赤龍戦で対局した女流棋士が消失したら連続殺人事件が始まった

lavie800

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第十八話

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病室を出て退院した美都留は、すっかり元気にはしゃいで吉川のレクサスNXの助手席に乗り込んだ。

「さすが、山口の武家の御曹司。
レクサスのプラグインハイブリッド車よね。静かな運転音だし、内装もゴージャスよね。
これは、運転しながら電話もできるのね。
さてテレビをみようかな。音楽は何があるの」
助手席に乗った美都留は、レクサスNX車内で色々なボタンを押している。
「兵庫県警に言ったら、その後は山口県ね。
高嶺城よ。一度行かないといけないと思っていたのだけど。」
美都留がスマホで何やら見ている。
「もうすぐ山口県の山水園亭で日本女流名人戦があるわ。
どうしよう。
私は対局しないし解説係でも無いのだけれど」
「兵庫県警に行くよ。
山口は捜査に関係ないだろう」
不服そうに美都留は助手席でレクサスのボタンを触っていた。
「関係あるの。夢で見たから」

再び、淡路島から明石海峡大橋を渡る。
すっかり元気そうに見える美都留は瀬戸内の海を見て、はしゃいでいる。
「ドライブデートね。これは楽しいわ。
車も良いし、景色もいいし。
県警よりこのまま西へ行きましょうよ」

夢ってなんだ。仕事、仕事。
吉川はナビに兵庫県警をセットして、阪神高速を東に車を走らせた。
昨日の夜というか今朝未明で夢を見ている美都留、『私の中にもっと強く』と言っていたよな。
私も横に居るという夢を。
私の中にもっと強くとは?
吉川の頭の中に妄想が芽生えかけたが、深呼吸をして意識を運転に集中させ兵庫県警本部に向った。

県警に着いた吉川と美都留は本部長の部屋に行くように言われて部屋に入った。
「吉川、許嫁に何事も無さそうでよかったな。美都留さん、そこの椅子にかけてくれ。
山口に行った際はよろしく頼む」
「いや、許嫁では。
痛い」
美都留に足先を踏まれて、叫びそうになった。
「はい。遠慮せず、座らせて頂きます。
承知しました。山口でお待ちしています」

吉川だけ立ったままで本部長に問いかけた。
「早速ですが、オーハシホテルと別荘の遺体について、将棋に関することがありましたら、プロの専門家が横に居ますのでご指示のとおり連れて参りました。
また、鑑識の結果でいくつか確認したいことが。
私の横に居る県警の広告塔がそう申しております」

「そうだ。本部長。オーハシポートホテルの駐車場に写ったスーツケースと淡路島津名の別荘にあったスーツケースですが一致しましたか。
大内の別荘のアウトランダーとホテルの駐車場のアウトランダーの写真は一致しましたか。
また、スーツケースの内側に林田初段の何か痕跡が残っていませんでしたか」
「さすが。名探偵。
二つとも一致したよ。それにスーツケースの内側の上に林田の髪のトリートメントの成分が付着していたよ」
「そういうことですね」
「ああ。そういうことだ。対局の後、林田は大内のスーツケースに入って、オーハシポートホテルから大内のアウトランダーで脱出した。
大内と林田は淡路島の別荘に行った」

得意げに笑顔のツインテールの美少女を前にして、本部長は更に衝撃的なことを言った。
「将棋の赤龍戦で林田の優勝した賞金五千万円はネットバンキングでその日のうちに複数の銀行に振り込んで口座を分けたようだ。林田から大内の口座にも振り込まれている。
途中で複数の銀行のATMから現金を降ろしている写真も見つかった。
一つの銀行のATMだと50万円しか下ろせないが、複数の銀行に分けてその日の夜と翌日の早朝にATMを使っている形跡があった。
翌日の朝、淡路島で、複数の銀行の支店に大内が窓口から現金を下ろしている。
林田と大内の名義の複数の銀行から、ATMと窓口から2日間で賞金5千万円のほとんどが下ろされていた。
淡路島の別荘にはどこ探してもほとんど現金が残されていなかった」
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