仲村慶彦の憂鬱な日々 社会人編

仲良くなりたいなぁ

ヤンキー根津

見るからにヤンキーっぽい兄ちゃんが会社の入り口に突っ立っていた。


随分ガラの悪いアンちゃんだなぁ。


まぁ、オレには関係ないか。

そう思い、社屋に入った。

「仲村くん、いる？」

沙織の声がした。


「はい」


ん、隣に居るのは今朝のヤンキー。


「今日からここで働く事になった根津くん。
根津くん、今日から仲村くんに付いて仕事を覚えてください」

「根津尚広(ねづたかひろ)っす、ヨロシクです」

「仲村です、こちらこそヨロシクです」


反抗的な顔してらぁ。


髪は茶髪を通り越して金髪に近い。

おまけに目付きは悪いし、喧嘩上等！なんてオーラ全開じゃないか。


見た目はともかく、真面目に仕事する気あるのかな…


「あー、酒井さん。紹介するわね。今日からここで働く事になった根津くん」

「あ、初めまして！ワタシ、酒井といいます。ヨロシクお願いします」


「あぁー、初めまして！自分、根津です！ヨロシクお願いします！」

オレの時と違ってテンション高めだな！


「酒井さんも入ってそんなに経ってないけど、後輩が出来たわね」


「そんな、ワタシまだそこまで仕事覚えてませんが…根津さん一緒に頑張りましょう」

「はい、ヨロシクお願いします！」

顔というより、π乙に目が行ってるに違いない。


変な気起こさなきゃいいんだが。






オレは根津の教育係に任命された。


「仲村さぁん！自分、ここでどんな事すりゃいいんすかね？」


やりづらい相手だな。


「そうだね、まずは伝票のチェックとか倉庫にある在庫の数とかを管理するんだ」


「あぁ、自分数字に弱いんすよねぇ」


何だコイツ。


「簡単だよ。後はPCに入力すればいいんだから」


「自分パソコン出来ないんすよね」


何っ！誰だ、こんなヤツ採用したのは？


「根津さん、大丈夫ですよ。ワタシだって簡単に出来たから、徐々に覚えていきましょう」


「はいっ、わかりました！」


彩音の言うことは素直に聞きやがる。


オレから仕事教わりたくないって雰囲気が全身から漏れている。


色々とめんどーなヤツかも。



昼になり、食堂へ向かった。

「酒井さん！自分、前は運送の仕事してたんすよ」


オレが座る反対側のテーブルでは、彩音に自分の経歴を話している。


彩音はしんどそうな顔だ。


「仲村くん、彼どう？」

沙織が聞いてきた。

「PCの入力が出来ないって言ってましたが、どうなんでしょうね？」

「見るからにヤンキーっぽいよね、彼」

誰の目から見てもヤンキーだ。

しかも昭和のヤンキーだ。


根津はしきりに話しかけ、彩音はただ相槌をうつだけだった。


「どう見ても仕事っていうより、酒井さんをナンパしてるようにしか見えないんですが」

「やりにくい相手よね。まぁとにかく初めてだから教えないといけないし。何かあったら、ワタシが上の人に相談するから、仲村くん悪いけどしばらくは彼の面倒見てくれる？」

めんどくせぇ！