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レスリングマスター、そしてコマンドサンボ
本物のシュートを見せてやる!
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オレは試合が終わり、控え室に戻りマスクを脱ぎ壁に叩きつけた。
「クソッ!何なんだこの格好は!」
オレは自分の姿を見て、情けなくなった。
歌舞伎のクマドリのようなマスクを被り、黒帯の柔道着を着て手には竹刀を持っている。
【ジュードー・カブキ】
これがオレに与えられたリングネームだ。
しかもヒールを演じ、カーウィンから学んだキャッチレスリングすら出来ず、黒帯で相手の首を締め、竹刀で滅多打ちという反則攻撃ばかりをしている。
確かにオレは試合に出たい、しかしこんなギミックは必要ない。
レスリングで勝負をしたいんだ。
コールマンの言うとおり、ヒールキャラとしてイギリスのマット界で試合を行って一ヶ月が経つ。
サーカス小屋のようなテントを張り、中で試合を行っている。
しかも聞いていた以上にこっちのマットは粗悪で所々に窪みがあり、しかもウレタンのゴムで衝撃を柔らかく吸収するのが当たり前のリングなのに、ここは板の上にシートをかけただけのマットだ。
こんな状況でしかも技という技は出さず、ひたすら反則攻撃をするのみ。
ヒールキャラでもいい、せめてレスリングの攻防をリングの上で観客に披露したい。
なのにコールマンがオレに命じたのは歌舞伎のマスクを被って柔道着のスタイルで反則技ばかりだ。
観客からはブーイングが飛び、花道を通る際、罵声を浴びて生卵や紙コップに入ったジュース等を投げつけられる。
何のためにこのイギリスに来たんだよ…
キャッチレスリングを学ぶ為に来たんじゃなかったのかよ…
幸か不幸か、それまでのイギリスのマット界は無名の若手やロートルの選手ばかりで試合内容もお粗末なものばかりで、プロレスを開催しても観戦する客は僅かな人数だった。
そこへ覆面を被ったオレが現れ、オリエンタル殺法と称した反則攻撃ばかりを繰り広げる。
観客は一斉にブーイングで、オレに罵声を浴びせてくる。
このヒールレスラーの出現によって観客は徐々に増えていった。
とはいえ、オレのやりたいレスリングじゃない、ただ柔道着を着て竹刀を振り回し暴れるだけだ。
ジュードー・カブキというヒールキャラの覆面レスラーの出現で興行的には成功を収めた。
コールマンはホクホク顔で、こんなに会場に客が集まったのは数年ぶりだ、とばかりに喜んだ。
ビジネスとしてはオレのヒールキャラは成功と言える。
ギャラも思った以上の額を貰え、日本でもこんなに貰った事は無い程、高額なファイトマネーだった。
だがオレの心はキャッチレスリングを学びにロンドンに来たのに、プロモーターの命令でマスクを被り、黒帯の柔道着を着て竹刀を持って暴れるだけのスタイル一辺倒だ。
技という技は一切出さず、反則攻撃しかしないヒールレスラー、なのに何故柔道着を着る必要があるのか?何故剣道の竹刀を持たなきゃならないのか?
もう限界だ、オレはコールマンの言うとおりにはなりたくない。
カーウィンに相談したが、聞き入れてもらえず、ただ笑うだけだった。
「ナオト、いいじゃないか。ヒールだなんてお前にとってはいい経験だ。
ここではヒールに徹するんだ」
今さらヒールなんてやってられるかっ!
「冗談じゃない!あんな恥ずかしい格好のどこがいい経験になるんだ?もうやってらんねぇよ!」
オレは腹が立ち、コールマンに会いに事務所へ向かった。
こんなバカげた格好をしてプロレスなんて出来ない。
オレは事務所に入り、コールマンに直談判した。
「Mr.コールマン。もうあのキャラは封印させてくれ。
何がジュードーだ?柔道技の一つも出さず、ただ凶器を使って反則するだけじゃないか。
昔の日本人レスラーはそうやって海外遠征したが、今は時代が違うんだ。
MMAのように、本格的に柔道の技を出したり、レスリングをしないといずれ客にソッポを向かれる。
だからオレを元のスタイルに戻してくれ!」
コールマンは葉巻を吹かしながら椅子に深々と座り込み、聞き取りづらい英語で捲し立てた。
「ジングウジ、お前誰にものを言ってるんだ?オレはプロモーターだ。
お前はオレの命令通りジュードー・カブキとしてヒールに徹するんだ!
