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11.笑顔
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部屋を出た華月は、至極平静に湯と握り飯を用意し、部屋の前に戻ってきた。
「……………………。………………はぁぁぁ……」
本当に息を漏らすような小さな声で溜息を吐いて、湯気のたつ桶を抱えて座り込む。
(なにあれ。天花の奴、可愛すぎじゃないか……? よく誰にも犯されなかったよな。え、ここでの湯浴みって、男はみんなごった煮みたいな感じだよな? ……無理だろ。絶対何人か天花見て勃起してるよ。えぇー、無理。嫌だなぁ……風呂こっちの使わせようかな。あと一ヶ月位だし、天花優秀だから特別に出来ねぇかなぁ……)
先程の味わってしまった艶めかしい白い肌、喘ぐ声は子猫のように高いのに、甘く、心を揺さぶり、もっと虐めたくなるような……とにかく可愛らしさが溢れている。
詳しく思い出すとまた勃ってしまいそうなので、華月は頭を振って立ち上がる。
「天花、戻ったぞ。ってなにそれ」
布団の真ん中にはこんもりとできた掛け布団のダルマがある。その中に天花がいるのは間違いなく、桶と握り飯を置いて華月はそっと耳をそばだてた。
「…………どうしよう、凄く……気持ち良かった……」
「――!?」
今の言葉は、きっと天花の独り言だろう。しかし、それを思わず口に出すということは、それほどのことに違いない。
嬉しくなった華月は、抑えきれなくなった喜びで喉をくくくと鳴らしてしまった。
「華月様!?」
布団から飛び出してきた天花を見て、片手をあげる。
「ただいま」
「聞いてましたか……?」
「……気持ち良かったな」
「――~~!! 華月様はやっぱり意地悪ですね」
フイと横を向いたが、決して本気で怒っているのではないと、その表情でよく分かる。なので華月は膨れた天花の頬を少し摘む。
「あ、様って付けてる。そういやさっきもそうだったな。檻の中で叫んだ時みたいに、呼び捨てでいいんだぞ?」
「駄目です。華月様は天狗の里の若君ですから」
摘まれたまま、それを振り解くことなく天花は華月を睨む。全く怒っていないわけでもないが、全力で拒否するほどでもないのだろう。
その微かな違いが華月の心を和ませる。
「はいはい、そうかよ。さぁ、布団から出てこい。拭いてやる。それから飯にしよう」
「え!? いえ、自分で出来ます」
今のは完全に拒否だ。下手にごねれば本気で怒られると華月は残念に思いながら諦めた。
「……なら、背中は拭いてやる」
背を向けた天花は着物を寛げる。はだけた場所から白い背中が現れ、華月は息を飲んだ。
手や、足首を、見える肌の美しさは知っていたが、背もまた同じくらい美しい。それに、適度に鍛えられた筋肉が、より妖艶……いや、それ以上に情欲をそそるようだ。
やはり風呂は別にすべきかと考えたところで、天花が振り向いた。
「あの、拭いて下さるんですよね?」
「――! あ、あぁ! 冷たかったら言えよ。湯を変えるから」
そう言って、布を硬く絞り背に当てる。強くしたら白い肌が傷んでしまいそうで、そっと滑るように撫でていると今度は前からクスクスと笑う声がした。
「どうした?」
「いえ、そんなに壊れ物を扱うようにされなくても大丈夫ですよ」
「そ、うだよな!! うん!! こうか!?」
今度は強めにグッと押しながら拭いてやる。
「はい。ありがとうございます。…………あの、華月様……」
「ん? なんだ?」
「悠月様は何故……こんなことを?」
そう言われ背を拭く手を一瞬止めたが、すぐに先程同様に強く拭き始める。
悠月のことだ。間違いなく何かがあるに違いない、その内容が全く分からない訳では無いが、本人に確かめていないことを推測の段階で天花に話すのは不安を煽るだけだろうと華月は考えた。
