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退屈な高校の授業

オヤジに殴られた

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その夜。

僕はオヤジが帰って来てすぐに、編入したい気持ちを伝えた。

「あのさぁ、オレ編入して他の高校に行きたいんだけど…いいかな?」

するとオヤジは振り向きざま、右の拳で僕の顔面を捕えた。

【ボコッ】

「ふざけた事をぬかすなっ!あっちがダメでこっちにするだと?ならば今すぐ辞めろ!」

物凄い形相で言い放った。

高校も何とかオヤジに頼み込んで入れたようなものだ。

それが、入学して僅か数日で他の高校に行きたいなんて、ムシが良すぎると思ったのだろう。

「痛ってーな!あんな学校に居たら、何もヤル気が起きねーんだよっ!」

オヤジに食ってかかる。

「何の為にお前を高校に入れたと思ってんだ!高い金払って、すぐに他の高校に行くだと?
ふざけた事を言うな、このバカが!」

「お父さん、もう止めて!」

オフクロとアネキに制止され、オヤジは殴ろうとしたのを止めて風呂場に向かった。

「貴久、アンタが悪いんだからね!ちゃんと勉強しないから、あんな高校に行くようになったのよ!」

アネキは僕の口元をティッシュで拭いた。

口の中が切れて血が出ていた。

鉄のような味が口中に広がる。

「貴久…お父さんああ言ってるから、あの学校でいいじゃない。
アンタは真面目に通ってちゃんと勉強すれば、いい大学に入れるんだから」

オフクロも結局、オヤジの言う事に従うしかない、という言い回しをした。

(冗談じゃねぇぞ、あんな学校で腐ったまま3年も通えるかっ!)

その夜、僕は康司の部屋に行くと言って外へ出た。

近くにオープンしたばかりのファミレスに入り、少しアルコールの入ったシードルという、林檎の炭酸を飲んで時間を潰した。

(くそっ、何なんだあのバカオヤジ!いきなり殴りやがって!そんなに言うなら辞めてやらあ!)

僕の中で【中退】という2文字が浮かんだ。


高校を辞めて大検を合格したら、大学に行こう!

でも待てよ…大検て、かなりハードルが高いんじゃないか?

そう考えると、わざわざ遠回りする必要も無いだろう。

色んな事が頭の中を駆け巡り、結局考えがまとまらずに、S学院に行くしか無いという結論になった。

(どうせ勉強なんて、する気も起きねえからな。ただ毎日通ってりゃいいと言うなら、そうしてやるか)

ファミレスを出て深夜にコッソリと戻り、物音を立てない様、部屋に入るとソッコーで寝た。

翌朝、口元に絆創膏を貼りながら、眠い目を擦りつつ駅に向かった。

定期を見せ、改札口を通る。

すると

「小野っち!」

駅の反対ホームに杉下が立って、手を振っていた。

あれ?あぁそうか、中学の時とは違う制服だもんな。

見慣れないブレザーの制服を着ていた杉下は、大人びた感じに見えた。

それに引きかえ、僕の制服は中学の時と同じ学ラン…

杉下だけが変わり、僕は相変わらずの格好でいるのが恥ずかしく感じる。

(だからイヤなんだよ、学ランは!)

僕は反対ホームに目を背け、タイミング良く着た電車に乗った。



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