上 下
91 / 124
退学届け

酒の勢いで思わず…

しおりを挟む
どのくらい店にいたのだろうか。

姉は一向に目を覚ます気配が無い。

「参ったな…あんまり遅くなるのもマズイし…おーい、起きろ!そろそろ帰るぞ!」

パンパンと姉の頬を叩いた。

「ん…あれ?何で、アタシ寝てんの?」

「祐実センパイ、そろそろ帰りましょう。歩けますか?」

波多野が姉を起こす。

「ん…何か…頭がグヮングヮンする」

ハァ…まだ酔いが覚めないか。

「ダメだこりゃ」

ダメだこりゃって、いかりや長介じゃないか…

こうなりゃ、姉を背負って帰るしかない。

「すいません、いくらですか?」

姉を背負いながらレジで会計を済ませた。

「ご馳走様でした」

「オバサン、ゴメンさない。今度はお酒頼まないから」


オバサンは姉を見て苦笑する。


「はぁ~い、気をつけて帰るんだよ!」

僕らはオバサンに頭を下げて店を出た。


「小野っちご馳走さま。今日はケッコーお金使ったんじゃない、大丈夫?」

喫茶店で5000円程飲み食いしていたとは…

そこまでお金使わないよ、フツーは!


「まぁいいよ…今回はオレのせいでこうなったワケだし」

姉を背負いながら、少し寒くなった夜道を歩いた。

しかし…姉のオッパイが背中に当たって、ちょっと複雑な感じだ。

ヤバい!姉の身体で興奮なんかするな!

しかし、背中に当たるオッパイの面積が…

姉も大きいんだな…波多野と同じかそれ以上か…

そう考えると酒のせいか、イヤらしい事しか頭の中に浮かばない。

(バカ!アネキ相手に興奮してどうする?)

自分に言い聞かすが、背中の感触が気になって仕方ない。


全神経が背中に集中する…

「はぁ~、何か気持ちいい…飲んだ後に外出ると、ヒンヤリして気持ちいいよね」

【気持ちイイ】って言葉が頭の中に残り、抑えきれない程ムラムラしていた。

「波多野…」

「なに?」

思わず僕は、片手で波多野の胸を掴んだ。

「ちょっと、何するのよ!」

「ちょっとだけ、ちょっとだけ触らせて!」

「何言ってんのよ、祐実センパイ起きちゃうよ!」

「だから、ちょっとだけでいいから」

立ち止まり、波多野の胸をしばらく触っていた。

波多野は俯いて無言のままだ。

いくら酒のせいとはいえ、よくやったもんだ…

(あぁ~、いい感触だ!オッパイばんざーいだ!ワハハハハ!)

波多野の胸を触りたくなったが、実際に行動に移すとは、我ながら大したもんだ。

姉の胸を背中で感じ、掌で波多野の胸の感触を味わい有頂天に…

…勿論、股間はMAX状態だ。

「小野っち、もういいでしょ?早く行こう…」

波多野が照れた表情で歩く。

僕は姉を背負って後ろを歩く。

すると波多野は後ろを振り向き、真顔で口を開いた。

「小野っち…ホントに学校だけは卒業してね。アタシも、小野っちが高校辞めるなんてイヤだから…だから、頑張って卒業しよう?」

僕を見る波多野の顔は、幾分女らしさを増したように感じる。

「あ、うん。約束したから、卒業するよ」

さっきまで胸を触ってムラムラしていたのに、今は波多野の顔を直視出来ない程恥ずかしくなる。

「そうだ!渋谷に行くって言ったのに中々行けないから、次の休みに行かない?」

「えーっと、うん。じゃあ、次は渋谷に行こう」

照れ隠しに空を見上げ、三日月を眺めながら返事した。

「…にしても中々起きねえな、アネキは」

姉はまだ寝ている。

段々と姉の身体が重く感じてくる。

「このまま帰って何も言われない?」

「オレはいいとして、アネキはずーっと寝てるからね。そろそろ起きて歩いてもらわないと」

「祐実センパイ、そろそろ起きて下さい!」

姉の耳元に近づけ、大きめの声で起こした。


「あれ…何、何でアタシおんぶされてるの?」


状況が把握出来てないらしい。

「アネキ、歩けるのか?」


「えっ、あぁ…うん、大丈夫…」


姉を降ろした。

「大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫!歩いていけるから問題ないよ」

酔いは覚めたみたいだ。

「もう大丈夫みたいだね。アタシ、ここでいいから。小野っち、明日からちゃんと学校に行ってね。祐実センパイまた会いましょう、それじゃまたね!」

「慶子ありがとー!また会おうね、おやすみー!」

「ありがと、またねぇ&おやすみ!」



家の近くで波多野に手を振って別れた。

姉と二人で夜道を歩く。

今までこんな場面があっただろうか?

どこかギクシャクする。

「ねぇ貴久…」

「ん、なに?」

「お姉ちゃん、貴久が高校行きたくないって気持ち解るよ…」

「ホントかよ?」

「うん。でも学校なんて何処も一緒だよ、楽しい学校なんて、中々無いんだから」

「そんなもんかね~」

「うん…アタシだって、出来れば学校なんて行きたくないわよ」

「…」

「皆、同じ気持ちだと思うな…だから学校辞めたいなんて思うの、貴久だけじゃないのよ」

「解ったよ…とりあえず卒業はするよ」

「うん、これは絶対約束して!
勉強解んないとこがあれば、お姉ちゃんがちゃんと教えるから」

「大丈夫だって!勉強で落ちこぼれる事は絶対無い」

「だといいんだけどねぇ…あ!貴久、アタシお酒臭くないかな?」

「大丈夫だよ、ちょっとだけしか飲んでないし。
さあ着いた!もう今日はさっさと寝よう」

「…で、さっき慶子に何してたの?」

「…っ!!」

ビクっとした!まさか、あの場面で起きていたのか?

聞きたいけど、恐くて聞けない!

「ちゃんと慶子の事大切にするんだよ、解った?」

「…」

無言のまま家へ着いた…

まさか、バレてたのか?恥ずかしいなぁ!
しおりを挟む

処理中です...