狂気醜行

春血暫

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狂気醜行

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 気がつくと、午後八時を過ぎていた。
 文弘はノートと肉切り包丁を持って、県立藁谷町第一高等学校に向かった。
 高校の正門には男が一人立っていた。
 文弘は「遅くなった」と男に言う。
「たくさん待たせて、申し訳ないね。佐々塚先生」
「本当だよ。川中先生」
 男――優は無表情で言う。
「全部思い出した?」
「知りたくないこともね」
「嫌なことばかりだった?」
「そんなことはない。どれも大切なことだったよ」
 文弘が煙草を咥え、話し出そうとすると。
 優が「待った」と遮る。
「少し話をしようよ、せっかくだから」
「……そう」
 文弘は火をつけようとした手を止める。
「話すことなんてないだろ、別に」
「あるよ」
 それに、と優は周りを見る。
「どうせ警察が周りにいるんだろ? わかるよ。だって僕は――」
「ご主人様、だもんね」
「遮らないでよ」
「先に遮ったのはあんただよ」
「じゃあおあいこか」
「うん」
「……聞きたいことがあるんだ」
「何?」
「君は僕を逮捕してどうするんだ?」
「どうって?」
「僕はさ……、中々死ねないんだ。だから、死刑になっても死なずにいるし」
「それでも、このまま外に出したままにするのは危険だ」
「そう?」
「そうだよ」
「僕よりも危険人物はいるよ」
「いるかもしれない。けど、あんたが一番危険だ。力は強いし、時を戻すし」
「……それも知ってるのか」
「うん。話を聞いたからね」
「…………」
「刑務所にいても時を戻してしまえば同じだけど。どうする?」
「時を戻すときの対価って知ってる?」
 優は文弘に言う。
「人間性もだけどね。それをすると不死力も上がったりするんだよ。というか元々僕が持ってる能力が上がる。だから、より死ねなくなるし、より物を壊しやすくなる」
「ははは。化け物だな」
「真顔で笑わないでよ」
「あんたも真顔だぞ」
「こんな話、真顔以外で話せない。そして、僕はそんなに表情豊かじゃない」
「…………」
「まあ、僕はこれ以上時を戻せないっちゃ戻せないんだよね」
「そう。じゃあ、さ」
 文弘は優に訊く。
「あんたは何回目の佐々塚優なの?」
「何回目だろうね。十回くらいは時を戻したからなぁ」
「じゃあ俺もそれくらいの川中文弘なんだな」
「僕と君はペアだからね」
「完全に巻き込み事故じゃん、やめてほしいよ」
「そうかな」
「そうだよ」
  文弘はそう言って、煙草を吹かした。
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