それなりのギャラも払ってるだろう、とにかくお前はジュードー・カブキとしてイギリスのマット界で暴れまくってくれればいいんだ、簡単だろう、そんな事は?」
コイツの英語は何を言ってるのか聞き取りにくいが、要は今まで通りにやれ!という事か。
「無理だ!そもそも柔道着を着て竹刀を持つなんて時代錯誤も甚だしい!
今の時代ではそんなギミックは通用しない!
ただでさえ、プロレスがMMAに押されているのに、あんな何十年前ものギミックが通用しない事ぐらいプロモーターのアンタだって分かるだろう?」
オレはバン!と机を叩きながら抗議した。
コールマンはソッポを向いて葉巻をくわえながら意に介さないとばかりの態度で煙を吐き出していた。
その煙のモヤモヤがオレの心のモヤモヤとシンクロしている。
「ジングウジ、オレに逆らうという事はここじゃ試合は出来ないんだぞ?分かるよなこの意味が?」
クソッ、見るからに腹立たしい態度だ!
こんなのがプロモーターならイギリスのプロレスも地に落ちたようなものだ。
「Mr.コールマン。それはオレを干すという事か?」
オレは努めて冷静を装って話をしたが、内心は腸が煮えくり返っていた。
「そんな事は言わなくても分かるだろう。プロモーターのオレの考えに従えないのなら今すぐこのロンドンから出て行け!」
出て行け?あぁ上等だ!
オレはコールマンの目の前の木目調の机を引っくり返してやった。
【ガシャーン!】
床には筆記用具や書類が散乱し、机は逆さになった状態で引き出しの中にあった物全てが放り出されていた。
「キサマ、この机を壊すとは…弁償しろ!そして2度とイギリスのマット界へ上がれなくしてやる!」
コールマンが立ち上がり、オレに詰め寄った。
「弁償?だったらファイトマネーで支払ってやるよ。
それにこんなショッパイ試合しか出来ないマット界なんざこっちから願い下げだ!」
オレはコールマンをぶん殴ってやりたかったが、辛うじてそれだけは堪えた。
「何がキャッチレスリングだ!まともにレスリングすら出来ないような素人に毛が生えたハンパなレスラーしかいないクセに!
これじゃ伝統のキャッチレスリングも廃れてしまうぜ、アンタみたいな時代遅れのプロモーターのせいで!」
オレはそう捨て台詞を吐いて事務所を出て言った。
バカバカしい!昔の日本人レスラーは海外遠征の際、相撲の格好や長襦袢を着て下駄を履いたりしてヒールとして闘っていたが、もはやそんなギミックは通用しない時代なんだ。
本物だけが生き残る、あんなインチキな柔道や相撲のようなギミックはウケない。
MMA主流の現在の格闘技界でプロレスだけがいまだに時代遅れのショーアップをしている。
もう、この場所で試合をするつもりもない、オレはカーウィンの下でひたすらキャッチレスリングを学ぶのみだ。
やるせない気持ちを抑えきれず、オレはカーウィンのジムに戻った。
帰国するまでカーウィン相手にスパーリングをしてキャッチレスリングを自分のものにする、それしかない。
入り口のドアを開けると、トレーニング器具の脇にオレの荷物が置いてあった。
「…?何だこれは?」
するとジムでオレの帰りを待ち構えてたかのようにカーウィンがもの凄い形相でマットの中央で仁王立ちしていた。
「この、バカ者が!コールマンに逆らうとはどういう事だ!」
普段の好好爺なカーウィンではなく、現役時代を彷彿させるシューターとしてのカーウィンの迫力にやや戸惑った。
「コールマンから連絡があった。お前、コールマンにヒールキャラはもうやらない、と派手に暴れたらしいな。
そんなに暴れたいなら私が本気で相手にしてやる!」
カーウィンは凄まじい殺気を醸し出し、とても老人とは思えない程の迫力だ。
「オレはあんなキャラを演じるのは無理です。 オレがやりたいのはあんなインチキなプロレスじゃない、本物のプロレスがしたいだけです」
だがカーウィンは構えたままでオレの言うことを全く聞くつもりはないみたいだ。
「何能書きばっかり言ってんだお前は!そんなに本物のレスリングが望みなら私が相手しよう。
ただし今までの私じゃないぞ、これだ!」
カーウィンはシュートサインをオレに向けた…
「…よし、やってやろうじゃねえか。こっちもこれで相手してやる!」
オレもシュートサインをカーウィンに向けた。
オレは上半身裸になり、靴を脱いでマットに上がった。
今まで何度もカーウィンとスパーリングしたが、今回は雰囲気が違う…
本気でオレの事を潰しにかかってるみたいだ。
ここで潰れたら所詮それまでの実力だって事だ、だったらこっちもカーウィンにまだ見せた事の無いシュートスタイルで闘うのみ!
