狂気醜行

春血暫

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杜和泉絵師殺害事件

001

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 愛弥は息を切らしながら走った。
――逃げないと。
 中学二年生の彼女が逃げているのは、彼女の十二個上の実姉・愛理からである。
 愛理は愛弥の後ろをゆっくり歩きながら「愛弥ちゃん」と彼女の名前を呼ぶ。
「何で逃げるの? 愛弥ちゃんには、私しかいないじゃない」
「…………」
「愛弥ちゃん!」
 怒鳴るような愛理の声に、愛弥はビクッとし、バランスを崩して転ぶ。
――痛い。
 膝から出る血を見て、愛弥は目に涙を浮かべる。
「嫌だ……」
 どうしてこうなってしまったのだろう。
 優しかった姉はどこにいったのだろう。
 自分が何か悪いことをしてしまったのではないか。
 もしそうなら言ってくれれば直したのに。
 愛弥はそう思いながら涙を流す。
「怖い。恐い。こわい。コワイ」
 近づいてくる姉が。
 もう二度と外に出ることができなくなるということが。
 姉に捕まったら、もう――
「助けて」
 愛弥が呟くように言うと「わかった」と知らない若い男の声がした。
 声のする方を愛弥が見ると。
 そこには、背の高い若い男が立っていた。
「あ、あの」
 愛弥が男に声をかけようとすると、男は「おいで」と愛弥に手を差し出す。
「怖い思いなんて、もうさせないからね」
「え?」
「絶対にさせないから」
「う、うん」
 愛弥は頷き、男の手を取る。
 男は軽く愛弥の手を引き、そのまま愛弥の身体を抱き寄せる。
「大きな音がするかもしれないから、耳を塞いでて」
「あ、はい」
「良い子だ」
 男は愛弥に笑いかける。
 愛理はその様子を見て「ふざけんな!」と怒鳴る。
「離れろ! それは私のものだ!!」
「人をもの扱いするなって学校で習わなかったかい?」
「うるせえ! ぶっ殺してやる!!」
「うるさいのは君だ」
 男はそう言って愛理にナイフを投げる。
 ナイフは愛理の咽喉に刺さり、愛理は声にならない叫び声を上げた。
 男は「すぐに戻る」と愛弥に言い、愛弥から離れ、愛理の元へ行く。
「どれだけ彼女に執着していたか、僕にはわからないけれど。彼女は君だけのものではないんだよ」
「~~!」
「煩いのは嫌いなんだ、僕」
 男は笑って、ナイフを抜き、そのナイフを愛理の胸に刺した。
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