The Baseball 主砲の一振り 続編1

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オープン戦

あくまでも調整の場

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【ヤマオカ監督、スカイウォーカーズに対して賞金マッチをぶち上げる!】


【まさかの賞金マッチ!スカイウォーカーズはどうでる?】




【ヤマオカ監督爆弾発言!スカイウォーカーズとの一戦は賞金を懸けよう!】


翌日のスポーツ各紙は一面でヤマオカ監督の発言を取り上げた。


スカイウォーカーズの球団関係者は困惑するばかりだ。


「面白えじゃん!」


この案に乗っかったのは監督の榊だ。


「さすが、ヤマオカのとっつぁんだぜ!
オレは大賛成だ!
しかも、ウチはケンカを売られたんだぜ!
このケンカ、買わなきゃ損だろ!
やっぱり、戦いってのはこうでなきゃ」


とコメントした。



とは言え、榊の一存だけで決まるものではない。


オーナーを含めた球団関係者がどのような判断をするのか。



「ヤマオカさんは発言が過激過ぎるなぁ…
確かに、賞金を懸ければ選手は目の色を変えて必死にプレーするけど、こんな事が許されるはずも無いでしょう」


GMの高梨は苦言を呈した。



スカイウォーカーズのオーナー、阿佐勃郎は


「ムヒョヒョヒョヒョヒョ!
賞金を懸けるというのかぬ?
面白い話だとは思うが、我々だけでそんな事をすれば他の球団は黙ってないと思うんだがぬ。
あちき的には、問題ないと思うんだがぬーーーーん!」


と概ね賛成の意見だ。


「ただでさえ、高額な年俸を貰ってるのに、賞金を懸けるなんてナンセンスだ!」


「何を言ってるんだ、あの監督は!
こんな事が許されるはずも無いだろ!
全く、あまりにもバカげてる!」


「何を言うかと思えば…十分過ぎるぐらいの金を得てるのに、これ以上金を得るというのか?
そんな事をするならば、ファンにも幾らか還元したらどうなんだ?」


「コメントするに値しない話だ」


各評論家は挙って猛反対した。



日本プロ野球機構は査問会を開き、張本人でもあるヤマオカ監督を呼び出し、取り調べを行った。


ヤマオカ監督は、低迷するプロ野球人気に一石を投じる案だとして主張。


査問委員会はヤマオカ監督に罰金200万を課した。


賞金マッチは現段階では非常に難しい状況だ。




その名古屋99ersは、こけら落としの名古屋99ドームで東北マーリンズとの一戦が行われた。


55000人という、日本最大の観客数を収容する球場には、オープン戦だというのに超満員に膨れ上がった。


99ersは3番比嘉、4番風間、5番外崎という破壊力抜群のクリーンナップを形成。


試合は外崎のオープン戦1号のツーランが飛び出し、投げては三番手に登板した那須川が3回をパーフェクトに抑え、3対1で勝利した。



試合後、ヤマオカ監督は


「賞金マッチの件は諦めてない。
ウチのオーナーとスカイウォーカーズのオーナーが会談して、上手くまとまれば決して不可能では無い」


とコメント。



近々両チームのオーナーが話し合いの場を設ける予定だ。




その渦中のスカイウォーカーズは、本拠地で北九州ドジャースとのオープン戦を行う。


注目の財前は今日も3番センターで出場。


打席では一度もバットを振らない財前だが、本人はそんなことはどこ吹く風とばかりに、唯我独尊を貫く。


「財前くん」


試合前、櫻井は財前を呼び寄せた。


「あぁ?」


相変わらずの奇抜なスタイルだが、チームメイトは毎日見ているせいか、徐々に慣れてきた。


「今日こそはバットを振るんだ」


「またかよ…オレはオレのやり方があるんだ!
開幕にはキッチリ間に合わせるから、黙って観てろっつーの!」


「そうはいかない、これはコーチ命令だ!
いいか、必ずバットを振るんだ」


険しい表情で言い放つ。


「何でそんな事を指図されなきゃなんないんだよ!
バットを振ろうが振るまいが、オレの勝手だろ」


「はぁ…ダメだな、こりゃ」

呆れて物も言えない。


「ヒロト、ほっとけ!」


榊が間に入った。


「しかし…」


「いいから、コイツのやりたいようにやらせよう」


「さすが、監督だ。
アンタも少しは見習ったらどうなんだ?」


「お前は黙ってろっ!!!」


「…っ!」

榊の大きな声がベンチに響き渡る。


「財前…テメー、シーズン入って不甲斐ない成績だったら…オレぁ、テメーを野球出来ない身体にしてやるからな」


ズイっと近寄り凄んだ。


「へっ…そんな心配すんなよ、カントクさん。
オレは開幕に併せて仕上げてくるから、安心しな」



 結局、この日もバットを振らなかった。




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