41才の中学二年生(改訂版)

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楽しい中2ライフ

1991年

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年が明けて1991年になった。

正月と言っても特に何もやる事はない。


宿題はまだ何もやってない。


勉強するって気分じゃないしな。

じゃあ、素振りでもしようか…

いや、さすがに正月は休もう。


ならばゲームか。

この年代のゲームは散々やったし、今のオレには懐かしさしかない。

いくら最新と言われても、もっと最新で高度なゲームをやっていたから、子供騙しみたいなゲームにしか感じない。



あぁ、ヒマだ。

ふと横を見ると、ポメ夫はいつものようにベッドでひっくり返ってグーグー寝ている。


…コイツが羨ましい。
こんなに何時間も寝れるなんて。

他にやる事は無いのか…



「今日は晩御飯いらないから。それじゃ行って来まーす!」

ドアの向こうでは、アネキの声がする。


この頃、オトコを取っかえ引っ変えしていた。

まだJKの分際でアッシーくんや、メッシーくんなんてのもいた。



まだバブル崩壊前だから、浮かれているんだろう。


バブル崩壊と同時にアネキのオトコ遍歴も落ち着いた。


アネキは高校を卒業すると、女子の短大に入学してその後は一般企業に就職する。


28才の時、職場の上司と結婚。

1女1男の母になる。


この長女がクソ生意気なんだよな。


「オジサン、ママに聞いたけど、私と同じぐらいの年は全く勉強出来なかったんだってw」


事ある毎にオレをdisってきやがる。

それもこれも、アネキが余計な事を吹き込むからだ。


阿莉砂はパパっ子だから、そんな長女の事を嫌っている。


「パパ、私あの人嫌い!だってパパの事バカにしてるんだもん」


阿莉砂はいい子に育ってくれた。




そんないい子と会えるのはいつになるのやら…





いや、そんな事を考えても仕方ない。

オレは決めたんだ。今を楽しもうと。


いずれ、元の世界に戻るだろう。

その時にここで悔いのない生活を送ろうと決めたんだ。




居間でおふくろの声がした。

「智、電話よ!」



電話?一体誰だろう?


「誰から?」

どうせまた龍也達だろう。


「アンタ綾坂先生って、佐伯先生の代わりに国語の授業やってる先生だっけ?」

ん、梅から?

何で梅がオレの家に電話かけてくるんだよ。

イヤな予感がする。


受話器を取った。


「はい、もしもし」

【ねーねー、ヒマでしょ?】


第一声がそれかよ!


「ヒマじゃない、切るぞ」


【わー、ちょっとちょっと待った!】


「何だよ、一体?」


【ほら、前に私の家見てみたいって言ってたでしょ?良かったら、今から来ない?】


「は?」

【いや、だから家に来ないって言ってるの。どうせヒマなんでしょ?】


そんな事で電話掛けてくるなよ。

話なら、直接オレの心に話せばいいのに、何でまた電話なんて…


「じゃあ、今から龍也達に行けるか聞いてみるよ」


【あぁーっと、今日は金澤くん達は呼ばなくていいかも…】

ん?一体どういう事?


「何だよ、アイツら呼ばくていいのかよ?」


【うーん、ちょっと…ね。で、どうする?来るの、来ないの?】


何、この彼氏彼女みたいな会話は?


「そもそも、オレ一人で行って何するんだよ?」


【いや、ほら!そうだ、私がご飯作るから食べに来ない?何か食べたいのあるでしょ?】


龍也達は、梅が作る料理は美味いって言ってたっけ。


「イカスミパスタとか、そんなのも大丈夫なの?」


【うんうん、任せて!どう、来る?】


何か企んでないだろうか?


「つーか、本来の目的は何だよ?」

オレ一人ってのが引っ掛かる。


【いや、何もないのよ…ただ、この前呼ばれなかったから、呼んでみようなかぁって】


「それは、オレがテストで90点取れなかったからだし、約束は約束だろ?」


【んー、まぁいいじゃん!ね?】


「ったく…オレはそういう抜け駆けみたいな事はしたくないんだよ」


【いいじゃないの、黙っていれば判らないんだし、ねっ】


「ホントの理由は何?」


【何も無いわよ!ただ呼んでみたかっただけだってば】


どうすっかな…

ヒマだしなぁ。

その前にポメ夫にも聞いてみるか。


「とりあえず、ポメ夫にも聞いて何の問題も無かったら行くよ」


【えっ!ちょ、ちょっと待ってよ!何で部長に聞くの?これは個人的な事なんだし、部長には関係無いでしょ!】


…怪しい!


「個人的な事なら、別に今じゃなくても、学校で話せばいいだろ。それに、話だけならオレの心の中で会話出来るだろ」


【もう、それだけじゃ伝わらない話もあるでしょう!】


「わかったわかった!じゃあこれから行くよ」


【ホント?じゃあ待ってるね】


【ガチャっ、プープープーっ…】


何だコイツ、すぐに切りやがって!




「オレ、これから出掛けるから」

居間でテレビを観ていたオヤジとおふくろに声を掛けた。


「何だ、これからかよ。先生から電話があったって事は、お前また何かやったのか?」


「しかも、正月に電話がくるなんて、よっぽどの事をやったんでしょ?」


ただでさえ、どうしようもないバカ息子だと思われてるのに、これじゃ何も言えないじゃないか!


「違うよ、先生が特別に勉強を教えてくれるって、オレたちに連絡してきたんだよ!」

嘘も方便だ。


「あら、こんな時に勉強を教えてくれるって、いい事じゃないの!行ってらっしゃい!」


「そうだ、さっさと先生のとこへ行け!」


…手のひら返しかよ!



かくして、オレは梅の家に行くのだった。
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