(快楽に溺れ、過ちを繰り返す生命体)アナザーストーリー

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第二章 彼女

終電に間に合わない

何故、楓は急にビックリしたのか。

キスとは、情熱的で舌を絡め合わせて熱く交わるものだと思っていた。

それとも母親のキスが異常だったのだろうか?

帰りの車の中は無言だった。
そして駅前のロータリーで楓を降ろした後、家に着いた。

するとスマホからLINEの着信音がした。

楓だ。

【今日はありがとう。楽しかったよ。でも…最後はちょっとビックリした…
実は私、あれがファーストキスだったの…
だからいきなり舌を入れてくるなんて。
亮ちゃん随分と慣れたキスだったけど、前の彼女とはそんな感じのキスだったの?】

前の彼女か…母親なんて言えないしな。

【こちらこそ、パエリア凄く美味かったよ。
ありがとう。
えーっとキスはその…まぁ、そんな感じだったから、つい。
ホントに申し訳ない!】

ファーストキスは唇を重ねるだけなのか…

じゃあ、楓はまだ処女なのか?


どうなんだろう。

【そっかぁ、亮ちゃんの元カノは情熱的だったんだぁ~】

情熱的ね…情熱的というより、猟奇的かも。
あの母親は…

【まぁ、そんな感じ。でも今は別れてから一切連絡もしてないし、どこで何やってんだか知らないけどね。
それよりオレの今の彼女は楓じゃん?】

そうだ、今は楓の事を大事にしなきゃなんないんだ。

【何か恥ずかしいんだけど嬉しい…でも今日はよく歩いたよね?さっき帰ったら、足がパンパンだった(泣き顔の絵文字)】

砂浜を歩いた時か。

随分と遠くまで歩いたもんなぁ。

【確かにwオレも歩きながら、どこまで行くんだ?って思ったよ】

【wwwウケる!亮ちゃんまた明日ね。今日は疲れたから、飲まないで寝るね、おやすみc h u ✩(ゝ 3 @)】

【了解、また明日ね~(おやすみのスタンプ)】


あぁ、疲れがドッと出た。

風呂入って早く寝よう。

今日も母親はいない。店は休日なのに何処へ行ったんだか。

まぁ、今のオレとしてはいない方が楽でいいんだが。



その後の休日も、デートで色々な場所に出掛けた。

人気のテーマパークや、水族館、遊園地や映画を観たり、充実した日々を送っていた。

楓はその度に弁当を持参して、オレは腹一杯食べ、幸せ満喫だった。



しかし、毎回楓の作る弁当の内容がマンネリ化してオレは些か飽きがきてしまった。

「えぇ、またおにぎり?」

とか

「パエリアこの前作ってきたじゃん?」

等と、つい不満げに言ってしまう事もあった。

「じゃあ、もう作らないから!」

楓は頬を膨らませ、怒る事も。



楓はあくまでも夢見る少女のように、メルヘンチックにデートをしたいらしいが、オレは大人の関係もデートの一つと考えている。

母親にもう近親相姦をしないと言って以来、射精をしてない。

ハタチのオレの下半身は溜まっていく一方だ。
プラトニックな付き合いを求めていたのに、本能がそれを許さない。



悶々とする一方だ。


「たまには電車で出掛けようよ。それならお互い飲めるでしょう?」

楓の提案で、今日のデートは電車に乗って都内の歓楽街で映画を観に行く事にした。

洋画のラブストーリー物だが、退屈過ぎて面白くも何ともない。
アクビを連発して早く終わらないかな、と時間ばかり気にしていた。

楓はスクリーンに釘付けになり、目をウルウルさせていたが、こんな映画のどこが良いのか。

ふと思った。オレは楓に合わせているだけじゃないかって。
と言っても、オレ主導のデートだと何をすればいいのか。
する事と言えばセックスぐらいしか思い付かない。


映画を観終わって外に出ると、既に空は薄暗くなっていて、夕陽が徐々に姿を消す頃だった。
繁華街は年末の気忙しい雰囲気を漂わせている。


「いや~、もう感動した!あのシーンで泣いちゃったからメイクが崩れてないかな?」

楓の顔をジッと眺めた。メイクは崩れてないが、目は赤く、泣き腫らしていた。

「メイクは崩れてないけどさぁ、スゲー目が真っ赤だぞ。
いかにも《私今ワンワン泣いてました》ってな目になってるよ」

「うそっ?」

「ホントだよ。何ならどこか店に入ってトイレの鏡でも見てみればいいよ」

そんなに泣くような映画だったのか?

