41才の中学二年生(改訂版)

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第2章

野球やろう!

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徳を積む…

そもそも徳とはなんなんだ?

品行方正、他人を思いやる気持ちを持ち、誰からも尊敬される人物にでもなれというのか?


聖人君子じゃあるまいし、そんな事無理に決まってる。


クソっ、これじゃ当分の間、元の世界に戻るの事は出来ないのかよ。

それならば、といかにして中2ライフを楽しく過ごすか、それを考えなきゃならん。


楽しい中2ライフねぇ…

何だろ?



「あら、元の世界に戻るのは諦めたの?」


「何だよ、新人」


お前が何で天界にいるんだよ。

そもそも、コイツ能力あるのかよ?

あのジジイだって、少しは能力あったのに、コイツは何にも無い。

ド新人だからまだ無いのか。


「能力なら、私だってあるわよ!」


「…どうせ、大した能力じゃないだろ」


コイツよりも、あのバカ犬だ。



ポメ夫は以前、散歩に連れていくと、必ず困った人に出くわす。

それを手助けして、徳を積んでいた。

あれがヤツの能力か…


となると、また家でポメ夫を飼って、朝夕の散歩に連れていくとするか。

うん、これなら1日も早く徳を積んで現代に戻れる。


「ちょっと、私の能力見たいと思わない?」


「思わない!」


コイツなんかに構ってるヒマは無い。


「何よ、新人だからってバカにしてるの…」

「そう、してるの!」


ジャマだ、コイツは!


そうと決まれば、今日は早く帰ろっと!


「おい、ポメ夫!何処行った?」

さっきまで教室にいたのに、何処行きやがったんだ?



「おーい、ポメ犬!」


廊下に出て、ポメ夫を探した。


「おい、アホ犬!いたら返事しろっ!」


【シーン】


何でいつも、肝心な時にいないんだ、ったく!


【おおーっ!スゲーぞ、この犬!】


ん?校庭が騒がしい。


外に出てみた。


「あっ、あんなとこにいやがった!」


ポメ夫はサッカー部の部員とボールでジャれていた。

しかも、犬の分際でリフティングなんかやってやがる。



「リフティング出来る犬なんて、滅多にいないぞ!」


「この犬、どっから来たんだ?」


「ウチで飼おうかな、可愛いし」


オイオイ、その犬は可愛くも何ともないぞ…


ポメ夫はボールを転がして遊んでいる。


「おい、ポメ夫!帰るぞ!」


ポメ夫はシカトして、ボールに夢中だ。



「あ、智!お前、練習サボるのかよ!」


「智、何やってんだよ!早く着替えて来いよ!」


泰彦や謙司にゃ悪いが、今日はそれどころじゃないんだよ!


「いや…何か急に腹が痛くなって…ヤベーな、給食があたったかな…」


腹を押さえ、苦しそうな演技をした。


「お前、いつもそんな事言ってサボってるじゃないかよ!」


…さすがに毎回、腹痛は通用しないか。


「智、練習しようぜ!今度の試合、オレたち補欠も出れるみたいだから、やろうぜ」


謙司もオレと同じDFで、しかも補欠だ。


コイツはオレよりサッカーがヘタで、リフティングすら、まともに出来ない。

ボールを蹴れば、とんでもない方向へ行くし、そのせいで何度もオウンゴールを決めるという、不穏なヤツだ。



オレはやればレギュラーになれる自信はある。


だが、サッカーというものに、今一つ真剣になれない。


野球をやってた時は、朝から晩までひたすらバットを振って、ボールを追い掛けてた。


あの頃みたいに、夢中になれない…

ケガをして断念したけど、また野球やろうかな…


オレにはサッカーは向いてない。


どうも、ヤル気が起きない。






「だったら、今から野球部に入部するポメ」


「どっから持って来たんだよ!」


さっきまでサッカーボールで遊んでいたのに、口には野球のグラブをくわえていた。


「お前は今すぐサッカー部を辞めて、野球部に入るんだポメ」



「…その方がいいのかな、ポメ夫」


「そうだポメ。自分に向いてない事をするより、自分に合ってる事をした方がいいに決まってるポメ」


あのケガ以降、視力は落ちているが、メガネやコンタクトをすれば、問題は無いだろう。

後はブランクをどうやって埋めるか…

埋めるも何も、その為にはひたすら練習しかない。



オレにとってサッカーは、野球から逃げる為のカムフラージュに過ぎなかった。


それじゃ、真面目にサッカーをやってる泰彦や謙司にも失礼だ。


よし、決めた!

オレはまた、野球をやろう!


「やるよ、ポメ夫。オレは野球をやる」


「そうだポメ」


オレはサッカー部の連中に頭を下げ、退部する事を告げた。


「智、お前野球やるのかよ?」


「悪いな、泰彦。オレ、やっぱり野球の方が好きだ」


しょうがねえな、という顔で泰彦は頷いた。


「結局、ユーレイ部員だったな、お前はw」


謙司も仕方ないという表情だ。


「悪かった。今度の試合頑張れよ!」


「わかったよ」

「オレ、レギュラーになってやるから!見てろよ、智」


「あぁ、頑張れよ」

謙司はオレがいない方がいい環境になって、サッカーが上達するんじゃないだろうか…

コイツを道連れによく練習をサボっていたが、本心はサボりたくなかったのでは…



だとしたら、随分と申し訳ない事をした。


これでいいのかもしれない。

オレは野球、泰彦と謙司はサッカー。

道は別れたが、お互い頑張ろう。


「よし、今から野球部に入部するポメ」


「あったりめーだろ!行くぞポメ夫!」


ポメ夫を連れ、野球部の部室に行った。
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