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07・とりあえず、掃除魔法を使ってみた①
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大きな木の根の間に、古ぼけた家がひっそりと建っていた。
入るべきか、やめるべきか迷っていると、突然おれ達の前に魔法陣が現れる。
リュカとおれは反射的に身構えた。
現れたのは――
黒髪のエルフだった。
案の定というか、おれの考えは的中していた。
「ふぅ……まったく、翠冠王(すいかんおう)陛下は人使いの荒いお方なんだから……」
そう呟いてから、こちらに気づいたのか「はあ……」と一度ため息をつき、「おっと」と言わんばかりに目を向けてくる。
「おっ、無事にここにたどり着いたんだな。私はセス。ピチピチの28歳だ」
ウィンク付き。
なにこのおちゃらけたエルフ。
チャラ男か?
正直、ちょっとドン引きした。
それに気づいたのか、セスは「あー」と声を出しながら、指で頬を掻いて苦笑する。
「悪い悪い。見た目と性格が違うって、よく言われるんだ」
確かに見た目だけなら、印象はまるで違う。
すらりとした無駄のない筋肉質の体型に、優雅で凛とした佇まい。
長い耳は上品に尖り、光を受ける黒髪は淡く輝いている。
軽装の魔法衣に、騎士風の鎧が自然の中によく映える姿だ。
第一印象がチャラいだけで。
そのせいか、さっきまで張りつめていた緊張が、いつの間にか抜けていた。
もしかしたら、信用できる相手かもしれない。
「おれはアキ。隣にいるのはリュカ」
「リュカといいます」
「うんうん。アキ、リュカ、よろしくな」
お互いに軽く返事を交わし、セスの隠れ家に入れてもらったのはいいんだけど。
「ヘっくしゅ!」
「セスさん、ここ……ほこりっぽくない?」
鼻のいいリュカは、鼻を押さえてつらそうにしていた。
無理もない。
部屋は蜘蛛の巣だらけ、ほこりだらけ。
物もあふれ返っている。
正直に言うと――
「めっちゃ汚部屋……」
「うーん……そうなの?」
疑問形で返されて、おれは項垂れた。
こんな部屋に住んでたら、病気になるだろ……。
「セスさん」
「ん? なに? アキ?」
キッチンらしき場所で、セスはヤカンに水を入れて火にかけようとしていた。
でも、そのヤカンも見るからに汚い。
おれの中で拒否反応が出る。
「セスさん!今から大掃除します!!」
「え~~……私は掃除嫌い」
「そう言ってる場合じゃないですよ!!見てください!!」
リュカを指さすと、彼は完全に限界だった。
鼻水は止まらず、くしゃみも連続している。
さすがにマズいと思ったのか、セスは本が山積みになった場所へ向かい、何かを探し始めた。
しばらくして、一冊の本を取り出し、それをおれに渡す。
「この本、掃除魔法が書いてあるだけなんだけどね。私は……その……空間能力とか想像力が苦手でさ。いつも失敗するんだ。でも、アキならできると思うから、やってみて!」
「……えー……」
渡された本は、驚くほど薄かった。
開くと、書かれているのはたった一つの魔法文だけ。
顔を上げると、セスが「うんうん」と満足そうに頷いている。
いや、なにが「うんうん」だ。
「どう綺麗にしたいかを想像して、呪文を唱える」そう書いてある。
おれは改めて、この汚い部屋を見渡した。
ちゃんと綺麗になってほしい姿を想像……したけど。
一発で全部やるのは、さすがに失敗しそうな気がした。
だからまずはキッチンから。
キッチンを見つめ、綺麗になった状態を思い浮かべて、おれは呪文を唱えた。
「ダスト・バイバイ!」
次の瞬間、「ボン」と白い煙が弾ける。
おれ達は揃ってゲホゲホと咽た。
……そして、あらびっくり。
そこには、元からそうだったかのような、綺麗なキッチンが広がっていた。
さっきまで汚れていたヤカンもピカピカだ。
――成功、ってことだよな?
