転部したら先輩が神だった

神河 斉

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文化祭編

幼馴染がやばい

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次の日、教室に入ると、そこには誰もいなかった。
元々家にいるのがあまり好きでないこともあって、いつもはある程度早く来る。今日に関してはしたいことも多くあって、大分早く家を出てきてしまった。まだ7時になったばかりということもあってか、廊下にはそこそこ涼しい風が吹いている。一晩中締め切られた教室の淀んだ空気を換えるために、窓という窓を開け放つ。
昨日の孔太の言ったことと自分の役割について反芻しつつ、何をするかを考えているとドアの方から、
「おはよー、海!今日も早いね!」
といつも通りの、女子にしてはすこし低いシャープな挨拶が聞こえてくる。
「お、おはよ。もうこんな時間か。」
と呟きながらドアの方に体を向ける。そこには笑顔の幼馴染が立っていた。

彼女は北野恵(きたのけい)、赤ちゃんの頃からの知り合いだ。
彼女の父親は俺の父との大学での同級生だったらしい。国会議員になったうちの親に対し、恵の親は県議会議員になった。今となっては副県知事。そんなこともあって、竹内家と北野家の交流は20年以上続いているらしい。お互いのしんどさがわかることもあって、恵は俺の数少ない理解者だ。

物心ついた時から彼女を知っているわけだが、ここまで可愛くなるとは思っていなかった。
何というか、ボーイッシュな可愛さ。少しくしゃっとしていて短い髪。目尻の上がった瞳。キリッとした表情をしていることが多く、見とれてしまうこともしばしばだ。
小さい頃から女顔がコンプレックスだった自分には憧れしかない。そんなこともあって、俺という1人称を使っているのだが、呆れるほどみんなに受け入れられない。何度、似合わないからやめてほしいと言われたことか。まぁいつも恵が男前に慰めてくれるのだが。


「今日はなんでこんなに早いの?」
恵は自分の席にカバンを置いてから俺の席に歩いてくる。
「色々考えなきゃなことがあってな。家じゃうるさくてなんもできないし。何しろ俺はこのクラスの頭脳だからな。」
そう言ってニコッと笑いかける。恵の横にいると自然に元気になれる。幼馴染というのはなかなかにすごいものだ。
「あ、そっか。海も大変だね。」
「もう、全くだ。」
そう返事して前を向くと恵がいない。振り向こうとした瞬間に両肩に鋭いのか鈍いのかよく分からない痛みが走る。今度こそ振り向くと真面目な顔をした恵が両肘を肩に乗せていた。

彼女には合気道の心得がある。小さい頃から毎日のように道場に通っていたらしい。その上、彼女は整体師を目指しており、たびたび研究と称する実験をしてくる。実際ある程度は良くなるのだが、これがとんでもなく痛いのだ。

「相変わらずべらぼうに痛いな。まぁ目が覚めてちょうどいい・・・ということにしとこう。」
「もう!せっかく体を心配してあげてるのに!もう知らないよ?」
そう言って、頬を膨らます彼女。女の子っぽい仕草はなかなか見ることができないので、もう少し見ておきたいところだが、生憎俺にそんな技術はない。せいぜい怒らせないようにするのが限界だ。
「ごめんごめん、いつもありがとね。」
あれ?いつもならこれでどうにかなるのに、表情が変わらない。この表情が続くのも悪くないと思ってそのままにしておくと、彼女の表情はどんどん曇っていく。
「なんかおごったげるから許してっ!」
「よっしゃ!粘り勝ちっ!」
文句を言おうとしたところで、みんなの視線を感じる。
気づくとクラスの3割くらいの人が笑いをこらえていた。
そこに孔太が爆弾を投下。
「ほんと仲良いよね。二人って。付き合ってたりしないの?それとも文化祭マジック?」
孔太の言葉にみんながこらえきれなくなる。
恵はニコニコしているし・・・。ほんとにひどい朝だ。
俺のため息は笑い声に埋め尽くされる。
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