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第2章
アイドルになりきってら…
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オレの出番は終わった…
セリフはちゃんと言えただろうか?
演技は大丈夫だっただろうか?
そればかり気になっていた。
袖に引っ込んで、後は皆の芝居を見るだけ。
「山本くん、お疲れ様。大分緊張してたね」
「オレ、大丈夫だったかな…」
「ドンマイ!」
え…ドンマイって…
あっ、そうだ!それよか、デザイアーの事だよ!
「片野!さっきの話だけど、デザイアーの本来の姿って、どういう事なんだ?」
片野は袖から舞台を見ながら話をした。
「小学校の2年生になった頃だったと思うけど、あの子今はああやって真っ黒な髪にしてるけど、地毛は茶色いのよ。それで、担任の先生に【何で茶色くしてるの、黒く染めなさい!】って言われて、何度もこれは地毛だって、お母さんも一緒になって説明したんだけど、聞き入れてくれなくて…
それで、他の子達からも【茶色に染めてる】ってイジメられるようになって…それまでは、明るくていつもニコニコしていたのが、徐々に暗くなって、髪も同じように暗く染めて、いつしか話し方もあんな風になっていって…」
知らなかった…元々ああいう感じなのかと思っていたのだが、違ってたのか。
何だか、可愛そうだ。
コミュ障になったのではなく、ならざるを得なかったなんて、あまりにも悲しすぎるじゃないか!
「だからね、恵の本来の姿を知ってもらうには、ああやって主役にするのがいいと思ったの」
確かに今のデザイアーを見て、あれが本来の姿と言われれば、そうなのかなと思ってしまう。
しかし、あんな一面があったとは。
そして、舞台は再度暗転して、ステージ風にチェンジした。
【♪~】
これ、デザイアーじゃないか?
デザイアーと言っても、曲の事だ。
デザイアーがデザイアーを歌うのかよ!
『あっ、デザイアー!』
『髪も衣装もそのまんまデザイアーだ!』
『何か…中森明菜に似てないか?』
『似てるかも』
おかっぱ頭に和服をアレンジした衣装。
あのデザイアーが、中森明菜のデザイアーを歌っている。
しかも、ソックリだ。
「おい、まるでモノマネしてるみたいだな」
謙司が言うように、モノマネグランプリでも見てるようだ。
「いや、モノマネというか、本人が乗り移ったみたいじゃね?」
うん、チャッピーの言うように、本人が乗り移ったかのようだ。
「驚くのはまだ早いわ。これからが見ものなの」
まだ、何かあるって言うのか?
デザイアーを歌い終えると、デザイアーは(ちょっとややこしい)着ていた衣装をバッと取った。
「えーっ!あの格好は!」
あれは泰彦が好きな、森高千里の衣装だ!
ブルーを基調にして赤のラインの入ったマーチングバンド風の衣装にミニスカ。
しかも、本家に負けじ劣らずの脚線美!
「恵、あんなにスタイル良いのか…」
優季が思わずため息をつくほどで、水泳で鍛えられた身体はモデルのように均整のとれたプロポーションだった。
すると次の瞬間、デザイアーは口元に笑みを浮かべ、トレードマークのおかっぱ頭に手をやった。
「えっ?」
「マジで…?」
「ウソっ!!」
「あれは一体…」
「えっ、どういう事?」
何と、デザイアーのおかっぱ頭はヅラだった。
デザイアーはおかっぱ頭のヅラを取ると、背中まである、茶髪のロングヘアをなびかせていた。
「あれがホントの姿なのかっ!」
「森高よりもいいかも…」
泰彦の目が変わった。
「そう、あれが本当の恵なの」
片野はそれを見越していたのか…
森高になりきって、デザイアーはステージを所狭しと動き回り、歌った。
ホントにアイドルみたいだ…
デザイアーの一挙手一投足に視線が注がれる。
「オレの役は完全に消えたな…」
龍也は唖然としている。
もう、全校生徒はデザイアーのインパクトしか目に焼き付いてないだろう。
デザイアーは声援を受け、楽しそうに歌った。
「ありがとうございましたっ!」
歌を終え、デザイアーは客席に向かって頭を下げた。
『いいぞ、森高!』
『キレイ~っ!』
『オレ、ファンになるぞ!』
やんややんやの大喝采だ。
かくして、オレたちの劇は幕を閉じた。
勿論、一番良かった催し物はオレたちの劇だった。
「やったぜ~っ!オレたちが一番だ!」
「バンザーイ!」
「いや~、サイコーだね!」
「あれっ、龍也泣いてるの?」
ウソっ!
「バ、バカ!ンなワケねぇだろ!」
目が真っ赤だぞw
でも、それだけ頑張ってきた証拠だ。
「よし、終わったら打ち上げやろうぜ!」
「いいねぇ、打ち上げ!」
「でも、またデザイアーが暴れないかな?」
「じゃあ、甘酒も奈良漬けも禁止という事でw」
良かった、良かった。これでようやく終わった…
「あの…ちょっといいかしら」
ん?
担任の佐伯が手を上げてる。
「先生、どうしたの?」
佐伯もチョイ役で出てたのを忘れてた。
「先生の芝居は…どうだったかな?」
えーっ?先生の演技かよ?
「どうって…片野、どうだった?」
片野も答えづらそうだ。
何せ、佐伯はちょっとしたセリフでも、しどろもどろになって、大変だった。
「あの…先生の演技は…ごめんなさい、先生を選んだ私が悪かったです、はい!」
『ギャハハハハハハ!』
どういう意味だったかは、ご想像にお任せします。
さて終わったし、早く帰ろうぜ!
