仲村慶彦の憂鬱な日々 社会人編

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仲良くなりたいなぁ

賢者だ、賢者タイムなのだ!

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彩音の教育係に任命され、気の休まらない日々が続く。

ただでさえコミュ障なオレ。

それを悟られないよう、彩音に仕事を教えなければならない。


常に彩音が側にいるのは嬉しいが、一から仕事を教える立場のオレとしては、コミュ障がバレないよう必死な様子は、端から見たら不自然な話し方になっているのだろう。



「え、えっと、まずこの倉庫で在庫の確認をして…」


テンパってないか?

オレはちゃんと仕事を教えているのだろうか?


「あ、じゃあ酒井さん…この在庫を確認してください…」


「はいっ、わかりました!」


笑顔がいいなぁ!おまけに何かいい匂いがする。


何て言うか、少し甘い感じの匂いだ。


…ん?

っ!やべーぞ!オレ勃ってるじゃないか!


何でこんな時に…?

これじゃ、野村と一緒じゃないか!


落ち着け、落ち着くんだ、我が息子よ!


必死に賢者タイムになろうと別の事を考えていた。


オレは賢者、オレは賢者なのだ、と。


「仲村さん、終わりました」


彩音がまた近づく…

あぁ、ダメだ…この甘い匂いでオレは…



「あ…そ、それじゃデータ入力の方をお願いできますか?」

「はい、わかりました」


彩音は部署に戻り、PCにデータ入力していた。


あれ以上近づいたら、勃ってるのがバレバレになるところだった。





昼になり、食堂でオレ、沙織、彩音の3人は同じテーブルで飯を食っていた。



オレは気が張りつめていたせいか、食欲が殆ど無く、かけうどんを食べていた。



「酒井さんて新卒じゃないよね?以前はどこで働いてたの?」


沙織が前職を聞いていた。


「はい…以前は銀行員でした」


銀行?

また何でこんな中小企業に?


「へぇ、銀行員だったの?
でも、何でこんな会社に?」


そりゃ不思議がるだろう。


「えっと、あの…実はセクハラにあいまして…」



セクハラという言葉で真っ先に野村が浮かんでくる。


「あの…私、見て解ると思うんですが、胸が大きいから」


ブホッ!!…思わず鼻からうどんが出そうになった。


「あーっ!そうだね、胸のところがパッツンパッツンだね」


「あ、はい。私大きいから…Fカップあるんです」


え、Fーっ!!ストライクゾーンな巨乳じゃんかっ!



「あー、成る程!それで変な目でジロジロ見る男がいたんだ?」


「あぁ、はい…だからその、私男の人が苦手で」


苦手か…

オレ、教育係外されるのかな?


「えーっ、どうしよう!仲村くんはダメかな?」


「いえ、仲村さんはそういう風に見えないから大丈夫なんですけど」


そういう風に見えないって、どんな感じなのだろ。


「でもよかったよね、野村さんがいなくて。
あのオヤジがいたら大変だったよ!ねぇ、仲村くん?」


「あ、は、はい。そうっすね」

ダメだ!オレはFカップの事しか頭にない!


煩悩だらけだーっ!

あぁ、煩悩を消し去りたい!


午後からの仕事大丈夫だろうか?

っていうか、目線がどうしても顔じゃなく、オパーイにいってしまう!


「仲村さん、午後からもヨロシクお願いします」


「…はい、こちらこそヨロシク」


スゲー息苦しい。


オレにとって、彩音という存在が天使なのか悪魔なのか…どっちなんだ?



昼休みが終わり、午後の仕事がスタートした。



オレは目線を胸に行かないよう、必死で彩音に仕事を教えた。


これ以上近くにいると、香水の匂いを嗅いで勃ってしまうからだ。


彩音は背が小さいから、屈みながら伝票を見たりするので、目線は伝票よりも胸の辺りにいってしまう。


見ないようにと思っても、盛り上がりがハンパない為、見るなと言ってもムリな話だ。


その度、オレは別の事ばかりを考えていた。


あぁ、弾丸はもうすぐ試合があるとか言ってたな。


次の対戦相手はどんなヤツかなぁ。


うん、ボクシングの事を考えると賢者になれる。

今度から、こういう時はボクシングの事を考えよう。


ボクシングはストイック。

ボクシングは賢者タイムだ!


ジムで必死になって練習している弾丸の姿を思い浮かべるんだ!

Fカップなんて、この場から立ち去るのだ!


この葛藤と戦い、普段より倍以上のエネルギーを消費した。


恐るべし、Fカップパワー!

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