赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら連続殺人事件が始まった

lavie800

文字の大きさ
7 / 60

第七話

しおりを挟む
吉川は朝から兵庫県警に塚本桂子を呼び事情聴取した。
「早速ですが、大内義長さんとはどういう関係ですか」
「向こうから売り込みがあったのですよ。何でも米国流の経営術を知っているとかで。今は普通の眼鏡だけだと少子化で先行き経営が不安だったので、商品のラインアップを増やす相談や、新商品を渡してモニターらしきものをやってもらっていました」
「大内さんは今どこにいるかご存じですか。県内の自宅を訪ねたのですが不在だったので」
「大内さんに何かあったのですか」
「赤龍戦で優勝した林田さんが失踪しておりまして、別の事件の参考人として探しているのです。大内さんはその林田さんの実の兄なのですよ。ご両親が分かれて苗字は違っているのですが。
大内さんに詳しく話を聞きたいと思っています。
あのホテルで火事があった日に県警の捜査員が参考までに大内さんに連絡先を聞きました。
昨日再度連絡しようと思ったのですが不在のようなので、塚本さんは、大内さんの知り合いだと聞いたものですから大内さんの行先をご存じかと思いまして」
塚本桂子はびっくりした顔をして
「そうでしたか。不思議な因縁ですね。大内さんの助言で女性向けの眼鏡でシェアをあげようということで広告を打ったほうが良いということでしたので、女性も注目する将棋の一戦で協賛に参加しました。
また、大内さんから、デザイン性に優れた眼鏡だから日本市場だけではなくソウル等でも売れるのではないかと助言を頂いて、韓国語を勉強中ですよ。そのうち二人でソウルに出張しましょうと言ってくれていました」

吉川の横には女性警官の制服を着たツインテールの美少女が伊達眼鏡を掛けて横に座っている。
一応黙って聞いている。
「大内さんがどこにおられるかご存じですか」
塚本は足を投げ出して座っている。
「わかりません。いえ。どこにいるかわかりませんが、刑事さん誰にも知られたくないのですが」
「法に触れなければ警察が口外することはありません」
「大内さんは、私の会社の経営コンサルタントをされていて会社で助言を頂いたりしています。
ただお互い独身なので、前に一度私の家で泊まったこともあります」
塚本社長は心なしが顔を赤らめていた。

「それで、会社近くで食事をした後にアルコールも入っていたせいで、経営の助言を私の家で、詳しく聞きたいと誘ったのです。
それで大内さんは私の自宅に来たことがあったのです」
吉川は続きを促した。
「なるほど。何か変わったことはありましたか」
「その時に、大内さんは淡路島に別荘をこれから購入するとか、購入したとかの話が出たことを思い出しました」

横のツインテールの美少女も二人の仲に興味ありそうな顔をして塚本社長を見ている。

「私の会社も淡路島に商品企画を担当している拠点みたいなものがあり、そこから私の自宅に眼鏡の新製品の試作品が届いたのです。
それで大内さんにそのことを言うと、大内さんも非常に興味を示しまして。」
「どういう眼鏡ですか」
「眼鏡型のイヤフォンみたいなもので耳を覆わず眼鏡だけでWi-Fiを通じて少し遠くから自分だけの音楽を楽しめるものです。
骨伝導で音声を伝えるので周りの人に音楽は聴こえないのがおしゃれです」
「大内さんは何故それに興味を持ったのでしょうか」
「わかりません。モニターでしばらく使わせてほしいといわれ、そのまま渡しました」
「そうですか。それ以外はどういうお話をされましたか」
「それで、今度淡路島の別荘に来ないかと誘われました。
そのあと私の寝室で、二人で楽しく過ごしましたので特にビジネスの会話はありませんでした」
塚本社長は顔を真っ赤にしていた。

「今どこに大内さんがいるかわかりませんが、ひょっとしたら淡路島の別荘に居るのではないでしょうか」

「ところでこの写真に見覚えはありますか」
吉川は塚本桂子に川田直久の写真を見せた。焼死体ではなく運転免許所の写真を引き延ばしたものだ。
「知り合いにはいないと思います」
塚本桂子は写真を見つめていた。
「そうですか。何か想い出したら連絡してください。それから林田さんの行方について心当たりは有りますか」
「ありません」
こちらはしっかりとした口調で塚本桂子は答えた。

塚本社長が部屋から出ていき、次に関係者を呼ぶ準備に入った。

吉川は美都留に聞いた。
「どうして、女流棋士が県警の捜査に参加できるのだ」
「本部長に、『私は吉川さんと将来を誓い合った仲だから本部長のことも任せて。守秘義務を徹底するし邪魔はしないから吉川さんの助手をさせて』と女性警官の制服のひざ下を少し上げてすり寄って耳元で囁いたら、交通安全啓蒙活動の1週間は署長代理としてOKだと本部長に言われたわ。
それより大内の別荘ね」

「将来?」
「そうよ。覚えてないの?夢の中であの時代に特別な関係だったこと」
横の美少女は、ニヤニヤしながら、また何か企んでいるような顔だった。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...