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ようやく馴染んだ高校生活

ギターとバイク

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尾崎豊

僕らの世代では絶大的なカリスマで、彼の歌は悩み多き10代の代弁者として人気を誇った。

僕も尾崎豊の曲を聴き、【15の夜】や【17才の地図】等は僕と同じぐらいの年齢に作った曲で、こんな天才がいるのか?と衝撃を受けた。

歌詞の中に出てくる10代は自分を含め、ほとんどの連中が抱いていた気持ちなんじゃないか。

要領の良い優等生

綺麗事ばかりの偽善者

何もしない傍観者

そんなヤツラはくそ食らえ!的な歌で僕らの魂を揺さぶった。

(僕には理解者がいない…僕は独りなんだ。なのに僕は何故、色んなしがらみを持ちながら生きているんだ?)

そんな屈折した思いを抱えながら、尾崎豊の曲を聴いて自分の世界に浸っていた。

僕もこうやって音楽でストレートに自分の事を表現出来たらいいだろうなぁ、と思った。

すると、当然の如くギターが欲しくなる。

ああいう風にギターを弾いてみたい…


楽器が出来なきゃ話しになんないだろうと思い、放課後は楽器屋を見つけ出しては自分の予算に合ったギターを探していた。

ギターといってもフォークギターではなくエレキの方だから、楽器以外にもアンプやらチューナーやらが必要となってくる。

(流石に高いなぁ…)

僕は16になったらバイクの免許を取るつもりでいた。

ギターを買ったらバイクの免許に充てる費用が無くなってしまう。


バイクとギター、どっちを取るか散々迷ったが、ギターを買うのを断念した。


バイクとギター


高校生にとってはこの2つは無くてはならない程のアイテムで、ステータスの1つと言っても過言ではなかった。

バイクとギターがあるだけで、レベルアップしたかのような錯覚さえ感じた。

今思えば、なんで拘っていたのかよく解らないが、多分ファッションの1つだったような気がしてならない。

これといった取り柄の無い僕がバイクを乗りこなし、ギターを弾ければカッコいいだろうなという、単純な動機に過ぎない。

そう考えると、自分は単細胞だったなぁと思う。

でもこの頃って女にモテたいから、という単純明快な動機から始まる。

とにかく女にモテたい!

(テメーの顔を鏡に映してみろ!何がモテたいだ!この面で女にモテると思ってるのか、バーカ!)

鏡に映った僕がそう言ってるように思えた。

これじゃモテないよな、確かに…


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