「分からない。それは後でしっかり確かめて、天花に必ず伝える」
「そうですか……分かりました。では……その、華月様は、まだ蓮様を慕っていますか?」
「え??」
言葉の意味を理解するのに僅かに時間がかかった。それは華月がもう蓮に対して、そのような感情が一切無いからだろう。
背を拭く手を緩め、口元を緩ませる。
「いや、今は恋慕は無いな。あいつら、蓮も恭吾も元人間だろ? そんな妖も鬼も神の本当の役割も知らなかった奴らが山を仕切るようになるには、余程の努力……努力だけじゃなくて、それを成し遂げてこないとできないはずだ。それは尊敬する」
素直な気持ちを伝えると、天花は振り向いて目を輝かせた。
「そうなんです!! 蓮様は凄いんですよ!! あ、もちろん恭吾も頑張ってます。蓮様と見回りやお勤めに山に入ったりもしますし。でも、一番凄いのはやっぱり蓮様です!!」
「ははっ、天花は本当に蓮が大好きだな」
褒め讃えられている蓮に嫉妬しない訳ではないが、天花のその反応はとても純粋無垢で親を慕うそれと似ている気がした。
しかし、こちらの反応が思っていたものと違ったのか、天花は前を向いて俯く。
「……はい、大好き……です」
「どうした?」
「好きです。好きなんですけど、前の……欲が出るような好きでは……私も無くなった気がします。風花や六花への好きと似ている好きだと思います。距離を置いて、冷静になって、多くの経験をしたからですね。きっと。ここに来て良かったです。華月様のおかげですね、ありがとうございます」
そう言って再び振り向いた天花に、華月は息を飲んだ。その顔は、優しく微笑むその表情は、本当に蓮への未練を断ち切り、前に進んだものだったからだ。
しかし、だからといって、自分を好きになった訳では無いと心に言い聞かせ華月はニコリと笑う。
「修練が終わっても、いつでも来ていいからな。子天狗も皆、天花が大好きだから」
「はい! 絶対、遊びに来ますね」
「……」
この無垢で優しい、天花の笑顔を守ろう。そう華月は心に決めた。
「……………………。………………はぁぁぁ……」
本当に息を漏らすような小さな声で溜息を吐いて、湯気のたつ桶を抱えて座り込む。
(なにあれ。天花の奴、可愛すぎじゃないか……? よく誰にも犯されなかったよな。え、ここでの湯浴みって、男はみんなごった煮みたいな感じだよな? ……無理だろ。絶対何人か天花見て勃起してるよ。えぇー、無理。嫌だなぁ……風呂こっちの使わせようかな。あと一ヶ月位だし、天花優秀だから特別に出来ねぇかなぁ……)
先程の味わってしまった艶めかしい白い肌、喘ぐ声は子猫のように高いのに、甘く、心を揺さぶり、もっと虐めたくなるような……とにかく可愛らしさが溢れている。
詳しく思い出すとまた勃ってしまいそうなので、華月は頭を振って立ち上がる。
「天花、戻ったぞ。ってなにそれ」
布団の真ん中にはこんもりとできた掛け布団のダルマがある。その中に天花がいるのは間違いなく、桶と握り飯を置いて華月はそっと耳をそばだてた。
「…………どうしよう、凄く……気持ち良かった……」
「――!?」
今の言葉は、きっと天花の独り言だろう。しかし、それを思わず口に出すということは、それほどのことに違いない。
嬉しくなった華月は、抑えきれなくなった喜びで喉をくくくと鳴らしてしまった。
「華月様!?」
布団から飛び出してきた天花を見て、片手をあげる。
「ただいま」
「聞いてましたか……?」
「……気持ち良かったな」
「――~~!! 華月様はやっぱり意地悪ですね」
フイと横を向いたが、決して本気で怒っているのではないと、その表情でよく分かる。なので華月は膨れた天花の頬を少し摘む。
「あ、様って付けてる。そういやさっきもそうだったな。檻の中で叫んだ時みたいに、呼び捨てでいいんだぞ?」
「駄目です。華月様は天狗の里の若君ですから」