入るべきか、やめるべきか迷っていると、突然おれ達の前に魔法陣が現れる。
リュカとおれは反射的に身構えた。
現れたのは――
黒髪のエルフだった。
案の定というか、おれの考えは的中していた。
「ふぅ……まったく、翠冠王(すいかんおう)陛下は人使いの荒いお方なんだから……」
そう呟いてから、こちらに気づいたのか「はあ……」と一度ため息をつき、「おっと」と言わんばかりに目を向けてくる。
「おっ、無事にここにたどり着いたんだな。私はセス。ピチピチの28歳だ」
ウィンク付き。
なにこのおちゃらけたエルフ。
チャラ男か?
正直、ちょっとドン引きした。
それに気づいたのか、セスは「あー」と声を出しながら、指で頬を掻いて苦笑する。
「悪い悪い。見た目と性格が違うって、よく言われるんだ」
確かに見た目だけなら、印象はまるで違う。
すらりとした無駄のない筋肉質の体型に、優雅で凛とした佇まい。
長い耳は上品に尖り、光を受ける黒髪は淡く輝いている。
軽装の魔法衣に、騎士風の鎧が自然の中によく映える姿だ。
第一印象がチャラいだけで。
そのせいか、さっきまで張りつめていた緊張が、いつの間にか抜けていた。
もしかしたら、信用できる相手かもしれない。
「おれはアキ。隣にいるのはリュカ」
「リュカといいます」
「うんうん。アキ、リュカ、よろしくな」
お互いに軽く返事を交わし、セスの隠れ家に入れてもらったのはいいんだけど。
「ヘっくしゅ!」
「セスさん、ここ……ほこりっぽくない?」
鼻のいいリュカは、鼻を押さえてつらそうにしていた。
無理もない。
部屋は蜘蛛の巣だらけ、ほこりだらけ。
物もあふれ返っている。
正直に言うと――
「めっちゃ汚部屋……」
「うーん……そうなの?」
疑問形で返されて、おれは項垂れた。
こんな部屋に住んでたら、病気になるだろ……。
「セスさん」
「ん? なに? アキ?」
キッチンらしき場所で、セスはヤカンに水を入れて火にかけようとしていた。
でも、そのヤカンも見るからに汚い。
おれの中で拒否反応が出る。
「セスさん!今から大掃除します!!」
「え~~……私は掃除嫌い」
「そう言ってる場合じゃないですよ!!見てください!!」
リュカを指さすと、彼は完全に限界だった。
鼻水は止まらず、くしゃみも連続している。
さすがにマズいと思ったのか、セスは本が山積みになった場所へ向かい、何かを探し始めた。
しばらくして、一冊の本を取り出し、それをおれに渡す。
「この本、掃除魔法が書いてあるだけなんだけどね。私は……その……空間能力とか想像力が苦手でさ。いつも失敗するんだ。でも、アキならできると思うから、やってみて!」
「……えー……」
渡された本は、驚くほど薄かった。
開くと、書かれているのはたった一つの魔法文だけ。
顔を上げると、セスが「うんうん」と満足そうに頷いている。
いや、なにが「うんうん」だ。
「どう綺麗にしたいかを想像して、呪文を唱える」そう書いてある。
おれは改めて、この汚い部屋を見渡した。
ちゃんと綺麗になってほしい姿を想像……したけど。
一発で全部やるのは、さすがに失敗しそうな気がした。
だからまずはキッチンから。
キッチンを見つめ、綺麗になった状態を思い浮かべて、おれは呪文を唱えた。
「ダスト・バイバイ!」
次の瞬間、「ボン」と白い煙が弾ける。
おれ達は揃ってゲホゲホと咽た。
……そして、あらびっくり。
そこには、元からそうだったかのような、綺麗なキッチンが広がっていた。
さっきまで汚れていたヤカンもピカピカだ。
――成功、ってことだよな?
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