Baseball Love 主砲の一振り

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ペナントレース中盤

ヘラブナ釣りでヒントを得たタイミング

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ここは、千葉県と茨城県の県境に面した、利根川の土手だ。

数時間後には、川沿いにある球場【利根川バーチーヤンキースタジアム】にて、オールスター戦が開催される。

この球場はいつも、血気盛んな千葉ヤンキースのファンで溢れかえる。

勝てば盛り上がり、負けても騒ぐ。

決してマナーの良いファンではないが、ヤンキースを愛する気持ちは人一倍だ。

トーマスJr.は、利根川の土手を散歩していた。

のどかで癒される気分だ。


ピストルズの球場から見える富士山も綺麗で好きだが、この利根川の風景もお気に入りだ。

初めてこの球場に来た時から、利根川の風景に魅せられてしまった。

何だか、心が落ち着く。

トーマスJr.は、この球場で3本ホームランを打っている。

決して打者有利な球場ではないが、トーマスJr.にとって、この球場の雰囲気がとても好きだ。

ここでオールスター戦なら、ホームランを打てるんじゃないかなと思い、川を眺めながら歩いた。

すると、釣りをしていた老人がいたので、トーマスJr.は近くまで歩み寄った。

興味深く見ていると、老人はトーマスJr.を見て「シーっ」と口に指を立て、静かにというジェスチャーをした。

トーマスJr.は無言で頷いた。

老人はヘラブナ釣りをしている。

トーマスJr.には、この釣りのスタイルが珍しいみたいだ。

ルアーフィッシングなら何度もあるが、のべ竿で浮きを付けたスタイルの釣りは、アメリカにはない。

すると、浮きがチョンチョンと動いた。

(何だあれは…魚が引っ掛かっているのでは?)

トーマスJr.は、浮きを注意深く観察した。

老人は、竿を上げる様子はない。

(もう、針に魚が引っ掛かっているんじゃないのか…)

すると、浮きは一気に水面に沈んだ。

(あっ…)

老人はタイミング良く、竿を引き上げた。

水面で魚が跳ねる。

老人は、竿をゆっくりゆっくり上げながら、手元まで引き寄せ、網で魚を逃がさないよう捕らえた。

大きさにして、約30㌢程のヘラブナを釣り上げた。

「スバラシイ!Very good!」

トーマスJr.は拍手をし、ヘラブナ釣りに感心していた。

「タイミングね。グッドタイミング」

と老人は笑った。

(成程。日本ではこうやって釣るのか…これは面白そうだ)

タイミングか…浮きを見て、タイミングで釣り上げるのか。

(!?そうか、タイミングか!)

トーマスJr.は、何か思い付いたようだ。

老人に「アリガトゴザイマス」と言い残し、球場へ向かった。

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