仲村慶彦の憂鬱な日々 社会人編

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仲良くなりたいなぁ

証拠はあるのかよ?

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昨夜の居酒屋にて。


「あの…ワタシ、前の会社でセクハラにあったって言ったじゃないですか?」


「あぁ。確かそんな事言ってたね」


「そこで、ふと思ったんです」


「ん、何を?」


「それを逆手にとる方法を」


逆手にとるって、所謂ハニートラップとかいうやつ?


「ん、どういう事?」


「逆手にとる…とは?」


「はい!見てわかる通り、ワタシって胸が大きいじゃないですか?」


「ちょっと!仲村くん、ガン見し過ぎ!」


思わず彩音のπ乙をガン見してしまった…彩音に嫌われないだろうか。


「えっ、いやその…すいません」


「仕方ないですよ、男の人の視線がワタシの胸にいくのは」


さては、巨乳がコンプレックスでイヤな思いしてきたのだろう…


「という事は、根津さんもワタシの胸に目が行くと思うんです」


「えっ!まさか、そういう風に仕向けるって事じゃ」


「そうです!ワタシにセクハラしたって事になれば、会社にいられなくなりますよね?」


「それはダメ!アナタがそこまで身体を張ってまでやる事じゃないの!」


沙織は反対だ。

そりゃそうだ、同じオンナの立場からして、色仕掛けで根津を貶めるのは賛同出来ない。


「でも、他にやり方があるんですか?」


「…ん~、今のところは見つからないけど」


「ワタシの事は気にしないで下さい。この作戦は必ず成功します」


「でも…それって、少し卑怯な気もしないでもないような」


男のオレからすれば、ハニートラップというのはちょっと卑怯な気もする。


だが、相手はあの根津だ。

確実に引っ掛かるだろう。


「こうでもしないと、お二人は会社にいられなくなるんですよ?」


「いいんだ、原因を作ったのはオレなんだし、オレが辞めれば平常に戻るんだし」


帰ったら退職願を書こうと決意した。


ターゲットはオレだ。

ならば、辞表を出せば済むことだ。


「ダメです!仲村さんは会社にいなくてはならない人なんです!」


「そうよ!妹さんの件とこれは別の事よ」


相手は野村だぞ、そんな事関係ないだろ。


「そうは思わないですね。
妹にビンタ食らったし、相当怨みがあると思うんです」


「仲村さんはワタシをここまで教えてくれた大事な人です。だから、仲村さんは辞めちゃダメなんです」


嗚呼、何ていう優しい心を持ったお人だ…

オレは心の中で号泣した。

こんなにもオレを慕ってくれている女が過去にいただろうか?

いるわけがない。


こんなロリ顔で巨乳の女の子がここまで言ってくれるとは!

もう、惚れた!マジで惚れた!


