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愛しさにサヨナラ

BOØWY

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正月休みが終わり、三学期がスタートした。

教室では園田がウォークマンで音楽を聴いていた。


「何聴いてんだよ?」

僕は片方のイヤホンを取って耳に当てた。

「…!」

ロックで軽快なサウンドとボーカルがマッチして、僕の耳にダイレクトに入った。

「おい、これ誰が歌ってるんだ?」

園田の空いてる右耳に向かって聞いた。

「BOØWYだよ」

もはや説明は不要だろう。

あの伝説的ロックバンド、BOØWYのアルバムを聴いていたのだ。

以前から名前は知っていたが、どういう音なのかは聴いてなかったから解らなかった。

園田の聴いていたのは昨年発売されたアルバム【BOØWY】をカセットにダビングしていた。

「ちょっと、それ後でオレにも聴かせてくれよ」

僕は今すぐにでも聴きたかった。

あのギターのカッティングとボーカルが耳に残る。

休み時間になり園田の席に行くと、

「さっきの聴かせてくれよ」

と頼み込み、最初から聴いてみた。

【ホンキートンキークレイジーアイラービュー♪】

スゲー…これがBOØWYか…

僕は1発でBOØWYに魅了された。


帰りにレコード屋に向かい、CDを買った。

まだそれほどCDが普及していなかったが、バイトでCDプレイヤーを買ったので聴ける。

【BAD FEELING】【ハイウェイに乗る前に】【Dreamin'】等々

僕はボーカルの氷室京介よりも、長身で格子柄のフェルナンデスのギターを弾いてる布袋寅泰に釘付けになっていた。

あのギターテクニックはスゲー!

その日から僕はBOØWYを毎日聴くようになった。

波多野はレベッカを聴いて「このバンドは必ず売れるから」なんて言って僕にも勧めたが、僕はBOØWYは絶対に頂点に立つバンドだと思って、今度は僕が波多野に勧めた。

「レベッカもいいけど、BOØWYすげーよ!波多野も聴けばわかるから」

なんて強引に聴かせていた。

「んー、アタシはやっぱりレベッカかなぁ」

「うそっ!絶対BOØWYだよ!こっちの方が断然いいよ」

「えー、レベッカの方がいいってば!」

この辺りから僕と波多野の嗜好の違いから、徐々にすれ違いになっていった。

年が明けてあまり会う機会も無かった。

しかし、僕はそんなことはお構い無しにBOØWYを聴いていた。


暇さえあればCDを取り出し、その音に身を委ねていた。

あぁ~、こんなギター弾けたらカッコいいだろうなぁ…


僕の中では常にBOØWYの曲が脳内再生されていた。

学校では園田と一緒にウォークマンで聴きながら歌ったりして、ノリノリで学校の階段をリズミカルに駆け上がったり、エアギターの様に布袋寅泰になりきり弾いていたり。

「ライブ行きてーな!」

「今度武道館でライブやるらしいぜ」

「マジ?じゃそれ行こうぜ!」

「チケット取れるかなぁ」

「もう、しつこく何度も電話しまくって取るしかないだろ!」

僕らは興奮ぎみにチケットの取り方等を話し合っていた。

僕の生活にBOØWYが無いなんてあり得ない!

まさにNO MUSIC NO LIFEだった。

そのぐらいドップリと浸かっていた。

波多野からレベッカのライブ観に行こうと誘われても僕はBOØWY一筋で、他のバンドのライブに行こうとは思わなかった。

自分の選んだ音楽が一番!だからBOØWYは一番なんだ!と

こんな事をしばらく続けているうちに、波多野から話があると連絡が来た。

そう、別れ話だった。
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