6 / 21
赤ちゃん編
お父さん強すぎィ!
しおりを挟む
「………」
今日もまたベッドの上で魔力操作をする。目を閉じて力を流し、身体を活性化させた。
今度はただ力を流すだけじゃなく一点に集中させる。すると廊下から足音が聞こえてきた。
母さんか? いや、足音が複数聞こえる。ということはステラ姉さんと一緒なのか?
しかし、俺の考えは外れた。どの声も母さんとステラ姉さんのものではなかった。
「お前たちの弟なんだから少しは構ってやれ」
「……はい」
「えー」
父さんの声だ。それに男の子と女の子の声。恐らくステイン兄さんとアウラ姉さんだろう。
俺と遊ぶのが面倒なのか、自分の時間を奪われるのが嫌なのか。二人ともえらく不満そうだ。
兄さん達は気まぐれなステラ姉さんと違い、俺の部屋には数えるくらいしか訪れていない。
まあその気持ちはわかる。
赤子はすぐ泣く。少し刺激するだけで泣くから面倒なんだよな。俺も弟の面倒を押し付けられて大変な目にあった。
ゆっくりとドアが開き三人が部屋に入ってくる。
「ライトは起きているな」
父さんが一番に入り、兄さんと姉さんが窺うようにして入ってくる。
父さんの血を色濃く継いだ、一番上のステイン兄さん。
短く揃え、逆立った黒い髪。動きやすそうなゆったりとした服装だ。
もう一人の面倒くさそうな態度を見せる女の子。ステラ姉さんだ。
双子なのだろうか、髪の毛に青色のグランデーションがあるのを除けばステラ姉さんと同じ髪の色と顔立ちをしていた
こちらは白のカッターシャツに水色のロングスカート。ぶっちゃけステラ姉さんのと色違いだ。
「泣いたりしないよね?」
「分からない」
アウラ姉さんが情けない声を上げ、兄さんが素っ気なく答える。
「どうした?遊ばないのかお前たち?」
「いや、俺はちょっと……」
「私も赤ちゃんに触ったことないし……」
二人は気まずそうに視線を逸らす。
「誰だって最初はあるんだ。そんなに気構えるな」
「そういう父さんも初めてじゃないか?」
「あ、そうだったね。お母さんに止められてたじゃん」
え?それってどういうこと?
「あれは母さんが心配性なだけだ。こんなのなんてことないのに」
「だってお父さん力任せに何でもやるじゃん」
「父さんがやるとライト握りつぶしそう」
「何言ってるんだ!? お前たちを抱き上げたことあるのにそんなことあるわけないだろ!」
父さんはそう言って手を伸ばし、ベビーベッドに座っている俺の脇の下から持ち上げる。ごつごつとした大きな手だ。
ちょ、ちょっと父さん? なんか痛いんですけど? いやめっちゃ痛い! 持ち方はいいけど握力が強すぎる! 潰れる! 中身出ちゃう!
だが焦ることはない。なにせ俺には強化魔法があるのだから。
魔力を脇腹に集中させて強化すると同時に殻や鎧で覆うのをイメージする。すると脇腹の痛みがなくなった。
よし成功だ。俺の脇腹は守られた!
「……ほう。昨日といい今日といい。どうやらライトには魔法の才能があるようだ」
「え?どういうこと?」
「いやなんでもない。それよりお前らも抱いてみたらどうだ?」
どうやら父さんは俺の魔法に気づいたらしい。
一瞬険しい表情になるも、すぐに父親の顔に戻って俺を兄と姉に渡した。
「あ、全然泣かない」
「本当だ。これぐらいの赤ちゃんって人見知り激しいからめっちゃ泣くと思ったんだけど……」
「だがこの子は大丈夫らしいな。お前らと違って肝が据わっているようだ」
「なんだよそれ!?」
「大変だったんだぞ。ステインを強く抱きすぎて母さんにどやされたことがあったからな」
「それ父さんが悪いと思う」
「全くよ。あなた強く抱きすぎてステインの肩が赤く腫れちゃったのよ。すぐに引いたけど」
「え!? それダメじゃん!」
「昔のことだ。今はもう……」
父さんが後ろに振り向く。そこにはいつの間にか母さんがいた。
「フレイヤいつの間に!?」
「ついさっきよ。騒がしくて来てみれば、寄りにもよって貴方がこの子抱いてるのね」
母さんは父さんから俺を取り上げ、ベッドに降ろした。
「あなた、ステイルの時もアウラの時もステラの時も力加減に失敗したのだからもうやめてって言ったでしょ?」
「いや……それは……。けどライトは……」
「私がライトの術を見抜けないとでも?」
「………ごめんなさい」
父さんは母さんに頭を下げる。大柄な身体が小柄な母さんよりも小さく見えた。
「けどすごいわねこの子。もしかしたら大物になるかもしれないわ」
俺の頭を撫でる母さん。……まさか母さんも気づいたのか?
しかし確証はない。なので俺はバレないようにキャッキャと笑ってその場をごまかした。よし、どこから見ても普通の赤ん坊だ。
「ディッカ。ライトを見ていて。この人に任せると碌なことにならないからね」
「かしこまりました奥様」
母さんの言葉に家政婦のディッカが恭しく頭を下げて返事をする。
どうやらこの屋敷の真の主は母さんらしい。
ディッカさんが入ってきて、それと入れ替わりで父さん達が部屋を出ていく。
扉が閉まり、母さんと父さんの姿が見えなくなった。
今日もまたベッドの上で魔力操作をする。目を閉じて力を流し、身体を活性化させた。
今度はただ力を流すだけじゃなく一点に集中させる。すると廊下から足音が聞こえてきた。
母さんか? いや、足音が複数聞こえる。ということはステラ姉さんと一緒なのか?