どんな内容なのかも覚えてない。
価値観の違いってヤツなのか。

オレの中で、付き合い当初の頃のようなワクワク感が無くなってきている。


「うん、じゃあお店に入って確認するから、早く入って飲もう」

急にパッと明るい表情に変わった。



オレと楓は手を繋ぎながら繁華街を歩き、どの店にしようか迷っていた。

すると、看板には【完全個室 隠れ家的居酒屋】と書いてある。

個室ってのがいいな。

チェーン店の居酒屋だと、周りが騒がしいから話づらい。

「ここにしない?個室だし、周りに気兼ねなく話が出来るから」

「…うん、そうだね」

看板の置いてあるビルの階段を上り、二階に入り口があった。

中は幻想的な明かりが灯り、建物の中央が中庭のようになって、竹がライトアップされていた。

「いらっしゃいませ、二名様でよろしいですか?」

作務衣のような服を着た女の店員に案内され、中庭を囲うような階段を上り、三階のカーテンで仕切られたペアシートの席へ案内された。

「何だこの席?ひょっとして、この中にホントに隠れ家として、不倫してるカップルとかいそうじゃない?」

楓はコートを脱ぎ、壁に掛けてあるハンガーを手にした。

「まさかぁ?…でもこの空間といい、明かりといい、いかにも的な感じはするよね~」

ゆるふわのセミロングの髪をかき分けると、ほのかな柑橘系の香りがした。

ペアシートに並んで座り、テーブルにある呼び出しボタンを押し、まずはビールで乾杯。

個室が酒宴と変わる。

酒が強い者同士だから、いくらでも飲める。

瞬く間に時間は過ぎ去り、時計は午前0時を回ろうとしていた。

「ヤベーな、終電大丈夫かな?」

「ちょっと待って」

楓はスマホを取り出し、終電の時刻をチェックしていた。

「…あ、後3分で終電みたい」

「…マジ?」

「うん…」



さぁ、どうしよう…
タクシーに乗って帰るかと言ってもオレと楓は帰りが反対方向だ。

すると楓の口から思いもよらない事を言ってきた。

「そう言えば、友達が終電無くなってどうしようと思って周りを見たらホテルしかなくて、じゃあ入る前にコンビニでビールとか買ってきて部屋で飲んで朝まで過ごした、なんて聞いたけど…」

「ホテルって、もしかしたらラブホ?」

邪な考えが頭をよぎった。

楓とラブホに入るという事は…最近ご無沙汰だからピクっと下半身が反応した。

ヤバい、悟られないようにしなければ!


「え、えーと、二人のタクシー代と比べたらそっちの方が安上がりだし、オレは大丈夫だけど、楓は大丈夫なの?ほら、親がうるさいんじゃなかったっけ?」

楓も実家住まいだし、娘が朝帰りだなんて、両親は心配するだろう。

「ウチね、親は別々に暮らしていて、お父さんは一緒に住んでるんだけど、夜の仕事して、今はちょうど仕事中じゃないかな。
お母さんとは別居してるんだけど、近くに住んでお婆ちゃんの介護してるから。
だから特に問題はないよ」

楓が家庭の話をするなんて、一度も聞いた事が無かった。
どの家庭にもそれなりの事情があるのか。

それを聞いて、また良からぬ事が頭を過ぎった。
もしかしたら、今夜楓とラブホで…
本能には逆らえない…
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