41才の中学二年生(改訂版)

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第2章

学級委員長は龍也

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この日、後期の学級委員長を決める為、放課後全員が残って、誰を学級委員長にするか論議を交わしていた。

『お前やれよ』

『いや、お前がやれよ』

『決まらないと帰れないんだぞ!』

『じゃあ、お前がやれ』

『誰でもいいじゃない、やりたい人がなればいいんだし』

そんな事を言い合っていた。


「ほら、早く決めないと帰れないでしょ?自薦他薦問わないから、誰か手を挙げなさい」

担任の佐伯が促すが、皆手を挙げない。

どうせ、学級委員長なんて、成績が良くて真面目なヤツがやるんだろう、という事で成績の良い生徒が周りからやれ、やれ、とはやし立てられていた。


学級委員長ねぇ…そんなもん、誰がやっても同じような気がするんだけどなぁ。


それより、早く帰りたい。

いつまでやってるんだ、こんな事?



これじゃ、中々決まらないだろう。



ふと、後ろを振り返った。

皆が誰にするか、ワイワイ騒いでいるのに、龍也だけが窓際の席で外を眺めていた。


あ…そうか!

オレは閃いた。

「はい、はい!」


「あら、山本くん学級委員長やる?」

オレは手を挙げた。

「違うよ、学級委員長は龍也がいいと思います」


『えっ?』

『マジ?』

教室内がどよめいた。


当の本人は呆気に取られ、ポカーンとしている。


「山本くん。何で金澤くんが学級委員長に?」

そりゃ、担任も驚くだろう。

でも、オレはこのクラスの学級委員長は龍也が相応しいと思った。


「だって、このクラスは龍也がリーダーみたいなもんだし、リーダーが学級委員長やればいいんじゃないかと思ったから」

龍也は以前と違い、威圧的な態度をとる事は無くなった。

皆と仲良く話し、表情も明るくなった。

まだヤンキーな部分は残ってるが、良くも悪くもこのクラスは龍也がリーダーシップをとっている。

ならば、龍也が学級委員長をやっても変じゃないと思ったからだ。


「おい、オレが学級委員長って…何だよそれ?」

「お前が1番、発言力があるんだし、このクラスを引っ張ってくれればいいんだよ」

すると、

「オレも賛成!」

泰彦も手を挙げた。

「オレも」

「うん、オレも賛成」

謙司とチャッピーも手を挙げた。


「お前ら…マジかよ?」

龍也は戸惑っている。

前々から思っていたのだが、コイツがもし、改心して皆と仲良くなれば、クラスは変わるんじゃないか、と思っていた。


オレとのタイマンの後、龍也の中に変化が起きた。

そりゃ、冗談半分で凄んだり、威圧的な態度をするけど、あくまでも遊びの範疇での事だから、皆は笑っている。

それに、コイツは元々正義感が強いところがある。

リーダーシップの素質は十分にある。

ならば、学級委員長は龍也しかいないと思ったからだ。

「龍也!龍也がこのクラスを変えてくれよ」

泰彦も同じ事を思ってたみたいだ。


学級委員長=真面目なヤツという概念は必ずしも当てはまるとは思わない。

勉強が出来なくたって、皆を引っ張る力があれば、クラスは今より更に良くなるに違いない。


「山本くん。ホントに金澤くんでいいの?」

佐伯は不安そうにしてるが、学級委員長は龍也じゃなきゃ務まらない。

「他に誰がいますか?学級委員長に1番相応しいのは、龍也しかいません」

うん、龍也しかいない。

『龍也、やってみろよ』

『お前しかいないよ』

『金澤くん、学級委員長やって』

皆も後押ししてくれる。


「いいのかよ?…オレが学級委員長なんてやっても…」


「龍也しかいないよ、このクラスまとめる人間は」

「そうだよ、龍也がリーダーだしな」

オレと泰彦の意見に、異論は無かった。


「皆がああ言ってるんだし、やってみたらどう?」

佐伯に言われ、龍也は学級委員長をやると決めた。


「では、新しい学級委員長は金澤くんに決まりました。金澤くん、学級委員長としての挨拶をお願いします」


佐伯に促され、龍也は教壇の前に立ち、挨拶した。


「えっと…オレみたいなバカが、学級委員長出来るかどうか解らないけど、オレはこのクラスをもっともっと良い雰囲気にしたいから皆、ヨロシク!」


【パチパチパチパチ】


全員拍手をした。


「ふ~ん…あなた案外、人を見る目があるのね」

「うわっ!ビックリした!」

気がつくと、オレの横に梅がいた。

ジジイ達は煙と共に現れるから解るんだが、コイツは何の前触れも無く現れるから、毎回ビックリする。


「だってこのクラスは、アイツの舵で左右するようなもんだしな」

そういう事だ。

これでアイツも、少しは真面目になるだろう。

…いや、無理かな?

でも、このクラスはきっと変わる。

「それと…先生、学級委員の副長はオレが決めていいかな?」

龍也は話を続けた。

「えっ?いいけど、誰かいるのかしら?」

すると、龍也はオレと泰彦を指した。

「新しい学級委員の副長は山本と、泰彦にしたいと思うんだけど、いいよな?」


「えっ、オレ?」

「マジか、オレが副長?」


オレたちでいいのかよ…

「じゃあ、副長は山本くんと牛島くんという事で決まりでいいかな?」

【パチパチパチ】

オレが学級委員の副長かよ…

大丈夫かよ、この3人体制で。

「では、2人とも前に立って挨拶を」

オレと泰彦は龍也の横に立ち、挨拶をした。

「えー、学級委員長の足を引っ張らないように、副長として頑張っていきたいと思います」

泰彦は挨拶して、頭を下げた。

【パチパチパチ】

「じゃあ、次は山本くん」

オレの挨拶か。

「えーっ、そんなワケでね…はい…」

「何、キンチョーしてんだよ、智っ!」

チャッピーが囃し立てる。


「それじゃ、このクラスの繁栄を願って!皆さんご唱和下さい!1,2,の3で、ダーッです」


『何だよw』

『猪木かよ?』

『何、それ?』

「行くぞ~っ!1,2,3,ダーッ!!」


「ダーッ!」

ダーッをやったのは、龍也と泰彦だけだった…

ものの見事にスベった…

梅はその様子を見て、頭を抱えた。


これで、後期の学級委員長が正式に決まった。








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