綺麗な薔薇には棘がある。

春血暫

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 その間、保川さんは俺に話しかける。

「石野くんてどんな人なん?」
「光珠さんですか?」
「そう」
「うーん、と。そうですね、普段から口数が少ない方で、多くなるのは何か心配事とかあるとき、とかで……」
「ほぅ」
「私が父親を亡くしたとき、傍で私と母親を支えてくれた、私たち親子の恩人のような人です」
「へぇ。ここでの石野くんからは、あんま想像できひん」
「そうですか? 当時からほぼ変わらず、こんな感じでいてくれて」

 父さんを亡くし、ショックで精神を病んだ母さんを支えてくれた。
 大学を諦めて働こうとする俺に、諦めんな、と言うてくれて。
 それで、大学の学費を全部出してくれた。
 今もこうして、特に何も言わず、俺ら親子を支えてくれる。

「とても尊敬してる人です」
「へぇ」

 だってさ、と保川さんは笑って光珠さんに言う。

「尊敬してるて、良かったやん。石野くん」
「……うん」
「あ、石野くん。照れとる~」
「え、ええから!」

 はい、と光珠さんは保川さんの前にウインナーコーヒーを置く。

「ちょっと奥の方行ってくる。お客さん来たら、呼んで」

 光珠さんはそう言うと、エプロンを外し、それを綺麗に畳んで置き、奥の方へ行った。
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