狂気醜行

春血暫

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杜和泉児童殺害予告事件

008

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「優しい先生ですね、佐々塚先生って」
 一は靴を履きながら文弘に言う。
「彼に任せておけば良いかもしれないです」
「……優しい先生、ね」
「? いや、だってもう卒業した生徒――児童なのに、心配して、て訪れるんですよ?」
「それを本心でやっているなら素晴らしい教師だけど。本心ではないだろうな」
 文弘は煙草を咥える。
「というか、佐々塚先生には心なんてないだろ」
「え?」
「そんくらい見抜けないと、良い警察官にはなれないぞ」
 文弘は笑い、外に出る。
 一も文弘の後に、外に出る。
「普通の警察官も見抜けないですよ」
「ああ。だが、良い警察官ってのは見抜けるもんだぜ?」
「先生、また俺をからかっているんでしょ」
「あははははっ! バレたか」
「バレバレです」
 一はイラッとして、文弘にデコピンをする。
 文弘は「痛っ」と額を押さえる。
「何するんでい」
「いつものお返しですよ、先生」
「クソが」
「口悪いです、先生」
「クソが!」
 文弘はイラッとして、一にデコピンをする。
 一が「やられた」と額を押さえていると。
 二人の前に一人の少年が現れた。
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