「酒井さんの考えは解ったわ。でも、リスクが大きすぎるから止めましょう。
別な方法で対処しましょう」


「高橋さん、やるなら今です!
根津さんは今後、更に会社を私物化しますよ!
だから、ワタシが囮になります」


彩音も引かない。


覚悟を決めた表情でレモンサワーをグイっと飲み干した。

「酒井さん…酒井さんの気持ちはわかった。とても有難い。でも、それだけは出来ないよ」


「仲村さんはワタシの事信用してないのですか?」

「信用する、しないの問題じゃないんだ。
危険すぎるし、とても褒められた方法じゃないよ」


「そうよ、仲村くんの言う通り。
酒井さんは大事な社員なの。
だから、この作戦は止めましょう」


「いいから、ワタシに任せてくれませんか?ワタシ、こういうのは慣れてますから」


…どうしよう。

これじゃ平行線のままだ。


とは言え、根津は更に調子に乗ってやりたい放題になるだろう。

ここは彩音の案に乗るしかないか。


「その代わり、少しでも危ないと思ったら作戦を中止するんだ、いいね?」


「ちょっと仲村くん!アナタまでこの作戦に乗るつもりなの?」


「この作戦がダメなら、オレが辞めるという案にします」


「だからそれはまた別な問題として…」

「いいですか、高橋さん!
アイツはこれはこれ、それはそれ、何て考えは持ってないですよ。
ターゲットはオレです。
アイツの望みはオレがいなくなることなんです」


「も~っ!さっきから全然話が進んでないじゃないですかっ!何を言われようとワタシこの作戦をやりますからね!」




彩音の迫力に圧倒され、沙織はやむ無く彩音の案を飲むことにした。



「それと高橋さん、出来れば明日もうワンサイズ小さめのブラウスを用意して欲しいんです」


「小さめのブラウスって…それじゃ…」

沙織は思わず自分の胸を押さえた。

彩音程ではないが、沙織もなかなかのサイズだ。


「となれば、酒井さんの案に乗るしかないでしょう」


「アタシはあまり気が進まないけど…」


こうして彩音によるハニートラップ作戦は見事成功した。






「確か、身元保証人は野村さんよね?今すぐ野村さんに連絡しなさい!」


「ちょ、ちょっと待てよ!オレがやったって証拠どこにもないだろ!」


「証拠だぁ?テメー、証拠が無いと認めねえのかっ!」


「あ、当たり前だろ!オレがやったって証拠がどこにあるんだよ?大体その現場を見たのか?
あぁ?見てねえだろがよ、おい!」


「…」


「証拠が無いのに、オレを犯罪者扱いかよ、なぁ!」


根津の態度が急変した。


証拠が無ければオレは無実。

そんな態度だ。


「それじゃ、何故酒井さんのボタンがあんなに取れるのよ?それはどう説明するつもり?」


「アンタ、アホか!
あんなパッツンパッツンなブラウスじゃ、デカイ乳が盛り上がってボタンが飛んだんだよ!」


「その発言セクハラになるわよ!」


「うるせー!早く証拠を見せろよ!無いんだろ?」



「根津さんよぉ、そんなに証拠が必要なのかよ、なぁ?」


オレはポケットからボイスレコーダーを取り出した。


「何だ、そりゃ?それが証拠だと言うのかよ!」



勝ち誇る根津に、彩音とのやり取りを再生した。


【…ちゃん、彩音ちゃんここでゆっくり話そうか?】


【根津さん…ワタシ仕事に戻らないと…】


【何言ってんだよ?仕事なんて、アイツらに任しておけばいいんだって】


【そんな事言ったって…】


【いいの、いいの。だって、オレは仕事の邪魔をするよう頼まれてんだから、ウハハハハハ!】


【邪魔?仕事の邪魔をしろって頼まれてるんですか?】


【そうだよ、オレは叔父さんに頼まれてこの会社に入ったんだからよ】


【叔父さん?】


【そういう事! 
仲村と高橋の二人を会社から追い出してくれって言われてるんだよ】


【追い出すって…悪い人ですね根津さんは。
そんな事より、肩凝ってきたなぁ】


【彩音ちゃん、おっぱいデカイもんね。だから肩凝るんじゃないの?】


【イヤだ根津さん!そんな目で見ないで下さい】


【アハハハハ!なんなら肩揉んでやろうか?遠慮しなくていいからさ】


【…根津さんさっきからワタシの胸ばっかり見てる】


【え?だって、そんなに大きいとどうたって目に入るじゃん】


【根津さん、イヤらしい!】


【彩音ちゃん、遠慮しないで…肩揉んであげるからさ】


【イヤです~】


【いいから揉んであげるってば!】


【ケッコーですっ!】


【いいから揉ませろよ!オレに逆らったらクビにするぞ!】


【…ガタッ、ゴトッ!ガサガサ……キャーッ止めて~】




【大きい声出すなよ、周りに聞こえるだろ!】


【イヤ~っ!】




ここで会話は終了。



「おい、このやり取りは何だ?
お前、これでも知らねえって言うのか、おいっ!」


その瞬間、根津の顔色がみるみるうちに青ざめてきた。


こうなる事を見越した彩音は、ポケットにボイスレコーダーをしのばせ、中でのやり取りを録音していたのだ。



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