摘まれたまま、それを振り解くことなく天花は華月を睨む。全く怒っていないわけでもないが、全力で拒否するほどでもないのだろう。
その微かな違いが華月の心を和ませる。
「はいはい、そうかよ。さぁ、布団から出てこい。拭いてやる。それから飯にしよう」
「え!? いえ、自分で出来ます」
今のは完全に拒否だ。下手にごねれば本気で怒られると華月は残念に思いながら諦めた。
「……なら、背中は拭いてやる」
背を向けた天花は着物を寛げる。はだけた場所から白い背中が現れ、華月は息を飲んだ。
手や、足首を、見える肌の美しさは知っていたが、背もまた同じくらい美しい。それに、適度に鍛えられた筋肉が、より妖艶……いや、それ以上に情欲をそそるようだ。
やはり風呂は別にすべきかと考えたところで、天花が振り向いた。
「あの、拭いて下さるんですよね?」
「――! あ、あぁ! 冷たかったら言えよ。湯を変えるから」
そう言って、布を硬く絞り背に当てる。強くしたら白い肌が傷んでしまいそうで、そっと滑るように撫でていると今度は前からクスクスと笑う声がした。
「どうした?」
「いえ、そんなに壊れ物を扱うようにされなくても大丈夫ですよ」
「そ、うだよな!! うん!! こうか!?」
今度は強めにグッと押しながら拭いてやる。
「はい。ありがとうございます。…………あの、華月様……」
「ん? なんだ?」
「悠月様は何故……こんなことを?」
そう言われ背を拭く手を一瞬止めたが、すぐに先程同様に強く拭き始める。
悠月のことだ。間違いなく何かがあるに違いない、その内容が全く分からない訳では無いが、本人に確かめていないことを推測の段階で天花に話すのは不安を煽るだけだろうと華月は考えた。
「分からない。それは後でしっかり確かめて、天花に必ず伝える」
「そうですか……分かりました。では……その、華月様は、まだ蓮様を慕っていますか?」
「え??」
言葉の意味を理解するのに僅かに時間がかかった。それは華月がもう蓮に対して、そのような感情が一切無いからだろう。
背を拭く手を緩め、口元を緩ませる。
「いや、今は恋慕は無いな。あいつら、蓮も恭吾も元人間だろ? そんな妖も鬼も神の本当の役割も知らなかった奴らが山を仕切るようになるには、余程の努力……努力だけじゃなくて、それを成し遂げてこないとできないはずだ。それは尊敬する」
素直な気持ちを伝えると、天花は振り向いて目を輝かせた。
「そうなんです!! 蓮様は凄いんですよ!! あ、もちろん恭吾も頑張ってます。蓮様と見回りやお勤めに山に入ったりもしますし。でも、一番凄いのはやっぱり蓮様です!!」
「ははっ、天花は本当に蓮が大好きだな」
褒め讃えられている蓮に嫉妬しない訳ではないが、天花のその反応はとても純粋無垢で親を慕うそれと似ている気がした。
しかし、こちらの反応が思っていたものと違ったのか、天花は前を向いて俯く。
「……はい、大好き……です」
「どうした?」
「好きです。好きなんですけど、前の……欲が出るような好きでは……私も無くなった気がします。風花や六花への好きと似ている好きだと思います。距離を置いて、冷静になって、多くの経験をしたからですね。きっと。ここに来て良かったです。華月様のおかげですね、ありがとうございます」
そう言って再び振り向いた天花に、華月は息を飲んだ。その顔は、優しく微笑むその表情は、本当に蓮への未練を断ち切り、前に進んだものだったからだ。
しかし、だからといって、自分を好きになった訳では無いと心に言い聞かせ華月はニコリと笑う。
「修練が終わっても、いつでも来ていいからな。子天狗も皆、天花が大好きだから」
「はい! 絶対、遊びに来ますね」
「……」
この無垢で優しい、天花の笑顔を守ろう。そう華月は心に決めた。
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