セリフはちゃんと言えただろうか?
演技は大丈夫だっただろうか?
そればかり気になっていた。
袖に引っ込んで、後は皆の芝居を見るだけ。
「山本くん、お疲れ様。大分緊張してたね」
「オレ、大丈夫だったかな…」
「ドンマイ!」
え…ドンマイって…
あっ、そうだ!それよか、デザイアーの事だよ!
「片野!さっきの話だけど、デザイアーの本来の姿って、どういう事なんだ?」
片野は袖から舞台を見ながら話をした。
「小学校の2年生になった頃だったと思うけど、あの子今はああやって真っ黒な髪にしてるけど、地毛は茶色いのよ。それで、担任の先生に【何で茶色くしてるの、黒く染めなさい!】って言われて、何度もこれは地毛だって、お母さんも一緒になって説明したんだけど、聞き入れてくれなくて…
それで、他の子達からも【茶色に染めてる】ってイジメられるようになって…それまでは、明るくていつもニコニコしていたのが、徐々に暗くなって、髪も同じように暗く染めて、いつしか話し方もあんな風になっていって…」
知らなかった…元々ああいう感じなのかと思っていたのだが、違ってたのか。
何だか、可愛そうだ。
コミュ障になったのではなく、ならざるを得なかったなんて、あまりにも悲しすぎるじゃないか!
「だからね、恵の本来の姿を知ってもらうには、ああやって主役にするのがいいと思ったの」
確かに今のデザイアーを見て、あれが本来の姿と言われれば、そうなのかなと思ってしまう。
しかし、あんな一面があったとは。
そして、舞台は再度暗転して、ステージ風にチェンジした。
【♪~】
これ、デザイアーじゃないか?
デザイアーと言っても、曲の事だ。
デザイアーがデザイアーを歌うのかよ!
『あっ、デザイアー!』
『髪も衣装もそのまんまデザイアーだ!』
『何か…中森明菜に似てないか?』
『似てるかも』
おかっぱ頭に和服をアレンジした衣装。
あのデザイアーが、中森明菜のデザイアーを歌っている。
しかも、ソックリだ。
「おい、まるでモノマネしてるみたいだな」
謙司が言うように、モノマネグランプリでも見てるようだ。
「いや、モノマネというか、本人が乗り移ったみたいじゃね?」
うん、チャッピーの言うように、本人が乗り移ったかのようだ。
「驚くのはまだ早いわ。これからが見ものなの」
まだ、何かあるって言うのか?
デザイアーを歌い終えると、デザイアーは(ちょっとややこしい)着ていた衣装をバッと取った。
「えーっ!あの格好は!」
あれは泰彦が好きな、森高千里の衣装だ!
ブルーを基調にして赤のラインの入ったマーチングバンド風の衣装にミニスカ。
しかも、本家に負けじ劣らずの脚線美!
「恵、あんなにスタイル良いのか…」
優季が思わずため息をつくほどで、水泳で鍛えられた身体はモデルのように均整のとれたプロポーションだった。
すると次の瞬間、デザイアーは口元に笑みを浮かべ、トレードマークのおかっぱ頭に手をやった。
「えっ?」
「マジで…?」
「ウソっ!!」
「あれは一体…」
「えっ、どういう事?」
何と、デザイアーのおかっぱ頭はヅラだった。
デザイアーはおかっぱ頭のヅラを取ると、背中まである、茶髪のロングヘアをなびかせていた。
「あれがホントの姿なのかっ!」
「森高よりもいいかも…」
泰彦の目が変わった。
「そう、あれが本当の恵なの」
片野はそれを見越していたのか…
森高になりきって、デザイアーはステージを所狭しと動き回り、歌った。
ホントにアイドルみたいだ…
デザイアーの一挙手一投足に視線が注がれる。
「オレの役は完全に消えたな…」
龍也は唖然としている。
もう、全校生徒はデザイアーのインパクトしか目に焼き付いてないだろう。
デザイアーは声援を受け、楽しそうに歌った。
「ありがとうございましたっ!」
歌を終え、デザイアーは客席に向かって頭を下げた。
『いいぞ、森高!』
『キレイ~っ!』
『オレ、ファンになるぞ!』
やんややんやの大喝采だ。
かくして、オレたちの劇は幕を閉じた。
勿論、一番良かった催し物はオレたちの劇だった。
「やったぜ~っ!オレたちが一番だ!」
「バンザーイ!」
「いや~、サイコーだね!」
「あれっ、龍也泣いてるの?」
ウソっ!
「バ、バカ!ンなワケねぇだろ!」
目が真っ赤だぞw
でも、それだけ頑張ってきた証拠だ。
「よし、終わったら打ち上げやろうぜ!」
「いいねぇ、打ち上げ!」
「でも、またデザイアーが暴れないかな?」
「じゃあ、甘酒も奈良漬けも禁止という事でw」
良かった、良かった。これでようやく終わった…
「あの…ちょっといいかしら」
ん?
担任の佐伯が手を上げてる。
「先生、どうしたの?」
佐伯もチョイ役で出てたのを忘れてた。
「先生の芝居は…どうだったかな?」
えーっ?先生の演技かよ?
「どうって…片野、どうだった?」
片野も答えづらそうだ。
何せ、佐伯はちょっとしたセリフでも、しどろもどろになって、大変だった。
「あの…先生の演技は…ごめんなさい、先生を選んだ私が悪かったです、はい!」
『ギャハハハハハハ!』
どういう意味だったかは、ご想像にお任せします。
さて終わったし、早く帰ろうぜ!
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