「クソッ!何なんだこの格好は!」
オレは自分の姿を見て、情けなくなった。
歌舞伎のクマドリのようなマスクを被り、黒帯の柔道着を着て手には竹刀を持っている。
【ジュードー・カブキ】
これがオレに与えられたリングネームだ。
しかもヒールを演じ、カーウィンから学んだキャッチレスリングすら出来ず、黒帯で相手の首を締め、竹刀で滅多打ちという反則攻撃ばかりをしている。
確かにオレは試合に出たい、しかしこんなギミックは必要ない。
レスリングで勝負をしたいんだ。
コールマンの言うとおり、ヒールキャラとしてイギリスのマット界で試合を行って一ヶ月が経つ。
サーカス小屋のようなテントを張り、中で試合を行っている。
しかも聞いていた以上にこっちのマットは粗悪で所々に窪みがあり、しかもウレタンのゴムで衝撃を柔らかく吸収するのが当たり前のリングなのに、ここは板の上にシートをかけただけのマットだ。
こんな状況でしかも技という技は出さず、ひたすら反則攻撃をするのみ。
ヒールキャラでもいい、せめてレスリングの攻防をリングの上で観客に披露したい。
なのにコールマンがオレに命じたのは歌舞伎のマスクを被って柔道着のスタイルで反則技ばかりだ。
観客からはブーイングが飛び、花道を通る際、罵声を浴びて生卵や紙コップに入ったジュース等を投げつけられる。
何のためにこのイギリスに来たんだよ…
キャッチレスリングを学ぶ為に来たんじゃなかったのかよ…
幸か不幸か、それまでのイギリスのマット界は無名の若手やロートルの選手ばかりで試合内容もお粗末なものばかりで、プロレスを開催しても観戦する客は僅かな人数だった。
そこへ覆面を被ったオレが現れ、オリエンタル殺法と称した反則攻撃ばかりを繰り広げる。
観客は一斉にブーイングで、オレに罵声を浴びせてくる。
このヒールレスラーの出現によって観客は徐々に増えていった。
とはいえ、オレのやりたいレスリングじゃない、ただ柔道着を着て竹刀を振り回し暴れるだけだ。
ジュードー・カブキというヒールキャラの覆面レスラーの出現で興行的には成功を収めた。
コールマンはホクホク顔で、こんなに会場に客が集まったのは数年ぶりだ、とばかりに喜んだ。
ビジネスとしてはオレのヒールキャラは成功と言える。
ギャラも思った以上の額を貰え、日本でもこんなに貰った事は無い程、高額なファイトマネーだった。
だがオレの心はキャッチレスリングを学びにロンドンに来たのに、プロモーターの命令でマスクを被り、黒帯の柔道着を着て竹刀を持って暴れるだけのスタイル一辺倒だ。
技という技は一切出さず、反則攻撃しかしないヒールレスラー、なのに何故柔道着を着る必要があるのか?何故剣道の竹刀を持たなきゃならないのか?
もう限界だ、オレはコールマンの言うとおりにはなりたくない。
カーウィンに相談したが、聞き入れてもらえず、ただ笑うだけだった。
「ナオト、いいじゃないか。ヒールだなんてお前にとってはいい経験だ。
ここではヒールに徹するんだ」
今さらヒールなんてやってられるかっ!
「冗談じゃない!あんな恥ずかしい格好のどこがいい経験になるんだ?もうやってらんねぇよ!」
オレは腹が立ち、コールマンに会いに事務所へ向かった。
こんなバカげた格好をしてプロレスなんて出来ない。
オレは事務所に入り、コールマンに直談判した。
「Mr.コールマン。もうあのキャラは封印させてくれ。
何がジュードーだ?柔道技の一つも出さず、ただ凶器を使って反則するだけじゃないか。
昔の日本人レスラーはそうやって海外遠征したが、今は時代が違うんだ。
MMAのように、本格的に柔道の技を出したり、レスリングをしないといずれ客にソッポを向かれる。
だからオレを元のスタイルに戻してくれ!」
コールマンは葉巻を吹かしながら椅子に深々と座り込み、聞き取りづらい英語で捲し立てた。
「ジングウジ、お前誰にものを言ってるんだ?オレはプロモーターだ。
お前はオレの命令通りジュードー・カブキとしてヒールに徹するんだ!