しかし、俺の考えは外れた。どの声も母さんとステラ姉さんのものではなかった。
「お前たちの弟なんだから少しは構ってやれ」
「……はい」
「えー」
父さんの声だ。それに男の子と女の子の声。恐らくステイン兄さんとアウラ姉さんだろう。
俺と遊ぶのが面倒なのか、自分の時間を奪われるのが嫌なのか。二人ともえらく不満そうだ。
兄さん達は気まぐれなステラ姉さんと違い、俺の部屋には数えるくらいしか訪れていない。
まあその気持ちはわかる。
赤子はすぐ泣く。少し刺激するだけで泣くから面倒なんだよな。俺も弟の面倒を押し付けられて大変な目にあった。
ゆっくりとドアが開き三人が部屋に入ってくる。
「ライトは起きているな」
父さんが一番に入り、兄さんと姉さんが窺うようにして入ってくる。
父さんの血を色濃く継いだ、一番上のステイン兄さん。
短く揃え、逆立った黒い髪。動きやすそうなゆったりとした服装だ。
もう一人の面倒くさそうな態度を見せる女の子。ステラ姉さんだ。
双子なのだろうか、髪の毛に青色のグランデーションがあるのを除けばステラ姉さんと同じ髪の色と顔立ちをしていた
こちらは白のカッターシャツに水色のロングスカート。ぶっちゃけステラ姉さんのと色違いだ。
「泣いたりしないよね?」
「分からない」
アウラ姉さんが情けない声を上げ、兄さんが素っ気なく答える。
「どうした?遊ばないのかお前たち?」
「いや、俺はちょっと……」
「私も赤ちゃんに触ったことないし……」
二人は気まずそうに視線を逸らす。
「誰だって最初はあるんだ。そんなに気構えるな」
「そういう父さんも初めてじゃないか?」
「あ、そうだったね。お母さんに止められてたじゃん」
え?それってどういうこと?
「あれは母さんが心配性なだけだ。こんなのなんてことないのに」
「だってお父さん力任せに何でもやるじゃん」
「父さんがやるとライト握りつぶしそう」
「何言ってるんだ!? お前たちを抱き上げたことあるのにそんなことあるわけないだろ!」
父さんはそう言って手を伸ばし、ベビーベッドに座っている俺の脇の下から持ち上げる。ごつごつとした大きな手だ。
ちょ、ちょっと父さん? なんか痛いんですけど? いやめっちゃ痛い! 持ち方はいいけど握力が強すぎる! 潰れる! 中身出ちゃう!
だが焦ることはない。なにせ俺には強化魔法があるのだから。
魔力を脇腹に集中させて強化すると同時に殻や鎧で覆うのをイメージする。すると脇腹の痛みがなくなった。
よし成功だ。俺の脇腹は守られた!
「……ほう。昨日といい今日といい。どうやらライトには魔法の才能があるようだ」
「え?どういうこと?」
「いやなんでもない。それよりお前らも抱いてみたらどうだ?」
どうやら父さんは俺の魔法に気づいたらしい。
一瞬険しい表情になるも、すぐに父親の顔に戻って俺を兄と姉に渡した。
「あ、全然泣かない」
「本当だ。これぐらいの赤ちゃんって人見知り激しいからめっちゃ泣くと思ったんだけど……」
「だがこの子は大丈夫らしいな。お前らと違って肝が据わっているようだ」
「なんだよそれ!?」
「大変だったんだぞ。ステインを強く抱きすぎて母さんにどやされたことがあったからな」
「それ父さんが悪いと思う」
「全くよ。あなた強く抱きすぎてステインの肩が赤く腫れちゃったのよ。すぐに引いたけど」
「え!? それダメじゃん!」
「昔のことだ。今はもう……」
父さんが後ろに振り向く。そこにはいつの間にか母さんがいた。
「フレイヤいつの間に!?」
「ついさっきよ。騒がしくて来てみれば、寄りにもよって貴方がこの子抱いてるのね」
母さんは父さんから俺を取り上げ、ベッドに降ろした。
「あなた、ステイルの時もアウラの時もステラの時も力加減に失敗したのだからもうやめてって言ったでしょ?」
「いや……それは……。けどライトは……」
「私がライトの術を見抜けないとでも?」
「………ごめんなさい」
父さんは母さんに頭を下げる。大柄な身体が小柄な母さんよりも小さく見えた。
「けどすごいわねこの子。もしかしたら大物になるかもしれないわ」
俺の頭を撫でる母さん。……まさか母さんも気づいたのか?
しかし確証はない。なので俺はバレないようにキャッキャと笑ってその場をごまかした。よし、どこから見ても普通の赤ん坊だ。
「ディッカ。ライトを見ていて。この人に任せると碌なことにならないからね」
「かしこまりました奥様」
母さんの言葉に家政婦のディッカが恭しく頭を下げて返事をする。
どうやらこの屋敷の真の主は母さんらしい。
ディッカさんが入ってきて、それと入れ替わりで父さん達が部屋を出ていく。
扉が閉まり、母さんと父さんの姿が見えなくなった。
1
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる