよ」
文弘はそう言って、一を連れて現場から離れた。
「雪城恵実さん……、お前なあ」
「何でしょうか。北ヶ峰理緒先輩」
「呼び出しがあったら、すぐに来る。わかったか?」
「今回は、向かう途中にナンパに遭ったんですよ」
「前回もそうだったよなあ?」
「同じ人です。もう、しつこくてしつこくて」
「ったく、すぐに追い払うか何かしろよ」
「はーい。って、あれ? そちらの方々は?」
恵実は文弘と一を見る。
「ここは殺人事件の現場です。関係ない人は立ち入り禁止ですよ」
「あ、えっと。その、俺は杜和泉大学一年、瀧代一です。川中先生の課外授業で、その」
一はあわあわする。
その隣で、文弘は「あわあわすんな」とからかうように笑い、一の頭を軽く撫でる。
「そんなんじゃあ、警察官にはなれんぞ。瀧代」
「で、でも先生……」
「でももクソもねえよ」
文弘はそう言うと、恵実を見る。
「俺は大学で犯罪学を研究している川中と言います。この瀧代は俺のゼミの子」
「は、はあ……」
「俺のゼミでは、実際の事件を見ながら、どういうものかを学ばせている、という感じなんですよね。ま、詳しいことは、君の先輩が知っている」
「えっと、その、うん?」
恵実は理緒を見る。
理緒は、またため息を吐き「んっと」と言う。
「川中先生は、犯罪学のスペシャリスト的な存在というか。色々とお世話になっている先生なんだよ。で、こういう変わった事件は先生の研究分野というか、何だろう」
「? つまり、部外者ではない、と?」
「そう。そういうこと」
「ふむ。あ、でも川中って名前、聞いたことがあります。確か、テレビで『犯罪を本気でこの世から消したいなら、人間が滅亡するしかない』て言った、変わった学者ですよね!」
恵実の言葉に、文弘が「そんな昔のこと、よく覚えてますね」と笑う。
「加害者も被害者も人間なのだから、という言葉も付け足しておいてくださいな。新人刑事さん」
「え? あ、な、何か馬鹿にしてません?」
「今のところは、そこまで馬鹿にしてない」
「何ですと~?」
拳を作る恵実を、理緒が宥める。
「まあまあ、落ち着いて」
「しかし、先輩!」
「学者なんて、みんなこうだよ」
「……………」
恵実は文弘を睨む。
文弘は気にせず、死体を見る。
「おや、前とは違うところがあるぞ」
文弘は少し楽しそうに言い、一に言う。
「瀧代、ここを見ろ」
「? ただの刺し傷ですよね。ちょっと深い……」
「ああ、そうだ。この右腕にある刺し傷は、他の刺し傷よりも深い。何かあったのではないか!?」
「先生、テンション高っ」
一は驚き、手帳を落としかける。
が、落とさず、文弘の言う死体を見る。
「確かに、他の傷より深い……。今までは、全部同じ深さだったのに……」
「この被害者と何か関わりのある人物によるもの、かな」
「だとしても、なぜ右腕なんですかね。心臓を一突き、とかではなく」
「さあね。まあ、一つ言えるのは、簡単に解けそうな事件で、少しつまらない、ということだ」
文弘は死体から離れて、煙草を咥える。
「北ヶ峰。被害者についての情報は?」
「え?」
「犯人は被害者の知り合いか、一方的に被害者を知っているか、だ。被害者に抵抗されたか、何かで右腕を少し深めに刺した。……あと、被害者のしていた結婚指輪か婚約指輪も外していった。その跡がある」
文弘の言葉に、理緒は「確かに」と死体を見る。
「あまり気づかなかった」
「ちゃんと死体を見ろ、と教えたはずだぞ。北ヶ峰」
「すみません。先生」
えっと、と理緒は手帳を開く。
「被害者は早乙女嵐。二十五歳。この近くにあるエデンというキャバクラのナンバーワンギャバ嬢でもあり、個人的に身売りもしていたみたいです」
「男好きかな」
「そうかもしれないです」
「かも、て……。ちゃんと調べろよ」
文弘は煙草を咥えながら、現場から離れる。
「俺は俺で調べることがある。瀧代、行くぞ」
「え? あ、はいっ!」
一は少し慌てて、文弘の元に行く。
「先生、現場はもう良いんですか?」
「死体からわかることは、大体わかった。あとは、警察の仕事だよ」
「?」
「犯人を捜して、逮捕するのが警察。犯人がなぜこの犯罪を犯したのかを考え、答え合わせをするのが俺」
「答え合わせ?」
「実際に聞くんだよ」
楽しそうに言う文弘を、一は見て、少し引く。
「何か、先生……怖いです」
「なあに、俺は犯罪は犯さないさ。犯すとしても、完全犯罪。こんなわかりやすい犯罪は犯さないよ」
文弘はそう言って、一を連れて現場から離れた。
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