18 / 31
第十八話
しおりを挟む経好が説明した。
「大蛇女を酒に酔わせて、その隙に勾玉を手に入れる。
戦わずして魔型を手にいれることができる。
ただの酒だけではなくあの大蛇は私の精を欲しがっている。
私の精でおびき寄せるために酒に混ぜて大蛇女の近くに桶を置く。」
「殿、洞窟の入口の穴は人が一人やっと入れるくらいの大きさに近づきましたが、道具も摩耗してしまいこれ以上の大きさを空けることが非常に難しい状況です。開けた穴も思っていたほどより小さく、家来の何人かが入ろうとしましたが途中で引っ掛かり前に進めません。
申し訳ございません。」
鶴姫が手を上げた。
「私は細身で体も鍛えています。私ならこの穴をすり抜けられるはずです。
大蛇女の近くに桶を運んでいきます。」
「いや。鶴姫、それは危険すぎる。」
経好が止めた。
家来も「鶴姫様、それは危ないです。」と鶴姫を止めた。
ツインテールの髪をなびかせている鶴姫は、小袖を脱いで胸を張って白い襦袢だけのスリムな体を経好に見せた。
貧乳ではなくスリムな女よ。
「他に手段は無いわ。
私は赤龍の証のある三種の神器を早く集めて殿と結ばれたいの。
大丈夫だから、家来に、桶を用意しなさいとご指示を。
愛する経好様、私は赤龍に守られている女。心配ないわ。
私は経好様の唯一無二の女としてお役に立ちたいの。」
神々しいオーラを鶴姫から感じた経好は決断した。
「そこまで言うのならやむを得ない。本当に面目ない。
桶だけ置いたら全力で戻ってくるのだぞ。
その間に我々は岩でも使って、地面を掘ってでもして必ず穴を広げるぞ。」
鶴姫は、洞口の入口の隅の大きさを確認した。
ギリギリ左右に体を捩じればすり抜けられそうだ。
穴の奥を覗いてみるとまっすぐは、行き止まりになっている。
高機能集音装置を使うと、穴の右側でシューシューという声が大きく聞こえてくる。
右に道があってそこに大蛇女がいる可能性が高いわ。
経好の精と酒が入った桶がいくつか用意された。桶は穴の大きさより小さいのを用意している。頭に翳すろうそくの照明道具も準備されている。
「経好様、行ってきます。
家来の皆さん少しだけ下を向いていてくださいね。」
鶴姫は白い襦袢も脱ぐと一糸纏わぬスリムな体で経好に抱きついてキスをした。
しばらくして赤龍の証のある背中を経好に向けてしゃがみ込むと、スマホのような物だけ片手に取って、洞窟の穴に向って滑り込んだ。
中に入った鶴姫は洞窟側から手を差し入れて、ろうそくの灯と桶を洞窟の中に取り込んだ。
頭にろうそくを翳してスマホも頭にねじ込んだ。両手に持てるだけの桶を担ぎ進んでいく。中はひんやりとしている。
簡単なダンジョンのようね。
行き止まりだけれどまっすぐ下って行ってみましょう。
頭に挟んだスマホの高機能集音装置が、この先の右にいると思われる大蛇女の声を拾ってくる。
『精の匂いがする。位の高い侍の精の匂い。どこにある。上の方から匂ってくる。』
右から更に下の方に大蛇女がいるのね。声が更に聞こえる。
『赤龍の勾玉を手にしたとき私は人間の乳房の大きい女の姿になれた。勾玉をつけていても海の塩水に浸ると元の蛇の姿になってしまう。
しかし勾玉をつけていても人間の女の姿を長く維持するには生きがよく気高い男の精が必要だ。
この辺りは気高い男はいなかった。漁師の精では一日で蛇に戻ってしまう。
前に瀬戸内の島の大名と交わったときは一か月人間の女で居られたが男は戦で死んでしまった。
だからこの勾玉は誰にも渡さない。
あの高貴な男と交わり続け精を吸収すれば一生人間の女で居られそうだ。
永遠の人間の女の姿を手に入れて大名を誑かし、日本を蛇に支配させてやるのが蛇である私の使命。
一足先に潜りこませた私の子分の諏訪とともに日本中の稲荷神社を神の使い白狐から、地獄の使者である青蛇に変えてやる。
諏訪に聞いたらあの者の父上の精も絶品らしいわ。親子ともども支配してくれるわ。』
勝手な大蛇女。経好様は私の唯一無二の男。誰にも渡さない。契りを結ぶのも私だけ。
ところで諏訪って女の正体は蛇なの。それで経好様の嫁取りに難癖つけていたのね。
鶴姫が、洞窟の中を突き進むと前面は突き当りだった。
右側には更に奥に行く通路があり、左は行き止まりだ。簡単なダンジョンだわ。行き止まりまでは緩やかなくだりになっている。
右に進むと後ろの洞窟の入口の穴から差し込む光は見えなくなった。
右側を更にゆっくりと気を付けながら奥に進むと下る細い道があった。
細い道の先に大蛇ではなく女が一人横向きに座っている。首には勾玉を首輪アクセサリーのように飾っている。近くには海水が見える。
上半身はなにもつけておらず豊かなバストにツンとした乳首が見える。上半身は丸みを帯びて占い師の諏訪よりも男への媚びのためのフェロモン全開だわ。漁師が惑うのも少しは分かる気がするわ。
あの海水と海が繋がっているのかしら。
この細い道のここに桶を置いて私は岩陰に隠れるわ。
岩肌が蛍光色のある苔に覆われて、明かりが無くても仄かに周りを見渡せるみたい。
桶を置くと桶の覆いを払い、素早く鶴姫は岩陰に隠れた。ろうそくの灯をかき消して見守った。
岩陰にいても経好から先ほど搾り取った精の匂いが漂ってくる。
『高貴な男の精の匂いがする。いい酒の匂いも。
あの男が来たのか。飛んで火にいる何とかだな。誘惑してやるぞ。
ほれ、下半身を覆う布も要らぬ。』
高機能集音装置から大蛇女の声が聞こえる。
岩陰のすぐそこに女の気配が近づいてきた。
桶に手を出したようだ。
桶の中の酒とそれに交じらせた精の液体を舐めている。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