それなりのギャラも払ってるだろう、とにかくお前はジュードー・カブキとしてイギリスのマット界で暴れまくってくれればいいんだ、簡単だろう、そんな事は?」
コイツの英語は何を言ってるのか聞き取りにくいが、要は今まで通りにやれ!という事か。
「無理だ!そもそも柔道着を着て竹刀を持つなんて時代錯誤も甚だしい!
今の時代ではそんなギミックは通用しない!
ただでさえ、プロレスがMMAに押されているのに、あんな何十年前ものギミックが通用しない事ぐらいプロモーターのアンタだって分かるだろう?」
オレはバン!と机を叩きながら抗議した。
コールマンはソッポを向いて葉巻をくわえながら意に介さないとばかりの態度で煙を吐き出していた。
その煙のモヤモヤがオレの心のモヤモヤとシンクロしている。
「ジングウジ、オレに逆らうという事はここじゃ試合は出来ないんだぞ?分かるよなこの意味が?」
クソッ、見るからに腹立たしい態度だ!
こんなのがプロモーターならイギリスのプロレスも地に落ちたようなものだ。
「Mr.コールマン。それはオレを干すという事か?」
オレは努めて冷静を装って話をしたが、内心は腸が煮えくり返っていた。
「そんな事は言わなくても分かるだろう。プロモーターのオレの考えに従えないのなら今すぐこのロンドンから出て行け!」
出て行け?あぁ上等だ!
オレはコールマンの目の前の木目調の机を引っくり返してやった。
【ガシャーン!】
床には筆記用具や書類が散乱し、机は逆さになった状態で引き出しの中にあった物全てが放り出されていた。
「キサマ、この机を壊すとは…弁償しろ!そして2度とイギリスのマット界へ上がれなくしてやる!」
コールマンが立ち上がり、オレに詰め寄った。
「弁償?だったらファイトマネーで支払ってやるよ。
それにこんなショッパイ試合しか出来ないマット界なんざこっちから願い下げだ!」
オレはコールマンをぶん殴ってやりたかったが、辛うじてそれだけは堪えた。
「何がキャッチレスリングだ!まともにレスリングすら出来ないような素人に毛が生えたハンパなレスラーしかいないクセに!
これじゃ伝統のキャッチレスリングも廃れてしまうぜ、アンタみたいな時代遅れのプロモーターのせいで!」
オレはそう捨て台詞を吐いて事務所を出て言った。
バカバカしい!昔の日本人レスラーは海外遠征の際、相撲の格好や長襦袢を着て下駄を履いたりしてヒールとして闘っていたが、もはやそんなギミックは通用しない時代なんだ。
本物だけが生き残る、あんなインチキな柔道や相撲のようなギミックはウケない。
MMA主流の現在の格闘技界でプロレスだけがいまだに時代遅れのショーアップをしている。
もう、この場所で試合をするつもりもない、オレはカーウィンの下でひたすらキャッチレスリングを学ぶのみだ。
やるせない気持ちを抑えきれず、オレはカーウィンのジムに戻った。
帰国するまでカーウィン相手にスパーリングをしてキャッチレスリングを自分のものにする、それしかない。
入り口のドアを開けると、トレーニング器具の脇にオレの荷物が置いてあった。
「…?何だこれは?」
するとジムでオレの帰りを待ち構えてたかのようにカーウィンがもの凄い形相でマットの中央で仁王立ちしていた。
「この、バカ者が!コールマンに逆らうとはどういう事だ!」
普段の好好爺なカーウィンではなく、現役時代を彷彿させるシューターとしてのカーウィンの迫力にやや戸惑った。
「コールマンから連絡があった。お前、コールマンにヒールキャラはもうやらない、と派手に暴れたらしいな。
そんなに暴れたいなら私が本気で相手にしてやる!」
カーウィンは凄まじい殺気を醸し出し、とても老人とは思えない程の迫力だ。
「オレはあんなキャラを演じるのは無理です。 オレがやりたいのはあんなインチキなプロレスじゃない、本物のプロレスがしたいだけです」
だがカーウィンは構えたままでオレの言うことを全く聞くつもりはないみたいだ。
「何能書きばっかり言ってんだお前は!そんなに本物のレスリングが望みなら私が相手しよう。
ただし今までの私じゃないぞ、これだ!」
カーウィンはシュートサインをオレに向けた…
「…よし、やってやろうじゃねえか。こっちもこれで相手してやる!」
オレもシュートサインをカーウィンに向けた。
オレは上半身裸になり、靴を脱いでマットに上がった。
今まで何度もカーウィンとスパーリングしたが、今回は雰囲気が違う…
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