41才の中学二年生(改訂版)

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梅が教師

アイツらの学力を上げるには

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「ちょっとアンタ、部長から私の年齢聞き出したんだって!」


「ん?」

背後に梅が立っていた。

今は誰にも見えないバージョンなのだろうか。


て事は、こんな所で迂闊に話すと、また周りから変な目で見られる。


「ちょっと来い」

梅の手を引いて教室を出た。



屋上なら誰もいないから、気兼ねなく会話が出来る。


「あのバカ犬はお前の年齢を言わなかったよ。何せ、個人情報保護法だとかで言うと罰せられるらしいって」


「部長がそう言ったの?」


「なら、バカ犬に直接聞いてみろよ」


「あー、良かった」

「でも、天界の元号の事は聞いたぞ」

梅の表情が強ばった。


「え…まさか…」

「お前の年齢を聞くことは出来なかったけど、元号に関してはすんなりと教えてくれたぞ」


「て言うことは…今の元号も知ってるって事?」


「勿論そうだよ」

すると、梅はアタフタし始めた。


「ね、ねぇ、それまさか皆の前で…」

「言わねぇよ!」


言っても、誰も信用しないだろうし。


「ホントにホント?」

「しつこいな、言わねえったら言わねえよ」


アイツらの夢を壊してはいけないしな。


「どうしたの、一体?」

梅はまだ疑っている。

「サンタクロースを信じている子供達にホントの事をバラすような、不粋な事はしないよ」

「何それ?」

「物の例えだよ」

せっかくアイツらが勉強をやる気になってるのに、そんな事は言えない。

これがもし、タイムスリップしてない中2のままのオレだったら、絶対にバラしてただろう。

オレはなんてったって41才だからな。

そこら辺は大人の対応をするべきだろう。


「へー、随分と大人になったのね、あなた」

「元々大人なんだよ。身体は中2、心は41才。人呼んで、山本智見参!」

「人呼んでって、本名じゃないの!コナンみたいな事は言わないの!」

前にもこんな事言ったような…


ただ、1つ懸念するのは、佐伯が退院すると梅は御役御免となる。

佐伯に戻ったら、アイツらは勉強するのを止めるんじゃないかと。


かと言って、佐伯にこのまま入院してくれってワケにはいかないし…


どうしたものか。


「梅、お前は佐伯が戻ってきたら、教師は終わるんだろ?」


「んー、そういう事になるわねぇ」


「そうか…」


「どうしたのよ、一体?」


「もし、佐伯が戻ってきても、お前が教師続けられるような状況にならないもんかな?」


何だかんだ言っても、梅がアイツらの学力を向上させる要員でもあるワケだし。


「えー、どうしたの?まさか、私に教師続けて欲しいって事?」

「んー、まぁそういう事なんだが」


本来なら、コイツなんぞさっさと消えて欲しいんだが、アイツらにとっては梅はアイドルみたいなもんだし。

…まぁ、見た目も年齢も偽ってるんだが。


「いいでしょ、偽っても!」

また心の中を読みやがったな。


「お前の力で、佐伯が戻ってきても、この学校に残るようにならないのか?アイツらはお前のお陰で勉強するようになったんだし」


「そう言えばそうね。特に牛島くんと金澤くんは真面目に授業を受けてるし」

「だろ?佐伯が戻って、お前が学校を去ったら、アイツらはまた勉強しなくなると思うんだ」


うーん、と梅は腕を組んで考え込んだ。


「ポメ夫に頼んで、お前が学校に残るようにならないのか?」


「部長にそんな能力があるのかなぁ」


「だって、あのバカ犬がお前に臨時教師やるように指示したんだろ?」


「そうなんだけど、あくまで臨時だからね」

「なら、オレがバカ犬に頼み込んでみる」

「部長に言ってもムダだと思うけど」

やっぱりムリか…

!いや、一つだけ方法がある。


「梅!」

「だからサヤカと呼んでって言ってるでしょ!」

いつまでこだわるんだ、その名前に…

「そんな事はどうでもいい!佐伯は2学期中に戻ってくる事は無いと思うから、それまでの間にアイツらの学力を上げるよう努力してくれ!」

「そりゃ、学力を上げるようにするのが教師の務めだけど」

「そうじゃない、お前がアイツらの学力を底上げ出来れば、お前は臨時教師の期間を延長出来るだろ」

「そうか!そうなれば、私の評価が上がって、この学校に残る事が出来るわね」

「そういう事だ」

佐伯が戻ってくるまでの期間、何としてでも結果を残さないと。


「じゃあ、全力で取り組んでみるかな」

「オレもできる限る協力するから」

「じゃあ、頑張って偏差値アップしてね」

そうなるよな…仕方ない。

でも、どうやったらアイツらの学力が短期間でアップ出来るか。


「となると、何らかのモチベーションが無いと、そう簡単に短期間で学力がアップするなんて、難しいだろうな」


梅は得意気な顔で、とっておきの秘策を教えてくれた。


「えぇーっ!!そんな事して大丈夫なのかよ!」

「任せて!絶対にあの子達の学力がアップするから」


ホントかよ…
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