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第四十四話
しおりを挟む朝になり、A個室に医師と看護師が美都留のベッドに来て、体温、血圧や右側の頭の傷等を確認した。
また問診や瞳孔等もチェックしている。
「大丈夫ですね。傷も良くなっています。しばらくは激しい運動を控え頂き、安静にしていればご自宅で療養できます。
退院できますよ」
医師たちはそう言うと個室から出ていった。
美都留は、ガバっとベッドから飛び降りた。
「退院。さあ県警よ」
吉川は元気な美都留に安心したものの口からでてきたのは、「安静にしていればご自宅で療養できますだろ。」だった。
「また、襲われてもいいの。
県警が一番安全だわ。県警で安静にしておくよ。
さい、レクサスで県警まで送りなさい。
わかったかも知れないけれど、もう少し情報は必要なの」
襲われてもいいのという吉川の一番のウィークポイントを突いてきた。
朝9時である。
山口県警の取調べ室は、ミラーがある部屋があり、その奥には控え室があって参考人からは控え室が見えないようになっている。
控え室には、吉川と横には本部長におねだりをして県警で一番良いソファを控え室まで運ばせた張本人がツインテールを靡かせて座っている。
最初の参考人は、北山四段である。
取調べ室には北山四段と鈴木刑事が対面している。
「北山さん、これはあくまで参考なのですが、女流名人戦の前夜祭の夜11時くらいですが、どちらに居られましたか。
また昨日の夜9時前後はどうでしたか」
「はい。前夜祭の夜は山水園亭に泊まりました。自家発電が故障して不便なら別のリゾートホテルを用意すると事前に連絡がありましたが、寝るだけで気になりませんでした。
夜11時くらいに歯ブラシを床に落としてしまい、旅館の方に申し訳なかったのですが、持ってきて頂きました」
「そうですか」
「昨日は対局に負けて残念でしたので、毎朝新聞の知り合いの女性記者と夜の12時くらいまで山水園亭近くの居酒屋でいたと思います」
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