Baseball Freak 主砲の一振り 7

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オールスターゲーム

激突その2

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2番陽凪はフルカウントまで粘る。

バットコントロールと長打を兼ね備えた新世代のスラッガーとして、ここまで打率.293 本塁打はリーグ3位の18本をマーク。

ツーストライクまでは長打を狙い、追い込まれると巧みなバットコントロールで広角に打ち返すスタイルは相手チームからすればイヤなバッターでもある。



及川は陽凪に対してストレートの真っ向勝負を挑んだ。


それに応えるように、陽凪もフルスイングをするが、なかなか芯で捕える事が出来ずファールを連発。


オールスターならではの力対力の対決。

ここで得意のスライダーを投げればバットは空を切って三振となるのだが、オールスターだけにストレートで勝負して欲しいというファンも多いはず。



だが、及川はそれを嘲笑うかのように、躊躇無くスライダーを投じた。


真っ向勝負と思っていた陽凪はタイミングが合わず空振りの三振。


全球ストレートと読んでいた陽凪は一瞬及川の方を見たが、首を傾げながらベンチに下がった。


「3番キャッチャー矢幡…大阪ドルフィンズ、背番号27」


アポロリーグを代表するホームランバッター矢幡が右打席に入る。


今年FA権を取得し、残留か移籍か去就が注目される。


既に北陸レッズが来季から球団売却により、北陸クリッパーズとチーム名を変え、その新戦力として矢幡の獲得する為に準備を進めている。


本塁打王2回、打点王1回に輝いた強打の捕手でありながら、リードも一流で強肩を生かした盗塁阻止率は外崎よりも上だ。


矢幡も独特なフォームのバッターだ。


両足を大きく広げ、ガニ股の様な構えでバットを後方に寝かせる。

そこから放つ鋭いスイングから放物線を描く弾道は滞空時間が長く、理想のホームランとも言える打球をレフトスタンドへ放り込む。


引っ張り専門のプルヒッターだが、選球眼も良く、出塁率は常に3割5分以上を記録する。


「オレ、あのキャッチャー(外崎)よりも、この人とバッテリーを組みたかったなぁ」


及川は矢幡のファンでもある。


インテリでスマートな外崎よりも、ワイルドで人間味溢れる矢幡の方に魅力を感じる。


とは言え、憧れの選手から三振を奪うのも及川の夢だ。



オールスターという特別な舞台だけに、ここは是が非でも自分のリードで打ち取りたい。


外崎がサインを出す前に自らサインを出した。


「あのヤロー、コッチがサインを出す前に出しやがった!」


「何や、サイン出してるのは自分や無いのか?」


矢幡はてっきり外崎がサインを出してるものだと思った。


「ルーキーに毛が生えたようなヤツが勘違いしやがって…
どうやら、本気でお前を打ち取るつもりらしいぜ」


「ホンマか?こりゃ、用心せなあかんな」


顔つきが変わった。


(二刀流のボウズにプロの厳しさを教えてやらなアカンな)


初球ストレートに狙いを定めた。


キレのあるフォームから初球を投げた。


(ヨシ、もらった!)


矢幡はフルスイングで迎え撃つ。


たが、ボールはベース手前から大きく横すべりに変化した。


「アァ、クソっ!」


バットは虚しく空を切った。


「ストライクワンっ!」


スイーパーと呼ばれる大きく曲がるスライダーだった。


「ストレートだと思ったんだろ?」


「まさか、初球からスイーパーとはな…確かに、ホンキでオレを打ち取るみたいやな」


オールスターとは言え、真剣勝負で挑む。


その後、矢幡もフルカウントまで粘るが、最後は落差のあるスプリットで空振りの三振に喫した。



「やったぜ!あの人から三振を奪ってやったぞ!」


及川は大きくガッツポーズをして吠えた。


1回の表、アポロリーグ選抜は三者凡退で攻撃を終了した。


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