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ようやく馴染んだ高校生活

渋谷のラブホ街

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行きの電車の中で、ここ数日学校で起きた出来事を波多野に話していた。

とりあえず仲間を作って、つまらない学校生活を少しでも良くしようという考えを波多野に話した。

波多野は「うんうん」とにこやかに相づちを打ちながら聞いてくれる。

「小野っちも学校で友達いっぱい出来れば、辞めようなんて思わなくなるよ」

波多野も僕の考えに賛成みたいだ。

渋谷に着き、スクランブル交差点を歩く。

「よくこんだけ人がいて、ぶつからないよな」

「小野っち、何だか田舎の人みたいだよ」

「そうかなぁ?」

一通り渋谷の街をブラブラ探索した。

特に何をするってワケではなかったが、とにかく渋谷周辺をグルグルと回った。

気がつくと、場所は道玄坂のラブホ街を通っていた。

意図的にこの場所に来たワケではなく、グルグル回ってるうちに、ホテル街にたどり着いてしまった。

急に無口になる二人…

どうしていいか解らなくなる。

「おい、あれ見ろよ!制服姿で入ってったぞ」

前方から制服を着たカップルがラブホに入っていったのを見て、隣にいる波多野に声を掛けた。

「ウッソ?制服で入っちゃうの?」

波多野は驚いた声を上げ、カップルの行動に釘付けになってる。

(どうする、オレらも入るか?いや待てよ、ここで拒否される事もあるだろう
そん時はどうする?行くか?止めるか?)

心の中でかなり葛藤していた。

波多野とホテルに入りたい。

しかし、断られたらどうしようか?

横目で波多野をチラッと見る。

波多野はこの場所が恥ずかしいのか、下を向いたまま歩いていた。

(あぁ、行きてえ!ラブホ入って、セックスしてぇっ!)

この事しか頭になかった。

何せ、ヤリたい盛りの15才。

僕の頭の中はそれしかなかった。

でもどうしようか?どうやって波多野を誘うか?

(ちょっとそこで休憩しない?)

いや、これはあまりもわざとらしい!

(波多野好きだ!だから入ろう!)

これもストレート過ぎて、波多野が引くだろう。

何かいい言い方はないものか?

さりげなく、そして拒まれない言い方を。

(浮かばねえ!何も浮かんでこねえ!どうしよう!)

何も思い浮かばず、ただウロウロとしているだけだった。

「小野っち…」

波多野が小さい声で呟いた。

「あ、うんナニ?」

「アタシね…」

「うん…」

(まさか波多野から入ろうって言うのか?)

「…トイレ行きたくなった…」

「はぁ?」

「いや…だからトイレないの、この辺に?」

さっきからトイレ行くのを我慢してたのかよ?

「あぁ…じゃあ、あの店に入ろう」

ホテル街から少し外れた喫茶店に入った。

(何だこの展開は…?ラブホ行けると思っちゃったじゃないかよ!)

僕の思惑は外れたが、波多野がラブホなんかに入るワケがないだろ!と自分に言い聞かせながら窓の外を眺めていた。

「ゴメンゴメン、急にトイレに行きたくなったから…」


「もっと早く言えば良かったじゃないか。そこまで我慢する事じゃねえだろ」

波多野が終始下を向いていたのは、ラブホに入る覚悟を込めていたのだと勘違いしていた。

「だって、中々言い出せなくって…」

僕も波多野にホテル入らない?って言い出せなかったが。

結局、渋谷界隈をプラプラとしながら帰路に着いた。

あぁ、いつになったら初体験出来るのやら…

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